3/10
待人
札幌駅の集合場所としてよく使われる「妙夢」という白いオブジェがある。白い大理石で作られた大きなオブジェで、真ん中には人が簡単に潜って通れるような大きな穴が空いている。地元の人からは「穴」という名で通じている。僕はその傍の待人を観察していた。ある者はくたびれた様子で自分の手のひらをまじまじと見つめ、ある者は待つことに耐えかねたように眉間に皺よ寄せて瞑想をしている。彼らが、誰を待ち、どのくらいの時間、「待つ」という行為を続けているのかは知る余地もないが、待人は観察の対象として興味深い。言えることは、「待つ」という人間の営みは、ある面では哲学的な思索であり、あるいは祈りである。
3時間待ったが、僕の待人はついに現れなかった。
「待つ側も待たれる側も同様に辛い」
そうして僕は新しい教訓をまた一つ得た。
物語は進みません。