第6話 修行開始ッ!!目指せ6,666mの頂き!!
【登場人物紹介】
( ^ω^)【筋肉その1】:幼い頃の夢はバケツプリンを一人で食べること。あっさりと叶えてしまい虚無に襲われた。
('A`)【筋肉その2】:幼い頃の夢は漫画の世界に行くこと。絶対に叶わないと知り虚無に襲われた。
(゜、゜*)【魔女】:幼い頃の夢は両親のような立派な魔法使いになること。両親の離婚により虚無に襲われた。
( ・∀・)【勇者】:思い返せば幼い時分に夢を描いたことがなく虚無に襲われた。
( ・∀・)「ここが、バベリング・タワー……」
思わず勇者が息を飲んだのも無理はない。巨大な塔とは聞いていた。聞いてはいたが、いざ眼前にすると、塔というよりも壁……いや、山脈のような存在感。けれど息づかいは感じられない、無情不動の鉄の山。圧倒、まさにかくの如し。
だがそれも無理はない。6,666mという標高を支えるこの塔の接地面積は50万㎡──浦安は舞浜の夢の国と同等の規模を誇る!
これほどの質量を以てここに立つ理由は、果たして天を衝く為か、それとも天を支える為か、塔は語らない。
('A`)「おいおい、塔のてっぺんが雲に隠れちまってるじゃねぇか。ワクワクしてきたぜ」
筋肉達はそんな超ド級建造物を前に、興奮冷めやらぬ様子で大胸筋を震わせていた。
( ^ω^)「あぁ。ネオヤマト・タワーが子どもに見えるな」
【ネオヤマト・タワー】全長2,427m(8010尺)
ネオヤマトのランドマークであり、鉄筋鉄骨建築家・筋骨鉄太郎氏の傑作。
錆色の鉄骨一本を地表と垂直に打ち込んだ、潔く男気溢れた鉄塔。
鉄太郎氏曰く「塔というより棒。なんで立っていられるのか私も分からない」
(゜、゜*)「入口はどこかしら?」
「あら?妙に大きな気を感じて来てみたら」( v *)
「まさか、勇者サマのご来店とはね」(・v・*)
(;^ω^)「ッ!!?」('A`;)
不意に現れた女に、筋肉達の額から汗が一筋。
(;'A`)(殺気を……いや、気配すら感じさせずに俺等の背後を取っただと?)
(*゜、゜)「あら、アナタは?」
「私は塔の入場ゲート受付」(・v・*)
「いらっしゃいませ。勇者御一行サマ」(・v・*)
( ・∀・)「情報が早いね?」
「"最強"を負かしたなんて一大ニュース……同じ天下七将の『レインボー7』が放っておくハズがありませんよね?」(・v・*)
( ^ω^)「何度聞いてもだっせぇ名前だよな」
( ・∀・)「……やはり、レインボー7は戦う気なんです?」
「まさか。勇者サマは先の戦いにて"最強"に勝てども、なお己を高めようとこのバベリング・タワーへ足を運んだのでしょう?」(・v・*)
「であれば大切な"お客様"。大歓迎です」(・v・*)
中学生男子であれば思わず恋が始まってしまう程に自然な営業スマイルを顔面に貼り付け、彼女は勇者達に背を向ける。
「さぁ、入口に案内いたします」(*・v・)
──バベリング・タワー、それは経験値稼ぎ用人工ダンジョンッ!!
RPGのダンジョンを思い浮かべると分かりやすい、同じ実力のモンスターばかりが集まるフロア。階層が上がる毎にモンスターは少しずつ強くなり、そして最終階層には強大なボス・モンスターッ!!
リアルではあり得ない、けれど強くなるにはこれ以上なく適した環境、それを再現したのがバベリング・タワーッ!
"お客様"は挑戦者という形で塔の1階から、モンスターを倒しながら迷宮ダンジョンを攻略して行き、その階層で1番強いと判断されれば、次のフロアへ上がることができる!!各階層には各種冒険者グッズを取り揃えた売店もあるので、手ぶらで安心!!
着実に実力を身に着け、見事600階のボス・モンスターを倒した挑戦者には、豪華賞品をプレゼントッ!!──
「1dayパスは10,000ゴールド」(・v・*)
「Weeklyパスは50,000ゴールド」(・v・*)
「Monthlyパスは超得150,000!!」(・v・*)
「1ヶ月間みっちり修行はいかが?」(・v・*)
(*゜、゜)「パーティ割引とかってあります?」
「団体割引は25名からとなっております」(・v・*)
(*゜、゜)「誰がそんな大人数引き連れて修行すんのよ」
「傭兵業者や騎士団など需要はありまして」(・v・*)
('A`)「ちょいと待て。階層毎に1番強いって、どう判断するんだ?」
('A`)「各階層に中ボスが居るのか?」
「いいえ。この塔には『ステータス数値化』の魔法がかけられてまして、挑戦者とモンスターのステータスは全てスタッフが把握しています」(・v・*)
( ・∀・)「なるほど。数値化された挑戦者のステータスが、その階に居るモンスターより強くなれば、上階に行けるってわけですね」
「ご明察。詳細は企業秘密ですが」(・v・*)
('A`)(なるほど、こうやって冒険者の個人情報を集めてるってわけだ)
( ^ω^)「それより、豪華賞品って何が貰えんの?」
「通常は高級アイテムセットや系列ホテル宿泊券ですけれど……」(・v・*)
「勇者サマには特別ッ!"魔石"詰め合わせプレゼント!」(・v・*)
(;・∀・)「えっ……?」
(*;゜、゜)「い、いいの……それ?」
「はい!」(・v・*)
('A`)「随分と余裕しゃくしゃくじゃねぇか『レインボー7』」
('A`)「勇者が強くなっても良いっていうのか?」
「いくら勇者サマが強くなったところで、魔王様には敵いませんもの」(・v・*)
('A`)「……言うじゃねぇか」
「事実ですもの。魔王様のステータス、知ってます?」(・v・*)
「『測定不能』なんですよ……フフフ。なによ『測定不能』って」(・v・*)
( ^ω^)「何が『測定不能』。ならば勇者の成長性は『未知数』だッ!!」
('A`)「よく言ったッ!魔王がどれだけ強いか知らんが、こういう言葉もある。『止まない雨はない、壊せない壁はない』!!」
('A`)「行くぞ勇者ッ!時間が惜しいッ!!」
( ・∀・)「……うん」
(*・v・)「待ってくださいませ!!」
('A`)「なんだ。まだ何か話があるのか?」
(*・v・)「チケット」
券売機を指さす彼女の顔は、そのスマイルこそ変わらずとも深い影が落ちていた。
──こうして、勇者の壮絶な修行が始まったッ!!
【1階】
( ^ω^)「よしッ!まずは迷宮マラソンッ!」
( ^ω^)「迷宮内をダッシュで走りながら、出てくるモンスターを倒せ!俺達筋肉は見守ってるから!!」
( ・∀・)「ダッシュに何の意味が……?」
( ^ω^)「なんか修行っぽいだろ」
( ・∀・)「ぽさで修行させるな」
【3階】
('A`)「もっと腰入れろ腰ぃッ!!」
( ^ω^)「身体の軸をぶれさせるな!!」
( ・∀・)「はいッ!」
( ^ω^)「返事は『サー』だッ!!」
( ・∀・)「押忍ッ!」
【10階】
「ゴブキシャァァ!!」(ФДФ#)
(;・∀・)「ぐあああああッ!!」
(;^ω^)「勇者がゴブリンにやられたぁっ!!」
('A`;)「蘇生薬的なの買ってこい!!」
(゜、゜*)「えー……ここの売店、割高なんだけど」
( ^ω^)「しょうがないだろレジャー施設だし。観光地価格だ観光地価格」
('A`)「持ち込み不可なのが、やってるよな」
「……ダイジョウブカ?」(ФДФ;)
(; ∀ )「……ハヤク、タスケテ……」
【15階】
( ・∀・)「あ、何か雰囲気が違う。迷宮なのに木が茂ってて、薄暗くも所々に木漏れ日が差し込んでいる。敵の気配も無く、落ち着いたBGMが流れているフロアだ」
('A`)「休憩エリアっぽいな。こういうフロアって特別なアイテムとかイベントがあってワクワクするよな」
( ^ω^)「隠し通路とか、塔の外に出られたりすると胸が熱くなるよな」
( ・∀・)「わかる~~~」('A`)
(゜、゜*)(……ちょっと分かるのが悔しいわね)
【16階】
( ・∀・)「……なんも無かったね」
(゜、゜*)「元気だして」
('A`)「そういう事もあるさ」
( ^ω^)「たまにあるからこそ、隠し通路を見つけた時が嬉しいんじゃないか」
【19階】
「ゴブキシャァァ!!」(ФДФ#)
(;・∀・)「ぐあああああッ!!」
(;^ω^)「勇者がまたゴブリンにやられたぁっ!!」
(゜、゜*)「ちょっともう、何度目?」
('A`)「この階に来てから3度目だな」
(゜、゜*)「こんなんじゃお金がいくらあっても足りないわよ」
( ^ω^)「足りなくなったら俺達が戦って稼ぐからヨシ!!」
※バベリング・タワーではモンスターが落としたゴールドは自分のものにできるぞ!(タワー内売店でのみ使用可。退場時に没収)
('A`)「そうだ勇者!思いっきり負けていいからな!!」
「何かヤバいくらい痙攣してるゴブ」(ФДФ;)
(; ∀ )「……ウン、ワカッタカラ、ハヤク……」
【25階】
( ^ω^)「そういや魔女は修行しないの?」
(゜、゜*)「うん。どうせ後方支援担当だし」
('A`)「俺等が来る前は、勇者にバフ魔法かけて戦ってたんだっけ?」
(゜、゜*)「そうそう。バフかけてようやく駆け出し冒険者レベル。バフ魔法も、私の魔力も切れたのが、あの日の廃鉱山ってわけ」
( ^ω^)「バフ魔法以外にはバリアと回復魔法だけ?」
(゜、゜*)「いや、一つだけあるわよ。とっておき」
('A`)「え~?なに~?きになる~」
( ^ω^)「ふふ、なーいしょ」
(゜、゜*)「なんでアンタが答えんのよ」
「……オ前モ大変ゴブ」(ФДФ;)
(; ∀ )「……グギギ……」
【30階】
(; ∀ )「……ア……」
「ゴブキシャァァ!!」(ФДФ#)
「……え?」(ФДФ;)
('A`)「戦闘開始10秒。恐ろしく早い敗北。ゴブリンさんも思わずたじろいでおる」
(゜、゜*)「どういう負け方?」
( ^ω^)「麦は踏まれて強くなるんじゃ。踏まれて踏まれて強くなるんじゃ」
──バベリングタワー1日目。敗北を重ねながらも勇者、30階へ到達ッ!!(駆け出し冒険者レベル)
( _ゝ)「首尾はどうだ?ヴァイオレット」
(*・v・)「勇者は大したこと無いわね。ただのザコよ」
( _ゝ)「どういうことだ?彼は武曲を倒したのだろう?」
(;・v・)「いいえ勇者じゃないわ。武曲を倒したのは……勇者の配下の筋肉ダルマ2人」
( _ゝ)「……実力は測ったか?」
(;・v・)「ええ。すぐに全四天王・全天下七将に連絡して。勇者の配下、その実力は……『測定不能』ッ!!」