「俺、プロ雀士になる!」
「俺はプロ雀士になる!」
夜ご飯を食べている最中に突然立ち上がって叫んだ今年14歳になったばかりのワンパク少年のヒロト。そんなヒロトの目の前にいる初老の男は目を丸くして箸を止めた。
「ヒロト突然どうしたんだ」
初老の男の疑問は最もだろう。何の脈絡も無しに突然立ち上がって叫ばれた上に叫んだ内容がプロ雀士になるだったのだから。
「シロウ、俺決めたんだ。プロ雀士になるって」
「辞めとけ」
「止めないでくれシロウ。男の本気なんだ」
「止めてない。辞めろといってるんだ。」
「シロウが言いたいのは分かる。俺がいなくなったら寂しいんだろ。俺プロになって有名になったら絶対シロウを迎えに来るから安心してくれ。親のいない俺をちゃんと育ててくれた恩は忘れてない!」
「いや、忘れてくれてかまわないがとりあえず 【 無理だから 】 辞めとけと言ってるんだ。
「無理じゃない!何が無理なの!?」
「だって・・・」
シロウと呼ばれた初老の男は言葉を濁そうか悩んだ。何故ならその理由はおそらくクリアできない理由だからだ。西暦2357年現在の地球ではプロ雀士志望の人口が軽く10億人は超えるとされ、各国でプロ雀士になれる人数に制限があり日本の人口1億5千万人に対してプロ雀士になれるのは3200名。地球政府への出資金の額が多い日本は各国に割り当てられているプロ上限人数が多い方だが日本のプロ雀士3200名これは日本生まれの日本人だけが含まれる数字ではない。出身国でプロ雀士になるのが難しい人間が他の国に渡ってからプロ雀士になり世界競技に出場するのはよくある話で実際日本のプロ雀士3200名に対し元外国籍だったプロ雀士は1872名と半数を超えている。そしてそんな狭き門は当然沢山の大会や検定を超えていった強者しかなれないが、全てに参加費や移動費がかかる。ようは
「だって・・・、金がないから」
そう、金が必要なのである。プロ雀士になるまでに最低でも1000万円がかかるとされるがあくまで最低額なだけで実際はプロ雀士になるまでに平均3000万円ほど必要とされている。大会で上位入賞していれば次の大会参加費移動費滞在費が全て無料になったりもするが小さくても数百名、大きければ1万人規模の大会参加者を超え続けられるかと言えば難しいと言わざる得ない。
「金は大丈夫!アマで活躍して自力で稼ぐから!」
「それも無理だ」
「無理じゃない!アマで稼いでプロ目指す奴だっているから!」
「そうだなそういう奴もいるが・・・」
シロウはまた言葉を濁すか悩んだ。ヒロトの言った通り確かにアマで活躍し稼いでプロ雀士を目指す者がいるのは確かだが、アマで稼いでる雀士は色んな場所に呼ばれ引っ張りだこのアイドル的な存在であり彼らは総じて見た目か口が人より優れている。シロウはヒロトを上から下まで見てから溜息をついた。
「お前はどっちも足りてない・・・」
「突然何、どうしたのシロウ。何が足りないのおおおお」
シロウは金がない事は正直に言えたが、ヒロトがイケメンでもないし口が上手くもないことを正直に言えなかった。だから言葉を濁したがこれがいけなかった。正直に言うべきだったのである。ヒロトはシロウの言った足りないがちょっと足りない程度で頑張ればなんとかなると思い込み。なんと次の日の早朝書置きを残して本土行きの船に乗り込み家出したのである。