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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
9章 クロスオーバーガンセイバーズ編
79/150

79話 転移者の決戦(後編)

 

 戦闘は激しさを増す。レイブンは『グラビティ・プレッシャー』で俺の動きを鈍くしてから確実にチェーンソーで攻撃を当てにきている。いくら防御力で相手のダメージを軽減できるとはいえこのままでは力尽きるのが先か……もしくはレイブン曰く、「但し相手の体力とか魔力といったステータスはそのまま」らしいからガヘナの時みたいにIMSPの長時間使用によって起きる“あの現象”を迎えるかのどちらかになる。

 

 しかしIMSPが起動し続けて無限の魔力が使えるということは、所持者が持つ魔法や能力は使えなくなるが武器やアイテム等が持つ効果は使用できると考えて良さそうだ。その穴場をつけば勝機はあるかもしれない。

 

 ライフ・セイバーの出力を上げて回復速度を上昇する。少しでも早く傷と疲労を回復して次の手を打たなければ俺の敗北は確実になる。


 「ったく、相変わらず何て硬さだよ。チェーンソーで斬り掛かっているのに胴体真っ二つにならない何て化物にも程がある」

 

 レイブンは一旦チェーンソーを地面に刺すと魔法陣を展開し魔法陣からカードの山札を取り出す。

 

 「俺は基本的にこの時計の時を使った能力とインストールされた魔法しか使えないからな、滅多に使わないがお前にプレゼントしてやるよ」


 レイブンがカードを一枚上空に投げるとカードから魔法陣が展開され魔法が飛んで来た。どうやらあのカードは魔法が込められていてその魔法をキャストタイムなしで発動できるらしい。そして使用したカードは消滅する。

 次にレイブンはその山札を一気に上空に投げると無数の魔法は俺に襲い掛かる。

 

 「ぐわああああ!!」

 「愉快だな、イスフェシアの勇者を甚振(いたぶ)るのは。さあそろそろ終わりにするか」

 

 指を鳴らすと上空にある時計の魔法陣が緑色から紫色に変わる、何か性質が変化したようだ。

 

 「後40分で発動する『クロック・ナイトメア』を『カウント・ゼロ』に変えた。この魔法が発動すれば最期、俺以外の“あらゆる生命の寿命を終わらせる”ことができる。つまりお前の寿命は後40分って訳だ」

 「なんでそんなとんでもない魔法を今まで使わなかった?」

 「これを使うには膨大な魔力とこの時計に貯めていた魂を消費するからな、それにコントロールが難しいからこの結界を貼ってないと惑星全ての生命の寿命を終わらせてしまう」

 「“魂を消費する”だって?まさかお前の能力は使用する度に誰かの魂を使っているのか!?」

 「ああそうだ。このCCSの能力は魔力を使わない代わりに人間やモンスターの魂を消費して発動できる。そして人やモンスターを殺せばその魂をこの時計に貯めることができる。お前の魂もうすぐこの時計の中に入ってもらうぜ」

 

 この男が何故、俺達の世界で連続誘拐殺人を繰り返していたのはあの時計の能力を使う為だったのか。今までたくさんの命を奪い人々を苦しめたのも、真理を攫ったもの……。

 

 「……許さない!」

 「誰もてめえの許しなんて求めてねえよ。このまま死ね」

 

 レイブンに背後をとられチェーンソーで斬られる。必死に応戦するが時を止められて動けない以上、防御も回避も出来ないし『フューチャー・アナライズ』が使えないと反撃を当てるのも難しい。しかしあの上空にある時計の魔法陣の性質が変わったのであれば勝ち目は出て来た。

 俺はこの野球場を囲む様に透明の壁を作り出す、レイブンはその壁の存在に気づいていない。

 

 「何かをしているみたいだが無駄なことだ。もうすぐでお前の人生終了なんだからよぉ」

 

 レイブンはCCSのボタンを押すと時計の針が左回りに回転する。すると手元には先程使用したカードの山札が手元に戻り再び上空に投げて魔法を発動した。

 剣で飛んでくる魔法を弾くが数が多すぎて捌ききれない、氷の魔法が足に刺さり膝をついてしまう。

 

 「ぐっ!」

 「そのまま寝ていろ。そうすればこれ以上苦しむ事ない」

 「ふ、ふざけるな!」

 

 魔法で攻撃をするがレイブンには相変わらず当たらない。あちらは上空の魔法陣が発動するまで時間稼ぎをしているようだがこちらも透明の壁を強化していき、魔力を練ってある魔法の発動準備を進めていく。


 正直言って結構ダメージを喰らいすぎて動きが鈍くなってきている。上空の魔法陣が発動するまで後20分といったところか……段々と意識が朦朧としてきた、IMSPを長時間使用したことで気持ち悪さが込み上がり始める。

 

 「ここで勝負を付けよう」

 

 俺は練っていた魔力を解放して空中と地上に無数の魔法陣を展開する。

 

 「こんなに魔法陣を展開して、またベリアの時みたいに爆発でもしようってか?」

 「いいや、今度は時を止めても関係ない方法を思いついたのでそれ実施しようと思ってね」


 無数の魔法陣からは大量の水が流れ込んでいく。そしてピッチャープレートの真上に野球ボールと同じサイズの水の玉が召喚される。その玉は風船が膨らむ様に大きくなっていく。

 

 「こんなに水浸しにしてどうするんだよ、ついに頭が狂ったか?」

 

 レイブンは魔法陣を無視して『グラビティ・プレッシャー』を放ち攻撃をする。それに耐えながら俺は放った魔法陣に『マジックブースト』を掛けて流れてくる水の量を更に増やし、召喚した水の玉をどんどん大きくしていく。やがて水は野球場の全てを水浸しにして浸かり始めた。野球場の周辺に張った透明の壁は『テレポートロックアウト』といって結界内にいる間は転移系の魔法が使えなくなる効果がある。

 そしてその結界の強度を上げたことによって文字通り“壁”を作り出した。これで水を溜めるが出来る、まるで水槽みたいに。

 

 「こんな無駄なことをしたってもうお前はゲームオーバーだ。『カウント・ゼロ』!!」


 レイブンは『カウント・ゼロ』を発動すると時計の針が0時0分で止まり黒い霧が俺を包む。しかし黒い霧は何事もなかったように消滅する。

 

 「は!?何で!?」

 「俺にはパッシブスキルで異常状態&即死無効が常時発動しているからな」

 

 最初にこの世界に来てIMSPが故障していたからウインチェルに修理してもらった時に覚えた方法で頭の中でメニューウィンドウを念じると目の前にメニュー画面が出てくる。

 ステータス画面を確認するとその中には異常状態&即死無効というパッシブスキルが発動しており文字通り俺は麻痺や毒等の異常状態にはならないし即死系の魔法や能力等の効果の影響は受けないのだ。

 

 「異世界転生お馴染みのチート効果も大概にしやがれ!!」

 「関係ないね、これは俺が手に入れたゲームのスキルだ!」

 「うるせえ!この暇人が!」


 水位は増してやがて野球場は浸かり、ピッチャープレートの上にある水の玉は野球場を覆うまでに巨大化し更に大きくなっていく。最早野球場は巨大なプール、又は水槽へと変わった。

 

 「ち、このままだとヤバいな」

 

 レイブンは転移魔法で逃げようとするが『テレポートロックアウト』の影響で発動は出来ない。それに気付いて今度は『グラビティ・プレッシャー』で俺を水中へと沈ませる。

 

 「このまま溺死しちまいな!」

 

 息ができない……だがレイブンがこういう行動するのは予想済みだ。俺はライフ・セイバーに貯めていた魔力を解放して電流を流す。

 

 「ぐおおおおおおお」

 

 互いに感電してレイブンは『グラビティ・プレッシャー』の発動を解除してしまう。いくら時を止めることが出来ても水中なら思う様に動けないはずだ。


 そしてここからが本当の勝負になる。水位が結界の天井まで上がり完全な水中戦へと変わる。レイブンは魔法で氷の塊を飛ばして攻撃をする。それに対して俺も魔法で弾幕を張るが攻撃を避けられる。やはり時を止めてかわしてくるよな、だからこそこの状況を作ったんだよ。

 足元に氷の塊を作り、それを踏み台にしてレイブンに近づく。

 

 「いくぞ!『紫電の太刀』!!」

 

 ライフ・セイバーからの電流を受けながらもレイブンに斬り掛かる。斬撃は回避されるが水中に流れる電流は回避できないはずだ。

 

 「くそ、貴様も電流でダメージを受けているはずなのに!」

 「お前に勝つために手段を選んでいられないんでね」


 ライフ・セイバーに魔力を流して電流の威力を上げる。このままレイブンが気絶すればこのふざけた空間から脱出できるとは思うが相手もしぶとく魔法で攻撃してくる。でもそろそろこの戦いを終わらせる準備はできた。

 レイブンがいる周りの水を凍らせて氷の塊の中に閉じこませる。これで時を止めたとしても動くことはできない。

 

 「はああああああ!!」

 

 ライフ・セイバーの刀身に魔力を流して、雷を纏った巨大な剣が縦一閃に振られる。

 

 「奥義、『轟雷爆砕刃』!!」

 

 レイブンごと氷の塊を叩き切って電流の激しい光が全てを包み込む。そして視界が真っ白になって意識が途切れた。


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