6、「名もなき魔女」は勝利を確信している! うふふふふっ
原作で主人公とヒロインが結ばれるパーティの前夜。
招待客である隣国グランデール王国のロザリア姫は、勝利を確信していた。
「生まれながらの貴い身分の人間たちって、むかつくわ。王子も、王子の想い人も、みんな不幸になればいいと思うの」
ロザリア姫は、鏡をみながら自分の美しさにため息をついた。
豪奢な金髪に、ルビーのような赤い瞳。
化粧映えのよい目鼻立ちに、豊満な胸。
「魔女に転生してよかった。んふふふふっ」
彼女は、転生者だった。
彼女は、美しい「ヒロイン」に憧れていた。
けれど、実は彼女はロザリア姫としては転生できなかった。
彼女は原作小説の登場人物ではなく、モブである「名もなき魔女」に生まれ変わった。
せっかく原作小説の世界に生まれ変わったのに。推しの王子が生きているのに。
自分がロザリア姫だったら王子と結ばれるのに――と悔しがって、彼女は思いついた。
【あっ、そうだ。今からでもロザリア姫になっちゃえばいいんだ】
だから、「名もなき魔女」はロザリア姫を殺害して、魔法でロザリア姫に変身した。
「うふふふふっ。愛し合う二人の婚約は破棄! 両片想いも実らない! この世界が小説の世界だと、私だけが知っているのだもの。私がこの世界の主役よ。なんでも思い通りにし放題なんだから!」
ロザリア姫になりすました「名もなき魔女」は、成功を確信していた。