第1話 次元を超えてやってきた!筋肉モリモリマッチョメン!
第1話なので地の文が多いです。
(;・∀・)「っく…このゴブリン達、強いぞ!」
(゜、゜;)「きっと"魔石"の影響……ゴブリン王が近いんだわ!」
人里離れた廃鉱山。幼さ残る若い男女をぐるりと囲む、石斧装備のゴブリンが二十余。数で圧倒しているゴブリンが、それでもじりじりと攻撃の隙を窺っているのは、存外知能が高いのか、案外それとも男女が手練れか。
いや違う。それは魔法のバリアと言ったところか、三角帽子に黒いローブといかにもな魔女が持つ杖を中心に、二人の周りを薄ら空色の膜が張っている。なんでもない、ただゴブリンは攻めあぐねているだけだった。
(;・∀・)(だけど"魔女"のバリアはもう限界だ。どうすればいい?)
レザーアーマーに身を包んだ青年は何度も何度も息を吐く。呼吸を整えている訳でもない、浅い息。もう限界のようだ。ゴブリンと遭遇して戦いが始まってから、まだ3分だって経っていない。けれど持久走終盤の鉄の味が口いっぱいに広がっていた。
「ゴブキシャァァ!!」(ФДФ#)
ついにしびれを切らしたのかゴブリン達が、けたたましい叫び声を合図に一斉に襲いかかるッ!!
バリアへの対抗策は、なんてことない数の暴力ッ!!だが魔女の力が弱っている今、それは現状打破への最適解だったッ!!
「ゴブリンチョップ!!」(ФДФ#)
(゜、゜;)「あぁっバリアが!!」
ガラスをバットで叩き割るように、たやすくバリアを破壊したゴブリン達は、すぐさま標的の青年に向かい地面を蹴り、飛びかかるッ!!
「ゴブオラァァァ!!」(ФДФ#)
( ・∀・)「え?」
(;・∀・)「あッ!」
青年はとっさに防御姿勢を取ろうとするが、反応が遅すぎる。一番槍を仕掛けたゴブリンが軽々と彼の剣を弾き飛ばした。
(゜、゜;)「"勇者"!」
「勝ッタ!!死ネェッ!」(ФДФ#)
(;・∀・)(たすけて神様!)
哀れ、勇者と呼ばれた青年は目を瞑って神頼み。しかしそれも仕方なしか。眼の前には石斧を振りかざすゴブリン。対して自分は素手。どう考えても詰んでいる。
( ・∀・)(……あー、こんなことなら、実家に帰っとくべきだったな)
早くも走馬灯のぼんぼりが灯り、懐かしの故郷がぼんやり滲んできた。
その時だッ!!強烈な閃光が、淡い景色をかき消したッ!!それは夢幻ではない、瞼の裏からでも分かる程の現実のフラッシュバックッ!!
(゜、゜;)「きゃッ!!」
「目ガッ目ガァァ!!」(ФДФ;)
(;・∀・)「ゴブリン達が悶えている……一体、何が起き」
( ・∀・)「た……?」
現実を前に"勇者"は目を疑った。よく擦った上で、もう一度、現実を見た。
──そこに居たのは、フンドシ一丁全身黒光りの筋肉モリモリマッチョマン
(;^ω^)「なんじゃあッ!?ここが浄土か!!?」
('A`)「浄土にしちゃ土臭いな。天女の歓待も無い」
──が、二人。
( ・∀・)(どうしてこうなった)
「誰ダ貴様ラァ!ヨクモ目ヲ!」(ФДФ;)
「殺シテヤル!!」(ФДФ;)
('A`)「おいおい、見ろよ。鬼共が熱烈歓迎だ」
(^ω^ )「なんじゃ。すると地獄に来ちまったって訳か?」
('A`)「その通りなら、仏様も厳しすぎじゃねぇか?」
どうやらこの筋肉たちは、なぜ自分がここに居るのか分からない様子。全体的に太くて丸い方の筋肉が、勇者に訊ねた。ゴブリンよりも姿かたちが似ているから、話が通じると思ったのだろう。
(^ω^ )「ちょいと、そこの旅の人。ここは浄土か?地獄か?」
(;・∀・)「い、いや……どちらでも、ないけど」
どちらも聞いたことのない地名だったので、勇者はそう答えた。それよりも勇者は別のことに気を取られていた。
それは目の前の二人の強く、美しい、その肉体。近くで見るとよく分かる、鋼を思わせる……いや、実際にそれ以上の硬さを持つと確信できる程に厚く、輝いているッ!!
そして、それは決して造形美の為に造られた代物ではない。筋肉の上にはしっかりと脂肪が乗っており、それが"戦う為の筋肉"だと主張しているッ!!
(;・∀・)(この二人、強いッ!!)
('A`)「……あぁ、分かった!こりゃあ"異世界転生"とかいう奴じゃねぇか?」
('A`)「いや、この場合は"転移"か?」
( ^ω^)「なんじゃそりゃ?」
('A`)「知らねぇのか?今の流行よ。死んだ時ぁ、浄土か地獄か異世界かって話だ」
( ^ω^)「なるほどぉ~~、お前はやっぱり賢いなぁ」
胸をピクピクさせながら呑気に会話する筋肉たち。だが、そんな悠長なことが許されるはずがなかった。既に閃光による目眩からの回復した一匹のゴブリンが、標的を勇者から筋肉へ変更し、背後から飛びかかったッ!!
「ゴブキシャァァ!!」(ФДФ#)
(;・∀・)「あ、あぶないッ!!」
( ^ω^)「ッ!!」
今度は素早く反応できた勇者。筋肉その1の背中を庇うように、大手を広げ、自らを盾にしたッ!!
「バカメッ!踏ンズケテヤル!」(ФДФ#)
(;∀)「ムグッ」
「死ネ!ゴブリンチョップッ!!」(ФДФ#)
勇者の奮迅むなしく、筋肉その1に石斧が振り下ろされる。だが、ゴブリンは気づいていなかった。
今まさに自分が攻撃したのは岩をも砕く玉鋼ッ!!石斧ごときの得物が適う相手では無いとッ!!
おおよそ肉体を殴る音とは思えない音、廃鉱山に久方ぶりに響いた金属音ッ!!
「手ガァァッ!!」(ФДФ;)
( ^ω^)「ん~?」
手のしびれにもんどり打つゴブリンとは対照的に、筋肉その1はまるで虫にさされたかのように、黒く光るスキンヘッドの頭頂部をポリポリ掻いている。
だが、たとえ効いていなくとも、それが自分の命を狙った一撃であることは変わらない。眉をひそめた彼は、地面をのたうち回るゴブリンの頭をむんずと掴むと、もう一人の筋肉を向いた。
(^ω^ )「獄卒ならば殺しはまずいが……野良鬼ならば話は別だな?」
('A`)「ああ」
「グ……ガ……」(ФДФ;)
ならばよし。
「ヒ……ヒゴブッ!!」(Ф■Ф;)
彼がそう言うと、ゴブリンの頭が弾けた。
( ^ω^)「ありがとう、旅のお方。助かった」
(;・∀・)「いえ、礼には及びません。何も出来ませんでしたし」
( ^ω^)「んなこたねぇよ」
('A`)「それよか一つ頼みたいことがある。そっちの嬢ちゃん、いいか?」
何をどうやり過ごそうとしていたのか、死んだふりをしていた魔女は渋々立ち上がるとローブの汚れを払った。
(゜、゜;)「な、何よ?」
('A`)「俺達、ここ何日もロクに食べて無くてよぉ」
('A`)「この鬼共を片付けとくから、その間に何か温かい食べ物、用意しといてくれねぇか?」
(;・∀・)「……」(゜、゜;)
二人は目を合わせる。
(;・∀・)「時間、足りる?」(゜、゜;)
それは皮肉でもなんでも無い。間近で彼らの強さを見たからこその疑問。握力でゴブリンの頭蓋を粉砕する男と、それと同等の筋肉を持つだろう男。そんな化物に、ただの魔物が、束になったとて勝てる訳が無い、道理がない。
('A`)「まぁ、だがコイツらのボスは少し硬そうだしな」
彼はそう言うとゴブリン達の奥にある坑道を指し示した。恐らくはゴブリン王が放つ気を、その筋肉で感じ取ったのだろう。
(;・∀・)「流石だね、分かるのか?」
( ^ω^)「少しは手応えがあってくれるとよいんだがね」
(゜、゜;)「……携帯用スープストックで良いかしら?」
(*^ω^)「十分ッ!!」
(*'A`)「久しぶりの飯だ!ヒャッハァッ!!」
魔女の言葉で筋肉達は喜びに震え、踊るように跳ねた。その勢いのまま拳で腹を突き刺し、手刀で首を刎ねるッ!!
しかしゴブリンとて、ただ黙って蹂躙されようなどとは微塵も思っていないッ!!
数で攻めて攻めて攻めまくる、それがゴブリンッ!!それこそゴブリンッ!!頑張れゴブリンッ!!
「ゴブリンナメンナァァァ!!」(ФДФ#)
「ミナドモカカレェェッ!!」(ФДФ#)
「テメェラナンカ怖クネェェッ!!」(ФДФ;)
(;・∀・)「……」(゜、゜;)
二人は眼の前で起きている凄惨な光景から目を背けるように、顔を合わせる。
(゜、゜;)「今のうちに逃げとく?」
(;・∀・)「逃げられると思う?」
(゜、゜;)「……」
魔女は何も言わず、しぶしぶ湯を沸かし始めた。