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19  作者: moppero
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風の便り

 僕が幼く、今日という一日を忙殺することで辛うじて繋ぎ止め、人生についての不安を全くといって持たなかった頃、春の小川を吹き抜けてきた風から、ある種のアドヴァイスのようなものを受け取った。

それは次のようなものだ。

「人がこの世の中に残せるものは、惜別の前の微笑だけである。」

「それはつまり、人は微笑することが許されているということである。」

僕はこのアドヴァイスに概ね賛同する。なぜなら、これは風の便りであると同時に、短い僕の人生で得た、ささやかで、確からしい教訓であるからだ。

教訓というのは、とても大切なものだ。それは、ときに僕を励まし、ときに僕を奮い立たせる。


 もう風の囁きは、僕には聞き取れることができなくなってしまったけれど、別に今は過ぎ去ってしまった過去を想い悲しみ、懐かしんだりするわけではない。ただ、春の風が目を閉じた僕の頬を撫でるとき、なぜだか泣きたくなる。それは風が思い出させるからだ。


 遠いどこかに大切なものを忘れてきてしまった気がする。岬のあの白い郵便受けがある灯台はどこだったか。

なぜ過去は、僕を責め立て、あらがうことのできない強い流れで押し流そうとするのだろう。


 人がこの世に残せるものは、惜別の前の微笑だけだ。





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