8/10
ドライブ
家を燃やした後で、それからなるべく遠くへ車を当てもなく走らせた。小高い丘の上に誰にも気づかれないようにひっそりと佇んでいるような家だったから、きっと誰に家が燃えていることが気づかれることなんてないだろうと思う。だからこそ僕が家を燃やしたことで、僕の今までの人生のあらゆることに、ひとまずピリオドを打てたような気がして、むしろ爽やかな気分であった。もちろん、その感情は哀しみではあるけれど、今までに感じたことのないような清々しい喪失感であった。そして、これからの新しい人生がはじまるという淡い期待なんてものはこれっぽちもなかった。雲ひとつないような晴天が、どこか懐かしく親しみを感じさせていた。
あ