【連載版はじめました!】有能兄妹を追放したんだからパーティ崩壊するのも当然です~万能付与術師の妹がS級冒険者パーティを追放されたので、最強盗賊の俺も抜けることにした
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「マイ・バーンデッド! 君をこのパーティから追放する!」
ここは高難易度ダンジョンの最奥部にあるセーフゾーン。
そう追放を宣言したのは、このSランク冒険者パーティ【銀翼の大鷲】のリーダー。
ムノッカス・ヤーリッチだ。
■ムノッカス・ヤーリッチ(19)
性別:男
種族:人間
職業:勇者
ムノッカスの周りには、パーティメンバーの女ども2人がいる。
彼ら同様に、にやにやとした笑みを浮かべてやがった。……この状況を楽しんでやがる、趣味の悪い愚図どもだ。
「……え、つ、追放、ですか??」
ムノッカスから追放を言い渡されたのは、俺……ではなく、俺の可愛い妹、マイ・バーンデッド。
■マイ・バーンデッド(15)
性別:女
種族:人間
職業:付与術師
銀の長い髪に、青い瞳。
気弱そうな表情。しかし胸は大きく、ムノッカス含め、男たちの視線を釘付けにする。
そんな、俺の宇宙一可愛い妹を、このゴミかすは追放するという。
「おいムノッカス。てめえ……どういうことだ? うちの妹をどうして追放するんだ?」
「シーフ……。簡単な理由さ、君の妹が、必要のない人材だからだよ」
■シーフ・バーンデッド(16)
性別:男
種族:人間
職業:盗賊
「必要ないだぁ?」
「ああ、そのとおりさ。マイの付与術は、強くなった僕たちに、もう必要ないのだよ」
付与術。バフともいって、味方の力を向上したり、武器に魔法の属性を付与したりする特殊な魔法のことだ。
「今日、この最難関団ダンジョンの奥に来るまでの間、僕たちはマイの付与を必要としなかった。もう僕らは十二分に強くなったって証拠さ」
そうよそうよ、と取り巻きの女2名もうなずく。
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………。
だめだ、こいつら。
なーんもわかってない。
マイの付与を必要としないだぁ?
今日もがっつり、マイに付与もらってただろうが。
お前らが巷で『勇者パーティ』なんて周りからチヤホヤされてるの、全部マイの付与があってこそだろうが!
「それに、マイには重要な欠点がある」
この世の何よりも美しく、非の打ちどころなんて一つもないマイに対して、欠点だと?
……いいだろう、聞いてやろう。
「マイ、君は極度の口下手だ。そのせいで、連携が取れない。付与をくれってタイミングでよこしてくれない」
ばーか。ちげーよ。
付与が欲しいって思った時には、もうマイは付与をすでにかけてるんだよ。
まあ、確かにマイは人としゃべるのが苦手だ。
引っ込み思案な子なのだ。
今も、マイは俺の陰にかくれてびくびくしてる。
でも、俺からすれば悪いのはこのムノッカスだ。
今日に限らず、ムノッカスはマイを頭ごなしに否定してくる。
適切なタイミングで付与くれないおまえは無能だの、しゃべれないつまらない女だの。
よくもまあ、言えたものだな。
俺は、知ってるんだからな。
「連携の取れない、使えない付与術師なんてこのパーティには必要ない。よって、出ていきたまえ、マイ・バーンデッド」
「…………」
「何か言いたいことはないのか?」
「…………」
「はっきり言ってみろ!」
びくんっ、とマイが体を委縮させる。
「出ていきなさいよ無口の無能女」
「見た目がいいしか取り柄のないカスに、ここはふさわしくないのよ!」
ああ、マイ。ごめんな。
兄ちゃん……我慢の限界ですわ。
「おい無能カス」
「なに? ぶげぇえええええええええええええええ!」
俺は無能カス野郎、じゃなかった、ムノッカスの頬をぶん殴る。
「「ムノッカスぅ!?」」
取り巻き女どもが悲鳴を上げる。
ほんとはてめえらもぶん殴りたいところだが、マイが見てる前で、女は殴れない。
マイに感謝しろよ。
「し、シーフぅ! 何をするんだね!?」
「てめえがうちの可愛い妹をいじめたのが悪い。いくぞ、マイ」
俺はマイの手を引いて、セーフゾーンを出ていこうとする。
戸惑いながらも、ついてくるマイ。
「お、おいシーフ! どこに行くのだよ!?」
「俺もこのパーティ抜ける。妹を侮辱するようなリーダーのもとで、やってられっかよ」
もともとここにいるのは嫌だったんだ。
なぜなら……。
「そういや、ムノッカスさんよ。さっきの追放理由、不十分じゃねえか?」
「ど、どういうことだ?」
「俺は【聞いた】ぞ。……うちの妹に、こないだ言ったことを。僕の女になれ、だっけ?」
「な!?」
「「え~~~~~~~~~~~~~!?」」
女どもが驚愕してる。
多分知らなかったのだろう、ムノッカスがマイに告ったことを。
「ムノッカス!? どういうこと!? アタシと付き合ってるんじゃないの!?」
「私という女がありながら、マイに告白ですって!?」
取り巻き女どもも驚いてやがる。
ムノッカスはこいつに二股かけてやがったうえに、マイも自分の女にしようとしていた。三股かけようとしていたのだ。
「さっきのお前の発言も、『この僕の恋人になるなら、考え直してやってもいいが?』とかいうつもりだったんだろ、後でこっそりとよ」
パーティ脱退をちらつかせ、自分の女にしようとしたわけだ。
ほんっとカス野郎だなこいつ。
「で、でたらめを言うな!? 何を証拠にそんなことを!?」
「なんだ、俺の【耳】が人より優れてること、もうお忘れですかぁ?」
俺の職業は、盗賊。
トラップを見抜いたり、宝箱の鍵を開けたりと、ダンジョン攻略には必要な職業だ。
そのうえで、俺は特別な力がある。
【超聴覚】。聴覚を強化するスキルだ。
これのおかげで、遠く離れた場所にいる魔物の足音を聞いて、危険を回避することができる。
隠れて行われていた痴話げんかの内容も、簡単に盗み聞きできるってわけだ。
「人の会話を盗み聞きするなんて! なんとマナー違反な!」
「あいにくと盗賊なんでね。盗みは得意なんだよ」
まあ、得意なだけで、人からモノを盗むんだことは一度もない。
妹に、約束したからな。この力は、悪いことには使わないって。
「とにかく、マイを追放するなら、俺もパーティを抜ける。あばよ、くそ野郎」
俺はマイの手を引いて、セーフゾーンを出ていく。
背後では取り巻きどもと痴話げんかが繰り広げられてる。
いい気味だ。
「シーフ、兄さん……」
帰り道、ずっと黙っていたマイが口を開く。
「ごめんね……」
立ち止まって振り返る。
彼女は本当に申し訳なさそうな声で、言う。
「私のせいで、シーフ兄さんまで……Sランクパーティ抜けることになっちゃった」
俺は耳がいい。
だから、声の感じから、その人の心がなんとなくわかる。
彼女からの声は、自分を責めているのが伝わってくる。
本気で自分のせいだと思ってるようだ。
「マイ。気にすんな。前からあの無能カスは嫌いだったし、俺」
「でも……Sランクパーティに、やっとなれたんだよ? 私たちの、目標だった」
俺たち兄妹には、冒険者のトップ……SSランク冒険者になる、という目標がある。
親父の墓場の前で、そう誓ったんだ。
今はSランクだった。あと一歩のところまで来ていた。
それを、自分のせいで、夢から遠のいてしまった。と、マイは思ってるのだろう。
「大丈夫だよ、マイ。おまえがいれば、SS級なんてすぐになれるさ」
SS級になるためには、パーティメンバー全員がSランク冒険者になる必要がある。
俺もマイも、今はDランク。下から二番目のランクだ。
でもこの位置づけは不当だと思ってる。
手柄を全部、あの無能カス野郎に取られてしまっているからだ。
「無理だよ。兄さんはともかく、私みたいな雑用付与術師なんて、大したことないもん……。パーティ追い出されるくらいだし……」
雑用付与術師。
ムノッカスたちが、妹を陰でそう呼んでいることは知ってる。
あいつは、マイが戦闘では役立たずだからといって、掃除や洗濯、武器のメンテなど、雑用係を妹に押し付けていたのだ。
「マイ。おまえはすごいやつなんだよ」
「ありがとう……」
ああ、マイが悲しんでいる。
多分俺が優しいから、気を使って言ってくれてるって思ってるんだろう。
なんと痛ましい声だ。
本当におまえは強い子なのに。
それをわかってやれるのは……俺だけだ。
俺は改めて決意する。
マイのことを、俺だけは、正しく評価してあげようって。
「マイ。おまえは本当に強い。それに、兄ちゃんも、強いおまえに並ぶため、必死になって修行したんだ。それでな、つい昨日、俺の職業のレベルが上がって新しいスキルが……」
と、そのときだった。
「ひぎゃぁああ! た、助けてくれぇええええええええええええい!」
ムノッカスが大声を上げながらこちらに向かってくる。
そして、俺は聞いた。
奴らの背後から聞こえる、魔物の足音を。
「シーフ兄さん? どうしたの?」
まだちょっと距離があるから、マイは気づいていないようだ。
ムノッカスがどうやら、魔物に追いかけられてるってことに。
あいつらは多分ボスに挑んだはずだ。
でも、逃げてきた。
そして背後から魔物の足音。考えられる状況は一つだ。
「マイ、【迷宮主の放浪】だ」
「!? わ、迷宮主の放浪って……たしか、ボスがボスの部屋から出てくる現象?」
迷宮にはボスが存在する。
ボスは自分のいる部屋から出れない仕様となっている(なぜかは不明)。
しかし、まれにボスが部屋から出てくることがある。
ボスに挑んだ冒険者が、大してダメージをあたえられず、敗走するときとかな。
その現象を、迷宮主の放浪という。
「どうやらムノッカスのごみが、ボスに挑んですぐにげたらしい。今追いかけられてるのはあいつだ」
「たいへん! すぐ……助けないと!」
……ああ、妹よ。
おまえはなんて優しい子なんだ。
今しがた自分を理不尽に追放したカス野郎の身を、案じてやっている。
兄ちゃんはそんな優しいお前のことが大好きだ。
本当なら、彼女を担いででもこの場から離脱したいところ。
けれど、ちょうどいい。
「戦うぞ、妹よ」
「え!? む、無理だよ! 付与術師と盗賊、二人だけじゃ、ボスなんて倒せないよ!」
確かにそうだ。
どちらの職業も、直接的な戦闘能力はない。挑んでも無駄死にするだけだろう。
「マイ。大丈夫だ。ここにいるのは付与術師と盗賊じゃない。俺とマイ、二人がいれば、ボスに勝てる」
俺には確信があった。
なぜなら俺の妹は、すごいから。
そして、俺もまた、すごい妹に並ぶくらい、最強につい先日成ったからだ。
★
職業。
この世界の人間が生まれたときに、天の神様から与えられる特殊能力のことだ。
たとえば、剣士の職業を与えられたものは、天性の剣の才能を持って生まれる。
魔法使いなら、人よりも魔法習得に掛る時間が短くなるなど。
俺の職業は、盗賊。
聞き耳、鍵開け、など手先の器用さを必要とする技能を持って生まれた。
それらは確かに迷宮探索には必要とされるだろうが、しかし、魔物との戦いにおいては全く役に立た【なかった】。
そう、過去形だ。
職業は一生変えられない。
でも、努力すれば、職業は進化する。
俺にはすごい妹がいる。
そんな妹に並び立つため、俺は必死になって腕を磨いた。
そして、俺は二つの、すごいスキルを手に入れたのだ。
★
高難易度ダンジョン、ボス部屋付近。
「BUBOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
このダンジョンのボスらしきモンスターが、俺たちの前に現れる。
2対の腕を持つ、巨大なミノタウロス。
■上級ミノタウロス
分類:亜人型モンスター
ランク:S
「き、君たちも逃げろ! 殺されるぞぉお!」
このボス、ミノタウロスに挑み、おめおめと逃げ帰ってきたムノッカスが、情けなく言う。
「逃げたきゃ逃げればいい。俺と妹が、こいつをぶっ殺す」
「できるわけないだろ!?」
俺は腰のナイフを抜いて構える。
妹のマイも、ムノッカス同様に思っているようだ。
あの化け物には、勝てないって。
「し、シーフ兄さん! 逃げようよ! 死んじゃうよぉ!」
俺は振り返って、にっと笑う。
「俺は死なないし、逃げないよ。大丈夫、兄ちゃんに任せとけ」
今までの俺だったら、そんなカッコいいセリフは言えなかった。
盗賊は戦闘職業じゃないからな。
でも俺は、【あの人】のもとで修業し、血のにじむような努力の末に手に入れたのだ。
妹を守れる、強さを。
「ば、馬鹿兄妹が! 勝手に死にたまえ!」
ムノッカスのごみは一人で逃げていく。
ボスを部屋から出した張本人だっていうのに、無責任なやつだ。
「おいカス、取り巻きの女はどこいったんだよ?」
「そいつの腹のなかさ!」
「ああそうかい……」
どうやら女どもをおとりにして、自分は逃げたようだ。
とんだカス野郎だ。
「BUBOOOOOOOOOOOO!」
「ひ、ひぃい! ぎゃあぁああああ!」
カス野郎が逃げていく。
まあそれはどうでもいいんだ。
……妹が、その場に残っていた。
そっちのが重要なんだ。
「妹よ。戦う気になったな?」
「……うん。だって、あの魔物のおなかのなかに、二人が、いるんでしょ? 助けて、あげないと!」
……ああ、マイ。おお、マイ。
お前は本当にやさしくて、強い子だ。
自分を馬鹿にしてきた女たちのことまで、心配してやるとは。
もう女どもは死んでるかもしれないが、丸呑みされてるとするなら、生きてる可能性はまだ十分ある。
マイは、こわがりだ。
でも、優しい子だ。
……俺は耳を澄ます。
「マイ、大丈夫。あの化け物の腹の中で、取り巻きどもは生きてるよ」
俺のスキル、超聴覚で、二人の心臓の音を聞き取れた。
二人が生きてると知って、マイは心から安どの息をついてるのが、わかった。まじ、妹、優しい。
「やるぞ、妹よ」
「でも、兄さん。どうやってあんな化け物と戦うの?」
「こうやって、だ!」
俺はまっすぐにミノタウロスへと突っ込む。
「兄さん!? 危ない!!!!!!!!!!!」
「BUBOOOOOOOOOOOO!」
上位ミノタウロス。身長は3メートル、いや、4メートルか。
2対の腕の巨大な化け物。
そのすべての手にデカイ斧が握られてる。
巨腕が俺に向かって振り下ろされる。
俺はその攻撃を……回避。
「! すごいよ兄さん! でも、どうやって……?」
俺は耳がいい。
だから、俺は敵の筋肉の収縮音を拾って、相手がどのタイミングで攻撃を仕掛けてくるのか、予期することができる。
が、敵の攻撃がいつ来るかわかっていても、完全に回避するのは不可能。
それを可能にしてるのは、マイが俺に、速度上昇のバフをかけてくれたからだ。
「マイ、さんきゅー。速度上昇のバフ、タイミングばっちりだ!」
マイは、すごいんだ。
相手が欲しいタイミングで、欲しい支援魔法をくれる。
支援魔法。バフともいう。
攻撃力を上昇させたり、スピードをアップさせたりする魔法。
マイが凄いのは、バフをその人が欲しいタイミングで、欲しいバフをくれること。
ミノタウロスから攻撃が来て、俺が回避するのを見て、彼女は俺に速度上昇のバフをかけたのだ。
俺の超聴覚。そして、マイの速度上昇バフ。
この二つが組み合わされば、どんな攻撃だって、回避可能だ。
「BUBOOOOOOOOOOOO!」
攻撃が全く当たらなくて、ミノタウロスがイラついてるのがわかる。
怒れ怒れ。
それが、俺の狙いなんだ。
「シーフ兄さん、避けてるだけじゃ勝てないよ!? どうするの?」
「大丈夫!」
そろそろだ。
連続で攻撃を放ってきたミノタウロスに、疲労の色が見えた。
連続攻撃の手が、少し、ほんの少し……止まる。
「ここだ!」
俺は回避ではなく、ミノタウロスめがけて、特攻する。
「兄さん!?」
マイ、おまえすごいやつだよ。
兄が魔物に突っ込んでいる、そんな危ない状況で……。
俺が欲しいバフを、瞬時に理解し、俺にかけてくれた。
「速度上昇、切れ味向上、攻撃威力向上……!」
さらに、ミノタウロスの移動速度を減少させる、阻害魔法……デバフをかける。
そう、マイはバフだけでなく、敵にとって不利になる支援、阻害魔法デバフをかけられるのだ。
ムノッカスは馬鹿だから最後まで気づかなかったが、いつも敵を余裕で倒せていたのは、的確なタイミングでバフ・デバフをかける、マイがいたからだ。
「マイ! 伝説の幕開けだ! よく見てろ!」
俺はミノタウロスの腕を駆け上がる。
「シーフ兄さん!? なにするの!?」
「こいつの命を、奪う!!!!!!!!!!!」
「命を奪う!?」
盗賊のスキルに、【強奪】というものがある。
これは、相手のアイテムや武器、装備品を、ランダムに盗むスキルだ。
だが、俺はこの強奪スキルを、今まで一度も使ったことがなかった。
妹に誓ったからだ。
この力で、決して悪いことはしないって。
……俺の職業は盗賊。
物がなくなると、たいてい、俺のせいにされた。
俺は孤児だった。そして、盗賊持ち。みんなが俺を悪者にしてきた。
でも、俺は一度も盗みなんてしたことなかったのだ。
誰も俺の言葉を信じてくれなかった。
ただ一人、妹だけだ。(俺たちは本当の兄妹じゃないが、今は割愛)
俺が、やってないって、かばってくれたのは。
俺は誓った。
俺を信じてくれる妹のために、盗賊の強み、強奪を使わないと。
だからこそ、俺はこの領域に至ることが出来た。
「エクストラスキル、【奪命】発動!」
瞬間、俺の目の色が、変わる。
ミノタウロスの体に、いくつもの【点】が出現する。
あれは、弱点。
師匠曰く、生物にはいくつもの弱点があるそうだ。
エクストラスキル、奪命。
これを使うと、俺の目には、敵の弱点が見えるようになる。
ミノタウロスの首の後ろ、第二頸椎。
そこが、やつの弱点。命を奪う一撃を、俺は放つ。
「奪命の一撃!」
死に至る弱点。
そこめがけて、俺はナイフを当てる。
そう、当てるだけでいい。
このスキルを発動中に、弱点をつくことで、俺は一撃で命を奪うことができるようになるのだ。
盗賊は、戦闘職でもないし、魔法職でもない。単体で敵を倒せない職業だ。
でもこのエクストラスキルを手に入れたことで、ようやく、俺は魔物と戦えるようになった。
妹を、守れる強さを手に入れた。
「おまえの命、もらったぁあああああああ!」
ナイフが弱点を突く。
瞬間、
「BUBOOOOOOOOOOOO!」
ミノタウロスが悲鳴を上げながら、その場に崩れ落ちる。
「す、すごいよ……シーフ兄さん。ボスを、一撃で倒すなんて……」
マイが驚愕してる。
そりゃそうだ、こないだまで雑魚だった俺が、ボスを瞬殺してみせたんだから。
「いやいや、妹よ。すごいのはおまえだよ。バフとデバフで俺を支援してくれたじゃないか」
だからこそ、俺は弱点に正確に、攻撃を与え、命を奪うことができたのだ。
そう、妹が相手の動きを鈍らせてくれれば、俺がいくらでも、奪命で魔物を倒せる。
「言っただろ? 俺とマイ、二人がいれば、ボスに勝てるってさ」
★
高難易度ダンジョンの奥にて。
俺は妹の助力をかりて、ボスを倒すことに成功した。
上位ミノタウロスの死体の上に、俺は乗っている。
「す、すごすぎるよシーフ兄さんっ。いつの間にこんな強くなったの?」
妹のマイが近づいてくる。
「ちょっとな」
こうして強くなったんだって、妹に言いたくなかった。
強くなるためにいろいろ、頑張った。死ぬ思いを何度もした。
でもそれを妹に言うのは、嫌だった。
だってうちの妹は優しくていい子だからさ、自分のためにそんな危ないことした、って聞いたら悲しんでしまう。
だから、言えない。言わなくていい。
「さっきのは俺がつい先日新しく手に入れた盗賊スキル、二つのうち1つ。奪命。これを発動中、弱点をつくことで、あらゆる敵を一撃で、命を奪える」
「すごすぎるよ! 盗賊にこんな力があったなんて!」
師匠曰く、盗賊にというより、俺にだけ、らしいがな。
どうやら俺は人よりも鋭い感覚を元々持っていらしい。
それを鍛え上げた結果、奪命というすごい力を得られたそうだ。
「もう一つも、もっとすごいぞ」
ぼんっ、という音とともにミノタウロスが消滅する。
ミノタウロスの周りには、大量のアイテム、そして……取り巻き女どもが倒れていた。
「よかったぁ……二人とも、無事で……」
倒れ伏す取り巻きどもを見て、妹が、心から安どの息をついた。
俺は耳がいいので、マジで妹が、二人の身を案じていたのがわかった。うちの妹、優しすぎだぜ。
「凄い数のドロップアイテムだね。さすがボス……って、これは?」
地面に落ちていたそれを、マイが持ち上げる。
手のひらに収まるくらいの、宝玉だった。
「技能宝玉って言うんだって」
「すきる……おーぶ?」
「ああ。師匠曰く、精霊の力が凝縮した……あー、とにかく、そこに技能が込められてるんだってさ」
マイの持つ技能宝玉が、かっ! と輝く。
そして宝玉はマイの体のなかに取り込まれた。
「!? あ、頭の中に声が……。スキル『剛腕』を獲得したって」
師匠の予想したとおりだな。
「これ、どういうこと?」
「聞こえたとおりだよ。マイは新しいスキルを手に入れたんだ」
「!? す、スキルの獲得って、訓練が必要なんじゃなかった?」
そのとおり。職業を極める以外に、新しいスキルは宿らない。
それに、獲得できるスキルは、その職業に由来するものに限られる。
付与術師は、魔法職だ。
一方、スキル剛腕は戦闘職のスキルである。本来ならありえないスキルの獲得方法だ。
「技能宝玉を使えば、職業に関係なく、その宝玉に込められたスキルを獲得できるんだよ」
「す、すごいよ兄さん! でも……こんなすごい宝玉、どうやって手に入れたの?」
「俺の二つ目の新しいスキル、【完全解体】を使ったんだよ」
師匠の下で修業し手に入れた、二つ目のエクストラスキル、【完全解体】。
殺した相手のすべてを、手に入れることができる。
通常、魔物を倒すとドロップアイテムが残る(肉とか牙とか)。
何がドロップするかは完全にランダムだ。
けれど、この完全解体スキルを使えば、魔物が持つすべてを、ドロップさせることができる。
すべてとは、すべてだ。
相手が持つ、スキルさえも。
そう、完全解体スキルを持っているものが、相手を殺すことで、技能宝玉というかたちで、スキルをドロップさせることができるのである。
「ごめんね、兄さん。宝玉、兄さんのなのに……」
ミノタウロスを倒したのは俺だから、宝玉は俺の、って言いたいらしい。
なんて優しいんだ。大好きだぜ、マイ。
「気にすんな。そもそも、俺じゃ使えないからさ」
「どういうこと?」
「人にはスキルスロットってものがあるんだそうだ」
「スキルスロット……?」
「簡単に言えば、スキルを獲得できる数のことらしい」
これも師匠から聞いた話だが、人は獲得できるスキルの数に、限りがあるそうだ。
スキルスロットが10個なら、10のスキルを身に着けることができる。
「俺のスキルスロットは、奪命と完全解体を身に着けたことで、いっぱいになっちゃったんだ。だから、宝玉を使ってもスキルは身につかないんだよ」
「そう、なんだ……」
「ああ。そして、妹よ。よろこべ、おまえのスキルスロットは、9999個もあるそうだぞ!」
これもまあ、師匠から聞いた話だが。
妹はとんでもない才能の持ち主で、スキルスロット数が、人間のレベルを超えてるそうだ。
9999のスキルを、獲得可能である。
「俺が魔物を倒せば、魔物の力を奪うことができる。そんで、おまえを強化できる」
「でも……そんな、悪いよ。私ばかり強くなって……」
「おまえの力を、お忘れかい? 付与術師さん」
「あ!」
マイには技能付与、という付与術がある。
一時的に所有してるスキルを、他者に付与できるという魔法だ。
「つまりマイが居れば、俺が強い敵を倒し、能力を奪って、さらに強い敵を倒せるようになる」
「! SS級も……夢じゃないね!」
そうだ、俺たち兄妹がそろえば、無敵なのだ。
「頑張ろうぜ、マイ」
「うん!」
……マイにはあえて言わなかったが、完全解体の対象は、魔物だけじゃない。
あくまでこのスキルは、殺した相手のスキルを手に入れるというもの。
殺す相手が、人間でも……。
まあ、それは言わなくていい。
かくして、俺たち兄妹は、最強になる第一歩目を、踏み出したのだった。
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