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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
11章 異世界とちびっこ三人組編
96/150

96話 少年少女達よ、情報整理しよう


 翌日、純也は仕事先に向かい2つの事件について調査をしていた。

 一件目は秋葉原で起きた須藤明楽の事件について、目撃者の情報によると被害者はビルの前に立っていたが次第に座り込んで数分後、全身から火が燃え上がって倒れたとのこと。

 須藤が所持していたリュックの中には焦げた目覚まし時計、覚醒剤が入っていた。そして後でわかった事でリュックからはエタノールが検出されたらしい。

 

 覚醒剤の出所は未だに不明のままだ。これは推測だが、もしかしたら須藤はあのビルで誰かを待っていてリュックに入っていた覚醒剤を渡すつもりだったのかもしれない。

 引き続き須藤について調べる為に住んでいた家や親族や友人に事情聴取を行う予定だ。


 そして2件目は神田で起きたXYZマンションでの火事について、時刻は20時頃マンション全体が炎上して負傷者は8名、死者は1名だ。死体は焼けすぎて身元が直ぐにはわからなかったが、焼死体の近くにあった身分証明書と管理人の証言で松田聡だと特定できた。


 解剖の結果、松田は睡眠薬を飲んでいたらしく、逃げることが出来ない状態だったようだ。

 そしてマンションにはどうやってかはわからないが全体にガソリンが検出されたとの事、スプリンクラーは作動していたらしいが全く火は消えなったとマンションから逃げ切った人は証言する。


 気になる事は、共通点としてまず2件とも放火が関係している事、犯人らしき目撃が一切ないことだ。

 おそらく犯人は現場にはいなく遠隔操作、または時限式で火がつくように仕込んだのではないかと考えられる。


 しかし情報が足りなく今のままでは全部憶測でしかない。純也は支度をして同じ事件の担当している鈴木(すずき)健司(けんじ)と共に現場に向かった。





 パトカーでまずは1件目の現場に向かい新たな手掛かりがないかを探す。

 街に設置している防犯カメラの映像では須藤はビルの入り口前で待機しスマホを弄っていた。そのスマホの回収は出来ているのだが、パスワードが指紋認証で解除できる様になっている。

 専門家に3Dプリンターで指紋作成するように依頼はしているが、まだ時間が掛かるらしい。


 「流石に今になって新しい手掛かりが見つかる訳ないか」

 「では、次に彼の人間関係について調べましょうか」

 

 鈴木は淡々と動いてパトカーに戻った。それに続いて今度は須藤の両親が住んでいる家に訪問する。

 まず須藤明楽がどういう人物だったかを聞くと昔は努力家で何事も一生懸命に金を稼いで働いていたが、恋人に別れを告げられてから彼は自信を失い仕事が長続き出来なくすぐに辞めてしまって酒を飲む毎日を送っていたという。

 両親はそんな彼をしかったり励ましたりしたが口論になってそれ以降連絡が取れなくなったとの事だ。


 「ちなみにその恋人の名前は?」

 「確か……そう春奈、小早川春奈(こばやかわはるな)です」

 

 小早川春奈、この人物に会えば捜査に進展するかもしれない。今回の事件で事情聴取する必要がありそうだ。

 純也は須藤の両親にお礼を言って次に彼が住んでいたアパートに向かい、住人達に事情聴取を行う。

 しかし住人達は彼と話す機会はなく強いて言えば夜中は酒で酔っていたのか、やたらとうるさかったぐらいだと証言した。

 あまり進展はなかったので次に彼の友人に会い彼がどういう人物でここ最近何かなかったかを聞く。

 

 「明楽はよく春奈とイチャイチャして春奈の為に一生懸命金を稼いで結婚するって言っていたんだ」

 「ほう、その春奈さんはどのような方ですか?」

 「大人しくて内気な人でしたね。でも彼女も明楽といる時は明るいんですよ。でも何故か1ヶ月前に別れてしまったんです。それからあいつは酒ばかり飲んでいたよ」

 

 なるほど、両親と友人の証言は一致することから須藤がどういう人物がわかった。

 純也と鈴木は次に彼の元恋人である小早川春奈を会いに行こうと彼女が何処にいるか須藤の友人に尋ねるがそれはわからないと言った。

 

 これ以上の捜査の進展は望めない、後は須藤の指紋作成が完了するまで待つか。純也は鈴木と共に2件目のXYZマンションに向かった。

 

 

 

 

 約20分後、二人はXYZマンションに到着した。マンション自体は見事に焼けて面影がない。

 住んでいた人々は公営住宅に移住し、この焼けたマンションを取り壊した後、新しいマンションが出来るまでそこで暮らすそうだ。

 聞き込み調査は後にしてこの瓦礫の山で新しい手掛かりがないか探す。しかし、それらしい物は見つからない。


 「まったく酷いもんですね。マンションのてっぺんから地下のポンプ室まで焼けていますよ」

 

 鈴木は地下にあるポンプ室だった場所はかなり焦げている。

 このマンションは受水槽方式と呼ばれる水を一旦受水槽に貯水槽に貯水し、揚水ポンプで高置水槽に水を送りマンション内の蛇口まで水道水を流れるようにする方法である。

 

 しかし何故このマンションのスプリンクラーは作動していたのにもかかわらず、炎は消えなかったのかが謎である。

 そして今回の死亡者である松田聡、彼はどういう人物で何故睡眠薬を飲んでいたのか?それを調査しなければならない。

 

 二人は現場から公営住宅向かい移住した人達に今回の件について聞き込みを実施する。あの時間帯で不審者らしき人物はいなかったか?どうやって逃げられたのか等些細な事でも情報が欲しかったので細かく聞いた。

 

 「ん~、あの時は逃げるので必死でしたからね」

 「何でもいいのです」

 「そういえば、スプリンクラーが作動しても炎が全然消えなかったのよ。しかもそのスプリンクラーからでた水は変な臭いがした気がするわ」


 スプリンクラーの水から変な臭い……水が腐っていたとでも言うのか。それだと水道水も腐っていたことになるがそれは考えにくいな。錆びていた可能性も否定は出来ないがだからといって炎が消えない理由にはならない。

 

 「関係あるかわからないけど、俺はあの日夜に帰った時にマンションの近くに業者の車があったな」

 「業者の車ですか?」

 「ああ」

 

 その業者の車のナンバーを聞いてみたが流石に知らないと男は答えた。その業者について調べる必要があるな。

 次に二人は松田聡について聞いてみると松田とよく会話をしていた主婦の話によると仕事のストレスで寝不足だから良いカウンセラーがないか尋ねた事があってそのカウンセリングセンターを紹介したと言う。

 直ぐに二人はそのカウンセリングセンターに向かってその担当者を訪ねた。

 その人物の名は五十嵐龍騎(いがらしりゅうき)、五十嵐清司の弟だった。

 

 「これは驚きました。五十嵐さんの弟さんがカウンセラーをしているとは」

 「私は兄と違って医療関係の知識は貧しかったのですが人の為に何かしたいと思いカウンセラーの道を歩んだのです」

 「立派ですね」

 

 早速純也は松田聡について聞いてみる。しかし龍騎は守秘義務で教えることは出来ないと答える。仕方がないので彼に処方したと思われる睡眠薬、エスタゾラムについて聞く。

 エスタゾラムは個人差があるが服用すれば約6~8時間は催眠作用があるとの事だ。この薬は確かに龍騎が松田に処方したと証言する。

 

 松田はこの薬を飲んだ所為で火災から逃げ遅れてしまったのは間違いないだろう。

 これ以上の進展は難しいと思い純也と鈴木は一度情報を整理しようと警視庁に戻った。





 一方、純也と鈴木が調査している一部始終を眷属経由で知ったラーシャは今回の情報を真由美から貰ったノートにメモした。しかし正直言ってわからない単語が多過ぎて困っている。


 「スプリンクラー、ポンプ室、エスタゾラム……全然わからないわ」

 「んー真由美さんに聞いてみるしかないかもね」

 「でも聞いちゃうと変に怪しまれるのも嫌だからどうしよう。その話が純也さんの耳に入るのは避けたいわね」


 しかしこの情報をそのまま真由美や直美に聞いて怪しまれる可能性もあるのでどうやって聞こうか悩む。

 ラーシャとラルマが真剣に悩んでいる中、ミーアと直美の姿をした召喚獣は部屋の机の上に置いてある物をカタカタと音を立てて何かをしている。


 「……ちょっとミーアちゃん何しているの?」

 「これ直美姉ちゃんに聞いたんだけど、パソコンっていう調べ物に使える道具なんだって。一応使い方を教えてもらったんだけど、全然わからないからドッペルシャドーのどっちゃんを召喚してこの世界の美味しい料理を調べていたの!」

 

 ドッペルシャドーとは相手とそっくりの姿に変身して相手の魔法や技、ステータスをそのままコピーできる召喚獣だ。ミーアはパソコンの使い方がわからないからドッペルシャドーを直美に変身させて代わりに美味しい料理を調べてもらっているらしい。


 「「それだ!!」」

 「えっ?」

 「ちょっとミーアちゃんごめんね」


 ラーシャとラルマはドッペルシャドーに今回の情報で解らなかった単語を調べてもらう。ミーアは美味しい料理を調べるのを中断されて少し不機嫌になるが仕方がないとドッペルシャドーに指示する。


 これでまた一歩、アーガイル大陸から来たかもしれない人物に近づいた。必ず会って元の世界に帰る方法を聞いてみせる!


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