第71話 一緒に寝ましょう?
「それでさ。シャルルちゃんをキャロルちゃんが……」
「へぇ〜カイルちゃんにそんなことが……」
「いい冒険者なんだなその人たちは……」
「うん。それはもう……」
食後……小さな蝋燭の光に照らされ、カイルは母と父の2人に旅の話に花を咲かせた。
「……カイルちゃん!? そんなにモテモテだったなんて!?」
「あの時は……セレナちゃんと、シャルルちゃんは、たまたま居合わせただけで……エリスもあの時見てたでしょう?」
「私はただ、宿に置いてけぼりだっただけで……詳細は知りませ〜ん。私のいない間になにしてたんでしょうかね〜〜?」
「——エリス!?」
「——カイルちゃん!? どういうこと!!」
「いや、これは……!?」
各地を巡っての、出会い、思いで、それを薄暗い部屋でこれでもかと語って聞かせる。皆に笑顔が広がり、時には怒声が飛び、楽しい時間が過ぎていく。
「さて、今日はもう遅い。続きの話は明日にしよう」
「……え?! 父さんもうちょっといいじゃない!?」
「母さん。カイルはしばらくここにいるんだ。明日だろうが、明後日だろうが、時間はまだまだ沢山あるよ」
「……ぶぅぅ〜〜」
ルイルは、その楽しい時間に目処を立てた。辺りはすっかりと暗闇が支配し、卓上の蝋燭はすっかり短くなった。カミーユはもっと物語を聴きたそうにしていたが、カイルはまだこの村に滞在するのだからと……止めに入ったのだ。
「それじゃ〜寝床だけれど……エリスさんはどこで寝てもらおうか?」
「う〜〜ん。そうだなぁ〜〜」
そして、就寝するにあたって、問題だったのがエリスの寝床である。父がカイルに話を振る。
「僕の部屋ってどうなってる?」
「カイルちゃんが帰って来ていいように、ベットはちゃんとしてあるわ」
「なら、エリスは僕のベットを使うといいよ。僕は旅の寝袋があるし、それで寝るから……」
エリスの訪問は両親にとって突然の出来事だ。なら、カイルはいつものようにベットをエリスに渡し、自分は寝袋で寝ると言い出す。当然の選択だった。
だが……
「なに言ってるんだ? カイル?」
「なにって……父さん?」
ここで父から思いもしない提案が……
「2人でカイルのベットに寝ればいいんじゃないか?」
「……え?」
「——ッ!? ちょっと父さん!!??」
カイルは間の抜けた声を漏らし、母カミーユは驚愕すると共に吠えた。
「だって、母さん。2人は夫婦なんだろう? 別に同じベットで寝たって不思議じゃないさ。ちょっと狭いかもしれないが、2人とも小柄だからな。十分なスペースはあるだろう」
「そ、そ、そ、そんなことって!? か、か、カイルちゃんには早すぎますぅ!」
「早すぎるって……何歳だと思ってるんだい? カイルのこと……」
不思議ではない提案だと思っていたが母に動揺が走る。
それにもう1人——
「そ、そ、そうだよ。と、父さん! お、お、同じ……べ、ベットだなんて……」
「カイル。ここは甲斐性だぞ。夫婦ならなんの問題もないだろう?」
「そうかも、し、しれないけど……え、エリスが嫌がるかもしれないし……」
カイルも同様していた。もっともらしい理由を口にしてエリスをチラッと見る。
すると、その視線を拾ったエリスは……
「私は構わないわよ? カイル……優しくしてね♡」
「な、な、な、なにを——!!??」
ニコッと笑って承諾した。カイルはさらに酷く動揺が走る。
「カイルちゃん!? いけません!! そんなこと母さん許さな……むぐぅう!!!!」
「ほら、母さん。2人の邪魔はしちゃいけないよ。長旅で疲れているんだ。そっとしてあげなさい」
「ムググ〜ムグ〜!!??(そんなぁ〜イヤァ〜〜!!??)」
ルイルはカミーユの口を手で塞ぎ、暴れる母を連れて行く。
「では、お二人ともお休み」
「——ムグムグ!!??」
この場にカイルとエリスの2人だけが取り残される。
「……え、エリス……僕、やっぱり寝袋をとってくるよ……だから、ベットは使っていいから」
カイルは少しの沈黙から、顔を赤た状態で寝袋を取りに行こうとする。まるで話題から気を逸らすように逃げるみたいに。
だが……
「カイル。必要ないわ」
「……え?」
エリスが彼に静止を訴えた。
「ワタシは同じベットでも構わないと言ったでしょう?」
「……え?! でも!」
「くどい。ワタシに二言はないわ。アナタの部屋に案内して」
「…………」
「早くしてよ。ワタシ、もう眠いのよ」
「……わ、わかったよ」
とりあえず、カイルは承諾を示して自身の部屋へと案内する。