第11話 ゴブリン剣術正統後継者出現ッ!!バベリング・タワー完全攻略ダイジェスト!
【登場人物紹介】
( ^ω^)【筋肉その1】:旅館に着いたら、まず茶菓子で一服する。
('A`)【筋肉その2】:旅館に着いたら、真っ先に大浴場へ向かう。
(゜、゜*)【魔女】:旅館に着いたら、とりあえずサービス一覧の冊子を眺める。
( ・∀・)【勇者】:旅館に着いたら、なんとなく外の景色を眺める。
バベリング・タワー地上640階の豪華スイートルームに軟禁されて3日目……
( ^ω^)「……」
('A`)「瞑想か?」
( ^ω^)「世界は広いなぁ……こんな景色を見たのは生まれて初めてだ」
全面ガラス張りの窓からの眺望を瞳に映し、筋肉は感嘆の言葉を漏らした。宇宙に近いせいか黒のにじむ晴空。丸みを帯びた水平線。眼下に望む山や原を、絵巻物のように雲が隠している。
('A`)「あぁ、ネオヤマトでも見たことはないな。見ろ、海がてらてらと白く光っている」
( ^ω^)「この世界と俺らを隔てるのは何だろうか?」
('A`)「"禅"か?」
('A`)「……"ガラス壁"。厚みは1mくらいかな?」
( ^ω^)「その程度、一撃で砕けるな?」
('A`)「うむ」
( ^ω^)「ならば、それは隔てていると言えるだろうか」
( ^ω^)「……"勇者"」
('A`)「その気になれば、勇者を担ぎ逃げることも容易いだろう」
('A`)「俺等が軟禁された初日、武曲とサンシャイン・レッドの"気"の衝突を感じた。そして、その衝突の後、武曲の気は遠くへ消えていった。何があったのかは分からないが、戦闘があったのは確か。恐らく、今のレインボー7は疲弊している」
( ^ω^)「うむ。つまり俺らと世界の間を阻むものは、この世界には無いのだ」
( ^ω^)「だが、俺はそうする気は起きない。お前もだろう?」
('A`)「まぁな」
( ^ω^)「隔てているのは、"これ"だ」
( ^ω^)「"これ"を、なんと表すのが良いか……"それ"を悩んでいるのだ」
('A`)「俺らが勝手な行動をすれば、勇者が殺される"契約"だ。実際には殺させやしないがな……そういうことになっている」
( ^ω^)「破ったところで、何ら問題など無いものを律儀に守るというのは、なんともむず痒いものだな」
('A`)「……圧倒的な実力差のある関係において、強い者が弱い者との契約を守るメリットは、実際のところ無い」
('A`)「だが、俺らは守る。"これ"が俺らと世界とを隔てている」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「"これ"とか"それ"とかよく分かんないんだけど」
('A`)「うっせぇな、お前が使い始めたんだろ」
( ^ω^)「いや、俺のそれは代名詞の正しい使い方だろ」
( ^ω^)「……まぁ、何はともあれ勇者がバベリング・タワーを攻略し、600階に到達すれば、契約的にも何ら問題はないということだな」
('A`)「それはそう」
( ^ω^)「俺は信じているぞ!勇者は必ず、今にでもバベリング・タワーを攻略してくれると!」
('A`)「なんかお姫様みてぇなこと言ってんなこのスモウレスラー」
( ´_ゝ`)「おい。君ら、勇者が600階に到達したって」
( ^ω^)「え?早くない?」
('A`)「信じてねぇじゃねぇか」
( ´_ゝ`)「いやぁ、なんかトレーナーがついたらしくて」
('A`)「……トレーナー?」
イエローに連れられて、筋肉がバベリング・タワー600階に行くと、そこには別れた頃のままの勇者の姿が。
( ・∀・)「あっ!君たち、無事で良かった!!」
(゜、゜*)「久しぶりの筋肉ね。体感で1ヶ月ぶりくらいな気がするわ」
( ^ω^)「おお、勇者と魔女。こんなにも早くタワーを攻略するなんてな……驚いたぞ」
( ^ω^)「成長速度のアクセルぶっ壊れてんの?」
( ・∀・)「貶し成分入ってるよねそれ」
('A`)「それで、勇者の修行を手伝ったトレーナーってのは?」
( ФハФ)「ワシじゃよ」
筋肉達の前に現れたのは、緑色の肌をした小柄な老人……いや、人ではない。彼はバベリング・タワーで幾度となく退治してきたモンスター。
(;^ω^)「む……ゴブリンだと?」
('A`)「その腰に差しているのは……カタナか?」
( ФハФ)「いかにも。ワシはゴブリン剣術・ゴブ林風流の正統後継者」
( ФハФ)「憎きゴブリン王を倒した益荒男とはお主らか」
('A`)「ゴブリン王……あぁ、この世界に来た初日に倒した奴か」
( ФハФ)「奴とは因縁があっての。殺ってくれて礼を言うわい」
( ^ω^)「礼を言われるほどのことではない。ムカついたから殺しただけのこと」
( ・∀・)「蛮族の倫理」
( ^ω^)「それで、どういう経緯でゴブリンが勇者と……?」
(゜、゜*)「それは私から説明するわ」
(゜、゜*)「言葉で説明するのは面倒くさいからダイジェスト魔法で説明するわ」
( ^ω^)「ダイジェ……ダイジェスト魔法?」
~ダイジェスト魔法 発動~
【第1話 出会い】
(;・∀・)「はぁ……はぁ……つらい、吐く、吐くってこれ……」
(゜、゜*)「頑張って勇者。あと300階よ」
(;・∀・)「心を折りに来てる……?」
( ФハФ)
(゜、゜*)「あ!ゴブリンよ!いけっ、勇者!」
(;・∀・)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
「ん?」(ФハФ )
(;・∀・)「勇者スラッシュッ!!」
「白刃取り!!」(ФハФ´)
(;・∀・)「なにっ!!」
「なんじゃその、お粗末な剣筋は!!」(ФハФ´)
「剣というのは、こう使うのだ!!」(ФハФ´)
「ゴブ林風流『岩鉄斬り』!!」(ФハФ´)
(゜、゜*)「あぁっまた勇者がやられるッ!!」
(;・∀・)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
(゜、゜*)「あ、すっ転びながら避けた」
【第2話 継承】
(ФハФ )「……!お主、攻撃は点でダメだが、回避はなかなかじゃのう」
(ФハФ )「自らの雑魚加減、引き際を理解しとる」
( ・∀・)「上げて落とすとは口撃がお上手で」
(ФハФ )「決めた!お主、ワシのゴブ林風流剣術の跡を継げぇッ!!」
( ・∀・)「断るッ!!!」
(ФハФ )「そのお断り、お断り!」
( ・∀・)「言語コミュニケーションの断絶を感じる……っ!!」
(゜、゜*)「いいじゃない。この際、このひと?に剣術の稽古をつけてもらえば」
(・∀・ )「君もついに頭がイカれてきたのかい?」
(゜、゜*)「アナタのメイン武器は剣なのに、あの筋肉達からじゃあ、剣術は教えてもらえないでしょう?」
(・∀・ )「それは一理あるけど……けどっ!」
(ФハФ )「今ならゴブ林風流剣術奥義、全部セットで授けちゃうぞ!!これで君も明日から正統後継者!!」
( ・∀・)「継ぎたくねぇ……なんでさっき会ったばっかりの爺の跡を継がなきゃならないんだ。実家だって継ぎたくないのに」
【第3話 極意】
(ФハФ )「ゴブ林風流の極意は"ヒット・アンド・アウェイ"!」
(ФハФ )「"林の如く徐かに"敵に近づき、"ゴブリンの如く"刺し、"風の如く疾く"戦線離脱ッ!!」
( ・∀・)「なんか普通のこと言ってんなこのゴブリン」
(゜、゜*)「"ゴブリンの如く"ってどういう様よ」
(ФハФ )「お主に欠けているのは、攻撃と回避の速度!!そして、敵に気付かれずに行動する"瞬歩"の技術!!あとパワーと洞察力、柔軟!!」
(ФハФ )「独身男性の栄養バランスくらい欠けている!!」
( ・∀・)「なんだろう……何がどれだけ欠けているかは分からないけど、絶対的に欠けていることは心で理解できる」
(;・∀・)「この不足を補うのに、どんな修行が必要なんですか……?」
(ФハФ )「基本はスクワット、ジャンプ運動、ラダートレーニング。基礎体力づくりにランニングやシャトルラン。上半身を鍛える筋トレ。修行前後にストレッチだな」
( ・∀・)「雨の日の運動部……?」
【第4話 皆伝】
( ・∀・)「ゴブ林風流……『岩鉄斬り』!!」
「ゴブゥゥゥッ!!」(Ф■Ф;)
( ・∀・)「……ふぅ」
( ФハФ)「見事。なかなか飲み込みが早いな。頭スポンジか?」
( ・∀・)「高純度の罵倒がきたな」
( ФハФ)「もはや教えられるものは何もない……免許皆伝じゃ」
( ・∀・)「え、少な……」
(゜、゜*)「まぁヒット・アンド・アウェイってコマンドRPGじゃあ必須技能だし」
( ・∀・)「そうなの……?」
(゜、゜*)「でも、これで長かった修行も終りね」
( ・∀・)「え……?」
<おめでとうございます♪バベリング・タワー攻略成功です!!
( ・∀・)「もう、600階なの?」
( ・∀・)「……」
( ・∀・)「早くない?途中から密度薄くなかった?」
(゜、゜*)「まぁ、なにかに夢中になっている間は、時は早く過ぎるものよ」
( ФハФ)「お主は口ではなんやかんやと言っておったが、ゴブ林風流の修行に夢中だったということじゃな」
( ・∀・)「なんだろうこの気持ち……人権侵害?」
~ダイジェスト魔法 終了~
(゜、゜*)「以上よ。分かった?」
( ^ω^)「ちょっとまだ消化しきれてないけど……まぁいいや」
( ´_ゝ`)「それじゃ、これ。達成報酬の魔石詰め合わせな」
イエローは魔石がゴロゴロ入った革袋を勇者に手渡すと、「あとこれおまけ」と言って、ポケットから玉虫色に光る玉を取り出した。
('A`)「なんだこれは。これも魔石か?」
( ´_ゝ`)「いや、『四宝』の一つ。レインボー7が授かった"虹の玉"だ」
( ・∀・)「え?」
(゜、゜*)「は?」
( ^ω^)「タイミングおかしいだろ。何?お前レインボー7退職すんの?」
('A`)「脳が胃もたれを起こしている」
( ´_ゝ`)【イエロー】:旅館に着いたら、なにはさておき夕食と朝食の時間を控えておく。
( ФハФ)【正統後継者】:旅館に着いたら、なんとはなしに浴衣に着替える。