81話 リザルト、そして北に進め
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呼吸を整えて今後どうするかを考える。一旦ウェルフェナーダに戻って生存者の確認に行こうと提案するとエレザは首を横に振った。あの爆発で免れたとしても地に埋まって助かることはないと判断している。
「くそっ!帝国の奴らめ、まさかこんな攻撃を仕掛けてくるとは!」
エレザは拳を地面に叩き付ける。陸軍第17機械化歩兵師団と陸軍第8機甲師団は壊滅、コンダート王国に害を及ぼすジンマの破壊は成功したがこの代償は大きい。
一度コンダート王国に戻り報告をしたいところだがここからでは遠く、無線機等の通信手段はブルメとの戦闘で壊れたらしい。そこで俺はエレザに一度イスフェシア皇国に向かわないかと提案する。ここからならイスフェシア皇国の方が近く別の作戦で動いている真理やレナ達と合流すればコンダート王国に戻る事も出来るだろうと考えた。
エレザもそれに賛同してイスフェシア皇国に向かうことにした。しかし長期の戦闘が続いた所為か疲れがドッと来て倒れ込んでしまう。
「大丈夫か?」
「すみません。ちょっとめまいが……」
「少し休もうか」
「しかし……」
本当なら急ぎたいが体に力が入らずエレザに「その状態でイスフェシア皇国に辿り着いたとしても足手纏いになるだけだ」と言い横になる。
急がば回れとはよく言ったものだ。エレザの言葉に甘えて俺も眠りにつくことにした。
数時間後、休息をとって北に進みエンザントを目指す。イスフェシア皇国の首都であるベリアは高山に囲まれており入る為には北側にある正門から入る必要があり、かなり遠回りをしないといけなかったが過去に真理が提案したエンザントからベリアまで通じるトンネルを作る企画があってその工事作業は完了している。そのトンネルを通ればベリアにいる真理やレナ達に合流ができるはずだ。
休息をとったとはいえ、まだIMSPは使わない。ここで使用して一気にイスフェシア皇国に戻ることは可能だが、イスフェシア皇国に到着して帝国と長期戦闘になった場合はIMSPの影響でまた具合が悪くなったりすると皆の迷惑になってしまう。だからここぞという時まで温存はしておきたい。
それに最近はこのIMSPを使い過ぎた所為か手に力が入らないでいる。最初は過労によるものだと思っていたがアルメリアが俺を検査した時に体の神経や筋肉に傷があるのが発覚した話を思い出し、確か使い続ければ最悪な場合は脳神経に深刻なダメージを与え記憶障害になる可能性があるらしいと……今その最悪な状態を迎える訳にはいかない。
「とはいえ、ここからエンザントまで距離が離れ過ぎだよなぁ」
「イェルガについたら馬車を借りよう。それで食事や休息を取りつつイスフェシア皇国に向かえばいい」
イェルガは帝国に支配されている町の一つでイスフェシア皇国の南側にある。高山のおかげで襲撃をされることはなく、エンザントに行くまでは森を抜ける必要がある。
「ではまずは食事でもしよう」
町に着くとエレザは近くのレストランに入ってメニューを開く。エレザは定員に料理を指差しで注文をして俺もそれと同じ物を頼んだ。何を頼んだのかを聞いてみると適当に頼んだらしい。
注文してから15分後、店員が料理を運んできた。
「お待たせしました。シュニッツェル、レバークヌーデルズッペ、ブロートヒェンでございます」
店員から呪文のような名前の料理が並べられるが、それぞれ仔牛肉のカツレツ、レバー肉団子のスープ、そしてパンだ。帝国は俺達の世界でいうところのドイツ料理が主流っぽい。
とてもいい匂いで美味しそうだ。これまで戦闘が続いた所為でまともに食事が出来なかったのでこれは嬉しい。
「「いただきます」」
空腹に耐え切れず目の前の料理にがっつく。このシュニッツェルという料理、ナイフで切って口に運んで噛むとじゅわぁーと肉汁が溢れ出す。
ナイフとフォークが止まらずお互い話をしないで料理を完食してしまう。
「おかわりする?」
「そうしたいのは山々だが、急いで仲間達と合流したいのでな」
エレザは料理の代金を店員に渡して外に出る。後を追うとエレザは近くに止まっている辻馬車に向かいエンザントまで行けるか交渉をする。しかしイェルガからエンザントまでは距離がありすぎて無理だといわれてしまう。
「何とかならんのか?」
「流石にねえ、料金も馬鹿にならないからお勧めできませんよ」
やはりここはIMSPを起動して剛火を召喚するか、『タキオンソニック』で一気にエンザントまで走るしかないか。
俺はIMSPを起動しようとするとエレザが止めに入る。
「待て」
「何故です?俺の『タキオンソニック』を使えばエンザントまで一瞬で辿り着けるのに」
「私がわからないとでも思っているのか。最初に会った時と比べて今のお前はダメージを受けているみたいだがそれは戦闘とは別の影響によるものだ。その影響は大抵そのアイテムを使った後で起きている。つまりお前が持つそのアイテムは使用する度に何かしらの負担やダメージが掛かっているのではないか?」
これは驚いた。今まではIMSPの仕組みを理解しているフェリシアやウインチェル、魔導医師であるアルメリアしか解らなかったこの弱点をこの人はどうやってかは知らないが見抜いている。
「その通りです。このIMSPは連続使用したり、長時間使用すると体に負担が掛かると言われています」
「やはりか、だったら尚更そのアイエム何たらを使うは控えた方がいいな。その力は凄まじいが、いざという時に使えないのでは意味ながない」
エレザは別の辻馬車を探そうと町を歩く。心配してくれるのはありがたいけどさっきエレザが言った通り今は急いで仲間に合流してウェルフェナーダでの状況報告とイスフェシア皇国で起きている状況を把握したいのも事実だ。それにいざという時に使えないと意味がないとは言うが使いたい時に使わなきゃ意味がないとも俺は思う。
俺はIMSPを起動して剛火を召喚する。
「……私の話を聞いていなかったのか?」
「イスフェシア皇国に着いて今回の作戦が終わったらゆっくりと休めば治りますよ」
「だがそれまでにお前の負担が」
「ですのであまり負担が掛からない方法をとります。さあこの馬に乗って下さい」
剛火に乗ってエレザに手を差し伸べる。彼女は渋々と手を取って後ろに乗り剛火を走らせた。
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