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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【連載版はじめました!】有能兄妹を追放したんだからパーティ崩壊するのも当然です~万能付与術師の妹がS級冒険者パーティを追放されたので、最強盗賊の俺も抜けることにした

作者: 茨木野

【☆★おしらせ★☆】


好評につき連載版はじめました!!

ページ下部にリンクがございます!!


または、以下のULRをコピーしてお使いください。

https://ncode.syosetu.com/n2140iq/

「マイ・バーンデッド! 君をこのパーティから追放する!」


 ここは高難易度ダンジョンの最奥部にあるセーフゾーン。

 そう追放を宣言したのは、このSランク冒険者パーティ【銀翼の大鷲】のリーダー。

 ムノッカス・ヤーリッチだ。


■ムノッカス・ヤーリッチ(19)

性別:男

種族:人間

職業ジョブ:勇者


 ムノッカスの周りには、パーティメンバーの女ども2人がいる。

 彼ら同様に、にやにやとした笑みを浮かべてやがった。……この状況を楽しんでやがる、趣味の悪い愚図どもだ。


「……え、つ、追放、ですか??」


 ムノッカスから追放を言い渡されたのは、俺……ではなく、俺の可愛い妹、マイ・バーンデッド。


■マイ・バーンデッド(15)

性別:女

種族:人間

職業ジョブ付与術師エンチャンター


 銀の長い髪に、青い瞳。

 気弱そうな表情。しかし胸は大きく、ムノッカス含め、男たちの視線を釘付けにする。


 そんな、俺の宇宙一可愛い妹を、このゴミかすは追放するという。


「おいムノッカス。てめえ……どういうことだ? うちの妹をどうして追放するんだ?」

「シーフ……。簡単な理由さ、君の妹が、必要のない人材だからだよ」


■シーフ・バーンデッド(16)

性別:男

種族:人間

職業ジョブ:盗賊


「必要ないだぁ?」

「ああ、そのとおりさ。マイの付与術は、強くなった僕たちに、もう必要ないのだよ」


 付与術。バフともいって、味方の力を向上したり、武器に魔法の属性を付与したりする特殊な魔法のことだ。

 

「今日、この最難関団ダンジョンの奥に来るまでの間、僕たちはマイの付与を必要としなかった。もう僕らは十二分に強くなったって証拠さ」


 そうよそうよ、と取り巻きの女2名もうなずく。


 はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………。

 だめだ、こいつら。


 なーんもわかってない。

 マイの付与を必要としないだぁ?


 今日もがっつり、マイに付与もらってただろうが。

 お前らが巷で『勇者パーティ』なんて周りからチヤホヤされてるの、全部マイの付与があってこそだろうが!


「それに、マイには重要な欠点がある」


 この世の何よりも美しく、非の打ちどころなんて一つもないマイに対して、欠点だと?

 ……いいだろう、聞いてやろう。


「マイ、君は極度の口下手だ。そのせいで、連携が取れない。付与をくれってタイミングでよこしてくれない」


 ばーか。ちげーよ。

 付与が欲しいって思った時には、もうマイは付与をすでにかけてるんだよ。


 まあ、確かにマイは人としゃべるのが苦手だ。

 引っ込み思案な子なのだ。


 今も、マイは俺の陰にかくれてびくびくしてる。

 でも、俺からすれば悪いのはこのムノッカスだ。


 今日に限らず、ムノッカスはマイを頭ごなしに否定してくる。

 適切なタイミングで付与くれないおまえは無能だの、しゃべれないつまらない女だの。


 よくもまあ、言えたものだな。

 俺は、知ってるんだからな。


「連携の取れない、使えない付与術師なんてこのパーティには必要ない。よって、出ていきたまえ、マイ・バーンデッド」

「…………」


「何か言いたいことはないのか?」

「…………」

「はっきり言ってみろ!」


 びくんっ、とマイが体を委縮させる。


「出ていきなさいよ無口の無能女」

「見た目がいいしか取り柄のないカスに、ここはふさわしくないのよ!」


 ああ、マイ。ごめんな。

 兄ちゃん……我慢の限界ですわ。


「おい無能カス」

「なに? ぶげぇえええええええええええええええ!」


 俺は無能カス野郎、じゃなかった、ムノッカスの頬をぶん殴る。


「「ムノッカスぅ!?」」


 取り巻き女どもが悲鳴を上げる。

 ほんとはてめえらもぶん殴りたいところだが、マイが見てる前で、女は殴れない。


 マイに感謝しろよ。


「し、シーフぅ! 何をするんだね!?」

「てめえがうちの可愛い妹をいじめたのが悪い。いくぞ、マイ」


 俺はマイの手を引いて、セーフゾーンを出ていこうとする。

 戸惑いながらも、ついてくるマイ。


「お、おいシーフ! どこに行くのだよ!?」

「俺もこのパーティ抜ける。妹を侮辱するようなリーダーのもとで、やってられっかよ」


 もともとここにいるのは嫌だったんだ。

 なぜなら……。


「そういや、ムノッカスさんよ。さっきの追放理由、不十分じゃねえか?」

「ど、どういうことだ?」


「俺は【聞いた】ぞ。……うちの妹に、こないだ言ったことを。僕の女になれ、だっけ?」

「な!?」


「「え~~~~~~~~~~~~~!?」」


 女どもが驚愕してる。

 多分知らなかったのだろう、ムノッカスがマイに告ったことを。


「ムノッカス!? どういうこと!? アタシと付き合ってるんじゃないの!?」

「私という女がありながら、マイに告白ですって!?」


 取り巻き女どもも驚いてやがる。

 ムノッカスはこいつに二股かけてやがったうえに、マイも自分の女にしようとしていた。三股かけようとしていたのだ。


「さっきのお前の発言も、『この僕の恋人になるなら、考え直してやってもいいが?』とかいうつもりだったんだろ、後でこっそりとよ」


 パーティ脱退をちらつかせ、自分の女にしようとしたわけだ。

 ほんっとカス野郎だなこいつ。


「で、でたらめを言うな!? 何を証拠にそんなことを!?」

「なんだ、俺の【耳】が人より優れてること、もうお忘れですかぁ?」


 俺の職業ジョブは、盗賊。

 トラップを見抜いたり、宝箱の鍵を開けたりと、ダンジョン攻略には必要な職業ジョブだ。


 そのうえで、俺は特別な力がある。

【超聴覚】。聴覚を強化するスキルだ。


 これのおかげで、遠く離れた場所にいる魔物の足音を聞いて、危険を回避することができる。

 隠れて行われていた痴話げんかの内容も、簡単に盗み聞きできるってわけだ。


「人の会話を盗み聞きするなんて! なんとマナー違反な!」

「あいにくと盗賊なんでね。盗みは得意なんだよ」


 まあ、得意なだけで、人からモノを盗むんだことは一度もない。

 妹に、約束したからな。この力は、悪いことには使わないって。


「とにかく、マイを追放するなら、俺もパーティを抜ける。あばよ、くそ野郎」


 俺はマイの手を引いて、セーフゾーンを出ていく。

 背後では取り巻きどもと痴話げんかが繰り広げられてる。

 

 いい気味だ。


「シーフ、兄さん……」


 帰り道、ずっと黙っていたマイが口を開く。


「ごめんね……」


 立ち止まって振り返る。

 彼女は本当に申し訳なさそうな声で、言う。


「私のせいで、シーフ兄さんまで……Sランクパーティ抜けることになっちゃった」


 俺は耳がいい。

 だから、声の感じから、その人の心がなんとなくわかる。


 彼女からの声は、自分を責めているのが伝わってくる。

 本気で自分のせいだと思ってるようだ。


「マイ。気にすんな。前からあの無能カスは嫌いだったし、俺」

「でも……Sランクパーティに、やっとなれたんだよ? 私たちの、目標だった」


 俺たち兄妹には、冒険者のトップ……SSランク冒険者になる、という目標がある。

 親父の墓場の前で、そう誓ったんだ。


 今はSランクだった。あと一歩のところまで来ていた。

 それを、自分のせいで、夢から遠のいてしまった。と、マイは思ってるのだろう。


「大丈夫だよ、マイ。おまえがいれば、SS級なんてすぐになれるさ」


 SS級になるためには、パーティメンバー全員がSランク冒険者になる必要がある。

 俺もマイも、今はDランク。下から二番目のランクだ。


でもこの位置づけは不当だと思ってる。

手柄を全部、あの無能カス野郎に取られてしまっているからだ。


「無理だよ。兄さんはともかく、私みたいな雑用付与術師なんて、大したことないもん……。パーティ追い出されるくらいだし……」


 雑用付与術師。

 ムノッカスたちが、妹を陰でそう呼んでいることは知ってる。


 あいつは、マイが戦闘では役立たずだからといって、掃除や洗濯、武器のメンテなど、雑用係を妹に押し付けていたのだ。


「マイ。おまえはすごいやつなんだよ」

「ありがとう……」


 ああ、マイが悲しんでいる。

 多分俺が優しいから、気を使って言ってくれてるって思ってるんだろう。


 なんと痛ましい声だ。

 本当におまえは強い子なのに。


それをわかってやれるのは……俺だけだ。

俺は改めて決意する。


 マイのことを、俺だけは、正しく評価してあげようって。


「マイ。おまえは本当に強い。それに、兄ちゃんも、強いおまえに並ぶため、必死になって修行したんだ。それでな、つい昨日、俺の職業ジョブのレベルが上がって新しいスキルが……」


 と、そのときだった。


「ひぎゃぁああ! た、助けてくれぇええええええええええええい!」


 ムノッカスが大声を上げながらこちらに向かってくる。

 そして、俺は聞いた。


 奴らの背後から聞こえる、魔物の足音を。


「シーフ兄さん? どうしたの?」


 まだちょっと距離があるから、マイは気づいていないようだ。

 ムノッカスがどうやら、魔物に追いかけられてるってことに。


 あいつらは多分ボスに挑んだはずだ。

 でも、逃げてきた。


 そして背後から魔物の足音。考えられる状況は一つだ。


「マイ、【迷宮主の放浪(ワンダリング)】だ」

「!? わ、迷宮主の放浪(ワンダリング)って……たしか、ボスがボスの部屋から出てくる現象?」


 迷宮にはボスが存在する。

 ボスは自分のいる部屋から出れない仕様となっている(なぜかは不明)。


 しかし、まれにボスが部屋から出てくることがある。

 ボスに挑んだ冒険者が、大してダメージをあたえられず、敗走するときとかな。


 その現象を、迷宮主の放浪(ワンダリング)という。


「どうやらムノッカスのごみが、ボスに挑んですぐにげたらしい。今追いかけられてるのはあいつだ」

「たいへん! すぐ……助けないと!」


 ……ああ、妹よ。

 おまえはなんて優しい子なんだ。


 今しがた自分を理不尽に追放したカス野郎の身を、案じてやっている。

 兄ちゃんはそんな優しいお前のことが大好きだ。


 本当なら、彼女を担いででもこの場から離脱したいところ。

 けれど、ちょうどいい。


「戦うぞ、妹よ」

「え!? む、無理だよ! 付与術師と盗賊、二人だけじゃ、ボスなんて倒せないよ!」


 確かにそうだ。

 どちらの職業ジョブも、直接的な戦闘能力はない。挑んでも無駄死にするだけだろう。


「マイ。大丈夫だ。ここにいるのは付与術師と盗賊じゃない。俺とマイ、二人がいれば、ボスに勝てる」


 俺には確信があった。

 なぜなら俺の妹は、すごいから。

 そして、俺もまた、すごい妹に並ぶくらい、最強につい先日成ったからだ。


    ★


 職業ジョブ

 この世界の人間が生まれたときに、天の神様から与えられる特殊能力のことだ。


 たとえば、剣士の職業ジョブを与えられたものは、天性の剣の才能を持って生まれる。

 魔法使いなら、人よりも魔法習得に掛る時間が短くなるなど。


 俺の職業は、盗賊。

 聞き耳、鍵開け、など手先の器用さを必要とする技能を持って生まれた。


 それらは確かに迷宮探索には必要とされるだろうが、しかし、魔物との戦いにおいては全く役に立た【なかった】。


 そう、過去形だ。

 職業ジョブは一生変えられない。


 でも、努力すれば、職業は進化する。

 俺にはすごい妹がいる。


 そんな妹に並び立つため、俺は必死になって腕を磨いた。

 そして、俺は二つの、すごいスキルを手に入れたのだ。


    ★


 高難易度ダンジョン、ボス部屋付近。


「BUBOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 このダンジョンのボスらしきモンスターが、俺たちの前に現れる。

 2対の腕を持つ、巨大なミノタウロス。


上級ハイ・ミノタウロス

分類:亜人型モンスター

ランク:S


「き、君たちも逃げろ! 殺されるぞぉお!」


 このボス、ミノタウロスに挑み、おめおめと逃げ帰ってきたムノッカスが、情けなく言う。


「逃げたきゃ逃げればいい。俺と妹が、こいつをぶっ殺す」

「できるわけないだろ!?」


 俺は腰のナイフを抜いて構える。

 妹のマイも、ムノッカス同様に思っているようだ。


 あの化け物には、勝てないって。


「し、シーフ兄さん! 逃げようよ! 死んじゃうよぉ!」


 俺は振り返って、にっと笑う。


「俺は死なないし、逃げないよ。大丈夫、兄ちゃんに任せとけ」


 今までの俺だったら、そんなカッコいいセリフは言えなかった。

 盗賊は戦闘職業じゃないからな。


 でも俺は、【あの人】のもとで修業し、血のにじむような努力の末に手に入れたのだ。

 妹を守れる、強さを。


「ば、馬鹿兄妹が! 勝手に死にたまえ!」


 ムノッカスのごみは一人で逃げていく。

 ボスを部屋から出した張本人だっていうのに、無責任なやつだ。


「おいカス、取り巻きの女はどこいったんだよ?」

「そいつの腹のなかさ!」

「ああそうかい……」


 どうやら女どもをおとりにして、自分は逃げたようだ。

 とんだカス野郎だ。


「BUBOOOOOOOOOOOO!」

「ひ、ひぃい! ぎゃあぁああああ!」


 カス野郎が逃げていく。

 まあそれはどうでもいいんだ。


 ……妹が、その場に残っていた。

 そっちのが重要なんだ。


「妹よ。戦う気になったな?」

「……うん。だって、あの魔物のおなかのなかに、二人が、いるんでしょ? 助けて、あげないと!」


 ……ああ、マイ。おお、マイ。

 お前は本当にやさしくて、強い子だ。


 自分を馬鹿にしてきた女たちのことまで、心配してやるとは。

 もう女どもは死んでるかもしれないが、丸呑みされてるとするなら、生きてる可能性はまだ十分ある。


 マイは、こわがりだ。

 でも、優しい子だ。


 ……俺は耳を澄ます。


「マイ、大丈夫。あの化け物の腹の中で、取り巻きどもは生きてるよ」


 俺のスキル、超聴覚で、二人の心臓の音を聞き取れた。

 二人が生きてると知って、マイは心から安どの息をついてるのが、わかった。まじ、妹、優しい。


「やるぞ、妹よ」

「でも、兄さん。どうやってあんな化け物と戦うの?」

「こうやって、だ!」


 俺はまっすぐにミノタウロスへと突っ込む。


「兄さん!? 危ない!!!!!!!!!!!」

「BUBOOOOOOOOOOOO!」


 上位ミノタウロス。身長は3メートル、いや、4メートルか。

 2対の腕の巨大な化け物。


 そのすべての手にデカイ斧が握られてる。


 巨腕が俺に向かって振り下ろされる。

 俺はその攻撃を……回避。


「! すごいよ兄さん! でも、どうやって……?」


 俺は耳がいい。

 だから、俺は敵の筋肉の収縮音を拾って、相手がどのタイミングで攻撃を仕掛けてくるのか、予期することができる。


 が、敵の攻撃がいつ来るかわかっていても、完全に回避するのは不可能。

 それを可能にしてるのは、マイが俺に、速度上昇のバフをかけてくれたからだ。


「マイ、さんきゅー。速度上昇のバフ、タイミングばっちりだ!」


 マイは、すごいんだ。

 相手が欲しいタイミングで、欲しい支援魔法をくれる。


 支援魔法。バフともいう。

 攻撃力を上昇させたり、スピードをアップさせたりする魔法。


 マイが凄いのは、バフをその人が欲しいタイミングで、欲しいバフをくれること。

 ミノタウロスから攻撃が来て、俺が回避するのを見て、彼女は俺に速度上昇のバフをかけたのだ。


 俺の超聴覚。そして、マイの速度上昇バフ。

 この二つが組み合わされば、どんな攻撃だって、回避可能だ。


「BUBOOOOOOOOOOOO!」


 攻撃が全く当たらなくて、ミノタウロスがイラついてるのがわかる。

 怒れ怒れ。


 それが、俺の狙いなんだ。


「シーフ兄さん、避けてるだけじゃ勝てないよ!? どうするの?」

「大丈夫!」


 そろそろだ。

 連続で攻撃を放ってきたミノタウロスに、疲労の色が見えた。


 連続攻撃の手が、少し、ほんの少し……止まる。


「ここだ!」


 俺は回避ではなく、ミノタウロスめがけて、特攻する。


「兄さん!?」


 マイ、おまえすごいやつだよ。

 兄が魔物に突っ込んでいる、そんな危ない状況で……。


 俺が欲しいバフを、瞬時に理解し、俺にかけてくれた。

 

「速度上昇、切れ味向上、攻撃威力向上……!」


 さらに、ミノタウロスの移動速度を減少させる、阻害魔法……デバフをかける。

 そう、マイはバフだけでなく、敵にとって不利になる支援、阻害魔法デバフをかけられるのだ。


 ムノッカスは馬鹿だから最後まで気づかなかったが、いつも敵を余裕で倒せていたのは、的確なタイミングでバフ・デバフをかける、マイがいたからだ。


「マイ! 伝説の幕開けだ! よく見てろ!」


 俺はミノタウロスの腕を駆け上がる。


「シーフ兄さん!? なにするの!?」

「こいつの命を、奪う!!!!!!!!!!!」

「命を奪う!?」


 盗賊のスキルに、【強奪スティール】というものがある。

 これは、相手のアイテムや武器、装備品を、ランダムに盗むスキルだ。


 だが、俺はこの強奪スキルを、今まで一度も使ったことがなかった。

 妹に誓ったからだ。


 この力で、決して悪いことはしないって。

 ……俺の職業は盗賊。


 物がなくなると、たいてい、俺のせいにされた。

 俺は孤児だった。そして、盗賊持ち。みんなが俺を悪者にしてきた。


 でも、俺は一度も盗みなんてしたことなかったのだ。

 誰も俺の言葉を信じてくれなかった。


 ただ一人、妹だけだ。(俺たちは本当の兄妹じゃないが、今は割愛)

 俺が、やってないって、かばってくれたのは。


 俺は誓った。

 俺を信じてくれる妹のために、盗賊の強み、強奪スティールを使わないと。


 だからこそ、俺はこの領域に至ることが出来た。


「エクストラスキル、【奪命ヴォーパル・スティール】発動!」


 瞬間、俺の目の色が、変わる。

 ミノタウロスの体に、いくつもの【点】が出現する。


 あれは、弱点。

 師匠曰く、生物にはいくつもの弱点があるそうだ。


 エクストラスキル、奪命ヴォーパル・スティール

 これを使うと、俺の目には、敵の弱点が見えるようになる。


 ミノタウロスの首の後ろ、第二頸椎。

 そこが、やつの弱点。命を奪う一撃を、俺は放つ。


奪命の一撃ヴォーパル・ストライク!」


 死に至る弱点。

 そこめがけて、俺はナイフを当てる。


 そう、当てるだけでいい。

 このスキルを発動中に、弱点をつくことで、俺は一撃で命を奪うことができるようになるのだ。


 盗賊は、戦闘職でもないし、魔法職でもない。単体で敵を倒せない職業だ。

 でもこのエクストラスキルを手に入れたことで、ようやく、俺は魔物と戦えるようになった。


 妹を、守れる強さを手に入れた。


「おまえの命、もらったぁあああああああ!」


 ナイフが弱点を突く。

 瞬間、


「BUBOOOOOOOOOOOO!」


 ミノタウロスが悲鳴を上げながら、その場に崩れ落ちる。

 

「す、すごいよ……シーフ兄さん。ボスを、一撃で倒すなんて……」


 マイが驚愕してる。

 そりゃそうだ、こないだまで雑魚だった俺が、ボスを瞬殺してみせたんだから。


「いやいや、妹よ。すごいのはおまえだよ。バフとデバフで俺を支援してくれたじゃないか」


 だからこそ、俺は弱点に正確に、攻撃を与え、命を奪うことができたのだ。

 そう、妹が相手の動きを鈍らせてくれれば、俺がいくらでも、奪命で魔物を倒せる。


「言っただろ? 俺とマイ、二人がいれば、ボスに勝てるってさ」


    ★


 高難易度ダンジョンの奥にて。

 俺は妹の助力をかりて、ボスを倒すことに成功した。


 上位ミノタウロスの死体の上に、俺は乗っている。


「す、すごすぎるよシーフ兄さんっ。いつの間にこんな強くなったの?」


 妹のマイが近づいてくる。


「ちょっとな」


 こうして強くなったんだって、妹に言いたくなかった。

 強くなるためにいろいろ、頑張った。死ぬ思いを何度もした。


 でもそれを妹に言うのは、嫌だった。

 だってうちの妹は優しくていい子だからさ、自分のためにそんな危ないことした、って聞いたら悲しんでしまう。


 だから、言えない。言わなくていい。


「さっきのは俺がつい先日新しく手に入れた盗賊スキル、二つのうち1つ。奪命。これを発動中、弱点をつくことで、あらゆる敵を一撃で、命を奪える」

「すごすぎるよ! 盗賊にこんな力があったなんて!」


 師匠曰く、盗賊にというより、俺にだけ、らしいがな。

 どうやら俺は人よりも鋭い感覚を元々持っていらしい。


 それを鍛え上げた結果、奪命というすごい力を得られたそうだ。


「もう一つも、もっとすごいぞ」


 ぼんっ、という音とともにミノタウロスが消滅する。

 ミノタウロスの周りには、大量のアイテム、そして……取り巻き女どもが倒れていた。


「よかったぁ……二人とも、無事で……」


 倒れ伏す取り巻きどもを見て、妹が、心から安どの息をついた。

 俺は耳がいいので、マジで妹が、二人の身を案じていたのがわかった。うちの妹、優しすぎだぜ。


「凄い数のドロップアイテムだね。さすがボス……って、これは?」


 地面に落ちていたそれを、マイが持ち上げる。

 手のひらに収まるくらいの、宝玉だった。


技能宝玉スキル・オーブって言うんだって」

「すきる……おーぶ?」

「ああ。師匠曰く、精霊の力が凝縮した……あー、とにかく、そこに技能スキルが込められてるんだってさ」


 マイの持つ技能宝玉が、かっ! と輝く。

 そして宝玉はマイの体のなかに取り込まれた。


「!? あ、頭の中に声が……。スキル『剛腕』を獲得したって」


 師匠の予想したとおりだな。


「これ、どういうこと?」

「聞こえたとおりだよ。マイは新しいスキルを手に入れたんだ」


「!? す、スキルの獲得って、訓練が必要なんじゃなかった?」


 そのとおり。職業を極める以外に、新しいスキルは宿らない。

 それに、獲得できるスキルは、その職業に由来するものに限られる。


 付与術師は、魔法職だ。

 一方、スキル剛腕は戦闘職のスキルである。本来ならありえないスキルの獲得方法だ。


「技能宝玉を使えば、職業に関係なく、その宝玉に込められたスキルを獲得できるんだよ」

「す、すごいよ兄さん! でも……こんなすごい宝玉、どうやって手に入れたの?」

「俺の二つ目の新しいスキル、【完全解体】を使ったんだよ」


 師匠の下で修業し手に入れた、二つ目のエクストラスキル、【完全解体】。

 殺した相手のすべてを、手に入れることができる。


 通常、魔物を倒すとドロップアイテムが残る(肉とか牙とか)。

 何がドロップするかは完全にランダムだ。


 けれど、この完全解体スキルを使えば、魔物が持つすべてを、ドロップさせることができる。

 すべてとは、すべてだ。


 相手が持つ、スキルさえも。

 そう、完全解体スキルを持っているものが、相手を殺すことで、技能宝玉というかたちで、スキルをドロップさせることができるのである。


「ごめんね、兄さん。宝玉、兄さんのなのに……」


 ミノタウロスを倒したのは俺だから、宝玉は俺の、って言いたいらしい。

 なんて優しいんだ。大好きだぜ、マイ。


「気にすんな。そもそも、俺じゃ使えないからさ」

「どういうこと?」

「人にはスキルスロットってものがあるんだそうだ」

「スキルスロット……?」

「簡単に言えば、スキルを獲得できる数のことらしい」


 これも師匠から聞いた話だが、人は獲得できるスキルの数に、限りがあるそうだ。

 スキルスロットが10個なら、10のスキルを身に着けることができる。


「俺のスキルスロットは、奪命と完全解体を身に着けたことで、いっぱいになっちゃったんだ。だから、宝玉を使ってもスキルは身につかないんだよ」

「そう、なんだ……」


「ああ。そして、妹よ。よろこべ、おまえのスキルスロットは、9999個もあるそうだぞ!」


 これもまあ、師匠から聞いた話だが。

 妹はとんでもない才能の持ち主で、スキルスロット数が、人間のレベルを超えてるそうだ。

 9999のスキルを、獲得可能である。


「俺が魔物を倒せば、魔物の力を奪うことができる。そんで、おまえを強化できる」

「でも……そんな、悪いよ。私ばかり強くなって……」

「おまえの力を、お忘れかい? 付与術師さん」

「あ!」


 マイには技能付与、という付与術がある。

 一時的に所有してるスキルを、他者に付与できるという魔法だ。


「つまりマイが居れば、俺が強い敵を倒し、能力を奪って、さらに強い敵を倒せるようになる」

「! SS級も……夢じゃないね!」


 そうだ、俺たち兄妹がそろえば、無敵なのだ。


「頑張ろうぜ、マイ」

「うん!」


 ……マイにはあえて言わなかったが、完全解体の対象は、魔物だけじゃない。

 あくまでこのスキルは、殺した相手のスキルを手に入れるというもの。


 殺す相手が、人間でも……。

 まあ、それは言わなくていい。


 かくして、俺たち兄妹は、最強になる第一歩目を、踏み出したのだった。


【★大切なお知らせ】


好評につき、連載版をスタートしました!

連載に伴い、タイトル変更しています。


『有能な妹がS級パーティを追放されたので、最強盗賊の俺も一緒に抜けることにした~今更土下座されても戻る気はない、兄妹で世界最強を目指すんで~』


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有能な妹がS級パーティを追放されたので、最強盗賊の俺も一緒に抜けることにした~今更土下座されても戻る気はない、兄妹で世界最強を目指すんで~【改題】



https://ncode.syosetu.com/n2140iq/

― 新着の感想 ―
[一言] 面白そうな反面、強いスキルが出しにくいですね 飛行スキルとか手に入れると、ってなるとね 使うと他のスキルが数分使えなくなるとかの デメリットスキルとかになってしまいそう
[良い点] この短編、すごく興味が沸いています! 是非、連載化してください!
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