97話 少年少女達よ、デパートに行こう
翌日、直美は大学に向かっていつもの講義を受ける。
「例えば、見た目が品の良さそうな人が良いことを見ても普通だなと印象をうけるが、その一方で見た目が明らかにチンピラや不良に見える人がお年寄りに良くしたり迷子の子供を助けた光景を見ると、とても良い印象を受ける。このように2つ以上の物事を比べた時に差があると実際の差より大きな差として感じられるという現象を心理学では『コントラスト効果』または『対比効果』と言います」
先生の説明が段々とお経の様に聞こえて眠気が襲ってくる。
隣の席に座っている友人の佐藤梓がシャーペンでつんつんとつついてくる。
「直美、授業が終わったらさ、カラオケでも行かない?」
「う~ん。今日はちょっと眠いからパス」
「それ今だけだって、後でタピオカでも飲んで気分転換でもしようよ」
「ねえ知ってる?タピオカミルクティーの1杯の糖質は角砂糖約24個分に相当するらしいわよ」
「……あんた本当に嫌な性格しているよね」
「ごめん、カラオケはパスだけどデパートとか行かない?私欲しいマニキュアとかショッピング巡りとかしたいのよ」
講義の中、ひそひそ話で放課後の予定を決める。そして講義を受けているフリをして時間が過ぎるのを待つ二人だった。
そして40分後、講義を終えると一気に元気が湧き上がって梓と共にデパートに向かう。マニキュア以外に欲しい物があるという訳ではないけど、ただただいろんな商品を見たいというだけだ。
最近テレビでやっていたのは料理で使える便利グッズというのを見て自分は料理をしないけど、母親が喜ぶのであれば買ってもいいかなと思っていた。
梓と様々なコーナーを見て回り、面白そうな物を見ては盛り上がって楽しむ。楽しんでいる間に喉が渇いて近くのカフェでタピオカミルクティーとフルーツミルクフラッペを頼んで少し雑談をしながら休憩する。
そして休憩するつもりだったが、雑談が盛り上がり過ぎていつの間にか夜になって帰ろうかとなる。
「じゃあね直美、また明日」
「バイバイ、また明日」
梓と別れて家に帰る。今日の晩御飯は何だろうと電車の中で考える。それと最近は楽しみと癒しが出来て機嫌が良い。何故なら……。
「あ、直美お姉ちゃんお帰り!」
「お帰りなさい!」
ドアを開けるとドタドタと走りながら迎えにくるこの可愛い子達を見ると心が癒される。一人っ子の私にとっては姉妹とかいないからわからないけど、この子達は可愛い妹と弟と思って接している。
「ただいま、ミーアちゃん、ラーシャちゃん、ラルマ君」
それにこの子達が来てから私達の家庭は明るくなった気がするし家族みんなの笑顔が増えていると思っている。今ではすっかりこの子達も私達の家族なのだ。
「あーお腹すいたー。今日のご飯は何かな~」
「今日はグラタンとチキンソテーとミネストローネとサラダ!!」
「おーいいね!じゃあみんなで食べようか」
「「「うん!」」」
三人と一緒に席に座り家族みんなで「いただきます」を言って食べる。
食事を楽しんでいる中、お父さんからみんなに伝えたい事があると言う。
「明後日の日曜日、俺の友人の誕生日パーティーがあるんだけど友人が言うには家族全員で来て欲しいと言っていてな。そこで家族で参加したいと思っているんだが予定があるか?」
「私はないわよ」
「私もないよー」
「ねぇねぇ純也さん。私達もそのパーティー参加してもいいの?」
ミーアは尋ねるとお父さんは「もちろんだとも」と答えた。そうなると誕生日パーティーに着る服を考える必要があるとお母さんは言い。明日にでも探しに行こうと家族で出かけることになった。
そして翌日の午後、ミーアとラーシャに似合いそうな子供用のドレスを探す為にデパートに向かう。
ネットで調べると最近のデパートはそういった物も売っているらしい。
早速、そのドレスのコーナーに向かいミーアとラーシャに似合いそうなドレスを探す。
「ミーアちゃんはピンクのドレスとか似合いそうね。ラーシャちゃんは今着ている服がドレスっぽいけど黒いからもっと明るいドレスでも良いと思うわ」
お母さんは奮闘しながら真剣に二人のドレスを選ぶ。ミーアにはお腹に可愛いリボンが付いてスカートが波打たせたフリルのピンクのドレス。ラーシャはあまり明るいドレスは好まないと言っていたので彼女にはスカートの真ん中に黒色の縦線模様がある黄色と黒のドレスを選んだ。
そしてラルマはというとお父さんが選んだのだが、子供用のスーツがあったのでそれにしたと言う。
お母さんと私はもっとおしゃれな服にしてもいいじゃないかと言うとラルマ本人はこれがかっこいいからこれがいいと答えた。
ミーアとラーシャはラルマにドレス姿を見せて似合っているかを尋ねる。ラルマは照れながら「二人共似合っているよ」と顔を赤くするところを見て私は思わずスマホを取り出し、カメラで三人の姿をパシャっと写真を撮った。
この三人マジで尊い。
そして夕方、明日のパーティーの服装も買ったことだし晩ご飯はレストランで食事をしようと真由美は提案する。ミーア達が笑顔で賛成し“GOGO’S”というレストランに向かった。
三人はメニューを見てイスフェシア皇国ではありそうでなかった料理に興味を持つ。
「ビーフシチューハンバーグ?何それ美味しそう!」
「ねぇ、直美姉ちゃん。このおろしハンバーグの“おろし”ってな~に?」
「メニューの写真でハンバーグの上に乗っかっている奴あるでしょ?それは大根をすりおろして出来た薬味みたいなものかな?」
「へ~この雪みたいなのは大根っていうんだ!面白いね!」
三人は悩んだ末に決めたのはイスフェシア皇国にはなかった料理を選んだ。
ラルマはビーフシチューハンバーグ、ビーフシチューとハンバーグは別々の料理としてなら食べたことはあるが、一度で一緒に食べたことはなかったので気になったという。
ミーアはチキンのチーズドリア、前回のレストランで食べたドリアをもう一度食べたいから選んだ。この料理を覚えて是非料理長に作ってもらいたいと思ったからだ。
ラーシャはまぐろのたたき丼にした。この料理はデスニア帝国やイスフェシア皇国には存在しない。
レイブンの話ではまぐろは出雲国でしか食べることが出来ないと言っていたので食べてみたかった。
一応イスフェシア皇国は出雲国の一部と貿易を行っているので出雲国ならではの食材を輸入してもらっている。が、どう料理したらわからないでいるので料理長は猛勉強しているんだと聞いていたので少しでも情報を手に入れて料理長に教えられたらいいなとラーシャは思った。
そして約20分後、それぞれが注文した料理が運ばれてその匂いが空腹を加速させる。
「わ~美味しそう!」
「じゃあみんな揃ったところで……」
「「「いただきます!!」」」
一口食べれば口の中に幸せが広がる、そんな感じになる。この料理のレシピをイスフェシア皇国に持っていきたい。家に帰ったらパソコンで食べた料理について調べようと思いながら美味しく食べる三人であった。




