90話 少年少女達よ、和解しよう
ウェルフェナーダでのジンマ討伐作戦、イスフェシア皇国奪還作戦は完了した。
その翌日オゼットとエレザはイスフェシア皇国に到着し、オゼットは倒れイスフェシア城の医務室に運ばれる。アルメリアによると過労とIMSPによる負担が原因とのことだ。
レナ、エレオノーラ、エレザの3人はヘリの迎えが来てコンダート王国に戻った。
ベリアは魔竜の炎で焼き尽くされそうなところをウインチェルとイスフェシア城の魔術師達によって召喚された大雨で炎は鎮火した。しかし街の被害は大きい、ベリアの人々は今もソルジェスの傭兵と共に復興に励んでいる。
そんな中、今回の事件に関わることが出来ず自分が除け者扱いされて不機嫌になっている一人の少女がいた。
「むうぅぅぅぅぅぅ」
「ミーアちゃん機嫌直してよ」
「ラルマ君は悔しくないの?イスフェシア皇国の危機にあたし達はただ遊んで眠らされたのよ」
「それはそうだけど、僕達がデスニア帝国の傭兵や暴れていた魔竜と戦っても足手纏いになるし死んじゃうかもしれないからウインチェルさんがそうしたんでしょ」
「うーちゃんもうーちゃんだよ!あたし達を子ども扱いして~~!こうなったらあたし達がいないと何も出来ないという事を証明してあげるんだから!!」
「えぇ……」
ミーアはまずは腹ごしらえをしようとラルマを連れてネバーランドに向かった。
数時間後、ネバーランドに到着した。この店は帝国の傭兵と919小隊の一人、ジャック・ウォーガンによって店は扉周辺が破壊されて今は扉とテーブル席の半分がなくなっている。
店に入るとキュラスがカウンター席に案内する。
「いつもありがとうキューちゃん!」
「は~い、今日もストロベリーパフェかな?」
「うん!!」
ミーアの笑顔を見てキュラスは尊みを感じながらガイルにストロベリーパフェを2つ依頼する。
ガイルが作っている間に入り口からもう二人のお客が入ってキュラスが接客をしているとお客の一人がミーア達の隣席がいいと言い座る。
ミーア達が隣に座った二人を見るとその二人はラーシャとルアールだった。
「え?ラーシャちゃん何でここにいるの?」
「いや~~その話をすると長くなるんだけどね……」
ラルマのツッコミに対してルアールが説明する。
ウェルフェナーダとイスフェシア皇国での戦いが終わった919小隊の隊員達はアーザノイルにある宿泊に集まっていた。
戦いの結果、ジンマは消滅しイスフェシア皇国は見事に奪還された。UGDによりコンダート王国軍は約4万人、デスニア帝国軍は約6万人と魔物の軍勢約10万体、そして戦場から離れたところにある各街の民達合計90万人を爆破しその魂を集めたことによりレイブンは邪神ヴェノムの復活させるための条件を揃えた。
しかし919小隊の目的を知らないデスニア帝国の軍人達は彼らが成し遂げた偉業……いや“異業”と言える情報を聞いてコンダート王国の軍人を倒すのは良いがその為に味方やウェルフェナーダの民達を大量殺戮する必要があるのかと話題が上がり会議の結果、919小隊のやっている事は女帝の命令とは言っているが、もはや国家反逆罪に該当し命令に背いていると判断した。
よって全ての帝国軍人は彼らを“敵”と認識し919小隊は発見次第、処刑せよと指示がきているらしい。
これに対してレイブンはデスニア帝国に「919小隊は帝国から脱退し解散する」と宣言した。
「って話なんだ。二人にはちょっと難しい話だったかな」
「つまり、ラーシャちゃん達はデスニア帝国を裏切るような事をしたから追われるようになったと?」
「そういうこと。まぁあたし達は元々帝国から嫌われていたからね~。ただこれでイスフェシア皇国やコンダート王国にちょっかいを出す必要がなくなったんで今後ラーシャちゃんは君たちと遊ぶことが出来るようになったって話」
「だから……その……」
ラーシャは恥ずかしそうに顔を隠すがルアールが「頑張って!」と応援する。
「私と遊んでくれますか?」
「いいよ!」
ラーシャの問いにミーアは即答する。
「え、いいの?ミーアちゃん!?」
「いいって何で?」
「だってこの人達はデスニア帝国の人達だよ?マリー様をさらって僕達のママとパパを殺した……」
「確かにデスニア帝国の軍人さんは許せないよ。でもラーシャちゃんはもう軍人じゃないし、イスフェシア皇国で何か悪さをしたわけでもないじゃん。そうだよね、お姉さん?」
「そうだよ~」
「ラルマ君はラーシャちゃんがデスニア帝国の人だからって理由で一緒に遊ばないの?」
「う……そんなことないよ!僕だってラーシャちゃんと遊びたいよ」
「じゃあ決まりだね!」
デスニア帝国の軍人だから、イスフェシア皇国と敵対しているからとぎこちない関係だった三人は仲を取り合う。いつか私達みたいにデスニア帝国はアーガイル大陸の全ての国と仲直りが出来ればいいなとラーシャは思った。
そして三人の前にストロベリーパフェが置かれる。ラーシャはまだ注文していなかったので驚いてストロベリーパフェを持って来てくれたガイルを見る。
「え、いいんですか?」
「サービスよ。遠慮なく食べなさい」
ラーシャはストロベリーパフェのクリームを一口食べると美味しいと笑顔になる。
ルアールが「因みに私には?」とサービスしてくれないのか質問するとガイルは「あなたの仲間が店の修理費を払ったらしてあげる」と返した。




