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第7話 ニガテ克服!勇者、心のパンプアップ!!

【登場人物紹介】


( ^ω^)【筋肉その1】:苦手なものは数字。感覚で生きている。



  ('A`)【筋肉その2】:苦手なものは酒。感覚が鈍る。



   (゜、゜*)【魔女】:苦手なものは暗闇。感覚が分からなくなる。



   ( ・∀・)【勇者】:苦手なものは冷たい食べ物。知覚過敏。


【バベリング・タワー48階】



(;・∀・)「はぁ、はぁ……ここまでは、なんとか登ってこれたけど……」



 タワー入場から3日。負けと辛勝を繰り返しながらも、なんとかバベリング・タワーを登り続けてきた勇者。しかし、ここへ来てその鈍亀の如き歩みにさらなるブレーキがかかった。



 ようは全く勝てなくなったのである。



(゜、゜*)「もう2日は、このフロアにいるわね」



( ^ω^)「ならば勇者の元々の実力が、この階のレベルだったと言うわけだな」



  ('A`)「となると、勇者の今の実力を単純に数値化するとLv48……いや、ここの最上階は600階だから、簡単のために最大Lvを100とすると」



  ('A`)「Lv8だな」



(゜、゜*)「ザコじゃん」



( ^ω^)「3番どうろ辺りに出現しそう」



( ・∀・)「僕に力があればお前らを瀕死にしてやれるのに」



 ここまでの階層は旅で培った経験でなんとか勝てていたが、ここからはそうもいかない。モンスターと戦い、経験を積み、実力をつけなければ、上のフロアの扉は開かれないのだ。


 


( ^ω^)(……とくれば、むしろこの階層が本当の修行のスタート地点、グランドフロアと言えよう。のう?)


 そう判断した筋肉達は互いに目配せをすると、肩で息をする勇者に、その理由を問うた。



  ('A`)「うむ。勇者、何故お前が勝てないのか。分かるか?」



( ・∀・)「え?そりゃあ、だって。弱いからだろ?」



  ('A`)「違う。『力の強い弱い』と『勝ち負け』は、そんな単純ではない。強くても負ける。弱くても勝つ。勝負事じゃあ、そんなのは往々にして起こる」



 筋肉の拳に力が入る。理不尽な敗北、喜べない勝利……幼き頃より幾度となき闘争を経てきた彼らの筋肉には、十分過ぎる程の甘酸が溜まっていた。



  ('A`)「そして勇者。俺の見立てではこのフロアの、いや、もっと上のフロアのモンスターにだって勝てる!」



  ('A`)「その実力を、お前は既に持っている!」



(・∀・;)「な、ホントに!?」



( ^ω^)「まっこと筋肉は嘘を()かん」



(゜、゜*)「じゃあ、なんで勝てないのよ?」



  ('A`)「うむ。話した通り、実力と勝敗は等号(イコール)で結ばれるものではない。では、何が勝敗の分水嶺となるのか」



 筋肉は己の胸をどんと叩く。



  ('A`)「心よ。心が勝負を決めるのよ」



(;・∀・)「心……?」



 勇者は眉をひそめた。心持ちが勝敗を分かつ、そんな精神論は勇者になる前から聞き飽きている。



(;・∀・)「いや、僕だって勝ちたいとは思っているさ!」



( ^ω^)「その意気込みは大切だ。しかしそれ以前の話だ。勇者、お前は敗北を恐れている。戦いを恐れている。なぜなら、死が恐ろしいからだ」



「死と戦いは隣人であり、なかでも敗北は死に直結する。生物なら本能で理解していることだ。ライオンの狩りから逃げる鹿しかり、雄と雄の縄張り争いしかり……日々の生活は本来、戦いの連続だ」



  ('A`)「しかし人間はそれら死の恐怖を味わわなくて済むように、仲間が安心して暮らせるように、社会を発展させてきた。日々の暮らしで死の恐怖に怯えなくてよいというのは、先人の築き上げた理想であり夢である」



  ('A`)「だからこそ!その理想や夢を守る為に、文明から野蛮に戻り戦う者は、恐怖を除かねばならない!そして恐怖を克服した者こそ、勝ち負けを争う実力の世界(・・・・・)へ足を踏み入れることができるのだッ!!」



(;・∀・)「『敵』なんかよりもずっと前に、そもそも僕は『戦い』に負けていたのか」



( ^ω^)「だが安心しろ!今は俺等が筋肉だッ!敵に負けても俺等が勇者の心臓を守ってやる。敵に殺させやしねぇッ!」



  ('A`)「それに、この塔の中じゃ、そもそも負けても殺されまではしねぇからな」



  ('A`)「だからよぉ、安心して負けてこいや」



( ・∀・)「……うん。分かったよ」




       「喰らえオラッ!!」

「ゴブリンみねうちチョップッ!!」(ФДФ#)



( ・∀・)──



 そうか。負けてもいいのか。モンスターに殺されるなんて嫌だから、ずっと勝たなきゃって重荷を持っていた。でも今はあの二人がいる。



(゜、゜*)「……」



 両の腕が軽くなった気分だ。緊張の糸がほぐれたというより、誰かが一緒に荷を持ってくれているようだ。



( ・∀・)「でりゃあああああッ!!」



 僕は初めて、思いっきり剣を振るった──



  ('A`)「そうだ。それでいい」



( ^ω^)「100回負けて、101回目に1勝できれば上出来よ」



 そして──



      「隙だらけゴブッ!!」(ФДФ#)



(; ∀ )「あでッ!!」



 初めて、実力で(・・・)打ちのめされた──




──勇者、怒涛のぶつかり稽古がここから始まるッ!迫りくるモンスターに負けては勝ち、勝っては負ける……文字で表せば以前とさほど変わらない、なんなら負けの回数は多いくらいだ。



 しかしその実、その質、その密度。比べ物にならない。例えば敵の得物を追う視線。最初は恐れて瞑って

いたものを、今や目ン玉ひん剥き捉えんとする。



 結局体が追いつかず、攻撃を喰らおうものの、もはや背を向け後頭部に一撃を入れられることはない。額で受け止め、せめてもの反撃で睨み返す。その瞳日、もはや恐れの震えは見えない。



 10階、100階。塔を1段登る度、勇者の動きは軽くなる。筋肉達は、たったこれだけの修行で、実力がついきた等とは思わなかった。ただ勇者の心が、実力に追いついてきた、それだけのこと。



( ^ω^)(たったそれだけのことが、なんと喜ばしいことよ……)



  ('A`)(恐れずに壁に立ち向かい、頂上を目指す……ふふ。幼い頃の『崖登り』を思い出すな)



──そんなこんなで、バベリング・タワー224階



  「オーックック……なんだぁ?」

「随分と弱っちい奴が現れたモンだ」(ФДФ )



 勇者の眼の前には、身の丈の倍はあろう巨躯のオークが、棍棒片手に涎を垂らし、彼を見下ろしていた。



(`・∀・)「……」



 かつての勇者ならこの時点で半歩、左の脚を後退させていたであろう。しかし今や前屈みになって、モンスターの挙動を捉えんとしている。



  「なに突っ立ってやがるオク?」(ФДФ )



 まるで恐怖を見せない勇者を訝しみながらも、オークは戦闘態勢に入る。



「来ないなら、オデから行くぞッ!」(ФДФ )



 その巨躯と間抜けな顔に似合わぬスピードで、オークは一気に間合いを詰めると、即座に勇者の脳天へ棍棒を振り下ろしたッ!!



(ФДФ#)「クォラァッ!……あ?」



 だが直後、塔に響いたのは頭蓋の骨が砕ける高い音ではなく、岩を打ったような鈍い音──「うん。ちゃんと"見えてる"」(・∀・ )



 いくら素早く動こうが、オークの動きは洗練されておらず、無駄が多い。間合いを詰めて攻撃するまで、合計1秒以上も自由時間があった。その隙を縫って、勇者はオークの無駄な巨体が生み出した死角から、攻撃を躱したのだ。



(#ФДФ)「オググちょこまかと……」



 攻撃が当たらなかった苛立ちと、遅れてきた手の痺れから、オークの緑の顔面はみるみる赤くなっていく。



(#ФДФ)「()ッ!!」



 (隙だらけだな……いや、違うか)(・∀・ )



    (僕が、成長したんだッ!)(・∀・ )



 何度来ても同じこと……勇者はまたもオークの死角を見つけだし、回避行動に移、



    (いや、ここが攻め時だッ)(・∀・ )



 勇者は身を屈めて、先程と同じようにオークの脇の下を抜ける。そして同時に居合の要領で、横っ腹を斬りつけるッ!!



(・∀・;)「ッ……ここッ!!」



         「ぐゥゥッ!!」(#ФДФ)



 再び鈍い音。床を砕き削る程の力を込めたせいか、斬られた腹から血が噴き出した。オークは、そこで初めて、自分が攻撃されたことに気がついた。



     「フゥー……フゥー……」(ФДФ#)彡



 怒りを湛えた顔面で、敵を追うオーク。だがその瞳が敵を捉えるより先に、彼の意識が霞はじめ、



             「……」(ФДФ )



 ついに崩れ落ち、その巨体を地面に沈めた。



(;・∀・)「……フゥー……やったぞ!一回もまともに喰らわずに」



(・∀・;)「勝てたよッ!?」



(゜、゜*)「やるじゃない勇者!」



  ('A`)「あぁ、少しヒヤリとした場面もあったが。冷静に対処できていた」



( ^ω^)「このオークも手練と見えた。これで次のフロアへも行けるだろう」



 こうして勇者達は、また一つ強くなり215階層へ上がる。経験的に分かってきたことだが、この塔には15階ごとに休憩フロアが設けられており、簡易宿泊所も設置されている。



(゜、゜*)「あれ?もう外は夜なのね」



( ^ω^)「なら今夜はこの階で休むとするか……」



 宿泊所の利用申込をしようとサービスカウンターへ向かう。だがカウンターの向こうに立っていたのは、いつものような女性魔人のスタッフではなかった。



    「やぁ諸君。待っていたよ」( <_ )



 そこには、赤色のフルフェイスヘルメットを被り、ピッチピチのヒーロースーツに身を包ん、見る限りヤバい奴が腕を組んで仁王立ち。顔をこちらに向けていた。


(・∀・;)「何?あの人」



(゜、゜*)「目を合わせちゃ駄目よ」



( ^ω^)「どちら様だ?」



          「レインボー7」( <_ )



     「と、言えば伝わるかな?」( <_ )



  (;'A`)「!!?」(・∀・;)


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