プロローグ
俺は佐藤賢也。巣属間高校の一年生だ。そして俺には大親友だった友人がいた。名前は田中瀬雅。髪は金髪、耳にはピアスを何個もつけていてお世辞にも姿は品行方正とは言い難い奴だが、根はいいやつで、家が近く幼馴染だった俺たちは自然と付き合うようになっていた。見た目に似合わず、人助けが大好きで街で急に走り出したかと思えば、その先には必ず困っている人がいるのだ。その結果何度も面倒事に巻き込まれ、よく俺も被害を被っていた。毎回面倒事に巻き込むなと俺が小突いて悪い悪いと反省してなさそうに手を合わせる彼。表面では責めていても、内心では俺は彼を尊敬していた。こんなやつが友人で誇らしいと。俺はこいつが何かいいことをするたびに、自分がやった訳ではないのによく他の友達に自慢げに話していたのだ。俺の友達いい人すぎるだろって。
そしてどこまでもまっすぐで、悩みなんかなさそうにいつもヘラヘラ笑っている。彼の側はいつも明るくて俺は彼の側がこの世界で一番居心地がいい場所だった。
そんないつも悩みなんかなさそうに笑って、俺の居場所を作ってくれていた奴の葬式に今俺はいる。チーンとおりんがなるこの場所はあいつがいるとは思えないほど静かで、俺は呆然としていた。
自殺だったそうだ。
どうして、どうして……昨日まであんなに笑ってただろう、昨日もお人好し発動して人いっぱい助けて、何も変わらない一日だったろう。
訃報の電話が来た瞬間、あまりのショックで泣けなかった。
このままでは俺の居場所がなくなってしまう、なぁ神様俺が息をできる場所を取らないでくれ……返してくれよ、俺の親友を……。
そう願っても葬式は淡々と進んでいく。ついに火葬される時間になり、あいつが寝ている棺が火葬場の入り口に吸い込まれていく。
お願いだ、待ってくれ。まだ生きているかもしれないじゃないか。なんで誰も止めないんだ。誰か言ってくれよ、こいつ生きてないかって。なぁ頼む……頼むよ……。
そんな願いも虚しく、火葬場のドアが重い音を立てて閉まったのだった。
葬式後、俺は真っ直ぐに海に向かっていった。あいつがいない世界なんて、俺はきっと生きていけない。
大げさだって言う人もいるかもしれないが、足に躊躇いはなかった。それだけ、あいつは俺の中で大きな存在だったんだろう。海に着いて、堤防に登る。帰り道、あいつと度胸試しだと言いながら笑って渡っていたのを覚えている。ここで死ねるなら、いいだろう。懐かしんでここに来ているかもしれないあいつに会えるかも。
「もう一度会いたいな……」
俺がそう呟いて堤防に乗った体の重心を傾けようとしたその時だった。
「じゃあ、迎えに行こう」
声に驚いて傾けかけていた体を戻し、後ろを振り向く。
そこには……
「待っているなんて君は深窓のお姫様??求めるなら迎えに行くのが筋ってもんだろう??」
そう言ってきたのは、紛れもない美しい魔女だった。
これが俺たちの出会いである。