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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
9章 クロスオーバーガンセイバーズ編
77/150

77話 薔薇の騎士団と青剣姫


 ウェルフェナーダの奥へと進み第8戦車師団がいる戦域に辿り着き合流すると周囲は濃い霧に包まれている。これは前回レナと進軍した区域で発生していた通信阻害の効果がある霧とは別物みたいだ。

 ただの霧だとしても邪魔に変わりはないのでIMSPを起動して魔力を剣に溜め込む。


 「はああああああ!!!!」


 剣に風と気を混ぜた魔法を放って周囲の霧を払うとそこには魔物達と巨大なゴーレムが立っていた。

 その巨大さを間近で見て王国軍は動揺する。


 「あれが、ジンマか!?」

 「怯むな!各部隊は周囲の魔物を攻撃、イスフェシアの勇者を援護しろ!」

 「了解!」


 王国軍は機関砲で周囲にいる魔物達の殲滅を開始する。

 俺はエレザと共にジンマに近づいて『オメガ・アイギス』の発動準備をすると赤い斬撃が襲い掛かる、それを見たエレザは斬撃を凌いで反撃に出ると斬撃を飛ばした先にはブルメがいた。


 「仕留め損ないましたか、流石はコンダート王国のギルドマスターにして薔薇の騎士団(ローズナイツ)のクランリーダーね」

 「あら私を知っているとは光栄だね、青剣姫さん。でもその見た目だと青い要素ないね、胸以外私と被るからこの戦場から退場してくれない?」


 挑発してブルメの視線はエレザに向く。エレザは俺にウィンクで合図する、おそらく彼女は「ここは私に任せて先に行け」と伝えていると思う。

 俺は頷いて『タキオンソニック』でジンマのいるところまで走った。ブルメが止めに入ろうと剣を振るとエレザはVP9でブルメの剣を弾いた。


 「あなたの相手は私よ、それとも私に勝てないからイスフェシアの勇者のところまで逃げる?」

 「……いいでしょう。あなたの首を切り落とし国王に届けてあげます」


 ブルメは『タキオンソニック』を発動してその場から消えたと思った瞬間に無数の斬撃がエレザに襲った。

 イスフェシアの勇者と同じ能力……その高速な動きを目で捉えるのは至難の業だ。当てずっぽうに攻撃しても意味はない。

 エレザは斬撃に耐えながらも詠唱を始める。


 「『ファイアウォール』!」


 炎の壁がエレザを囲む様に出現し、ブルメは一旦攻撃をやめて距離を取ると壁から弾丸が飛び出して肩をかすめた。

 小賢しい真似をと怒りを覚えたブルメは『ファイアウォール』を横一線に剣を振って消した、しかしエレザの姿は無く周囲を見ると今度はブルメの周りに『ファイアウォール』が出現した。これでは身動きが取れず何処からエレザが攻撃してくるのかを考え真上を見るとエレザが空からブルメに目掛けて剣を振り下ろした。


ガキンッ!!


 エレザの一撃を何とか受け止めたブルメは膝をつく。


 「おしかったですわね、でもこの状況では何もできないでしょう」

 「それはどうかな?」


ダンッダンッダンッ!!


 エレザは腰からVP9を取り出してブルメの腹と両足に弾丸をぶち込んだ。ブルメは腹を抱えて倒れそうになるが体勢を立て直し、距離を取って回復魔法で撃たれた箇所を癒すとエレザは追撃でVP9を撃ち続けて回復の邪魔をする。

 『タキオンソニック』で高速移動をしようとしても足に力が入らず、思うように動けないでいる。


 「くっ!」

 「この程度なのか?」

 「舐めるなぁ!!」


 IMSPの力を引き出して筋肉を強化、撃たれた弾丸を取り除いて回復魔法で傷を癒し『タキオンソニック』でエレザに近づいて再び斬撃を繰り出す。

 しかしエレザはブルメの斬撃を全てではないが弾いたり防いだりしている。何故音速の斬撃に対してそんなことができるのか、それは以前にエレザはエレオノーラが使う『ソニックストライク』という自身の行動速度を音速近くまで上げる身体強化型の魔法やオゼットと組み手をする事で『タキオンソニック』対策の訓練をしていたのだ。

 ブルメの動きは微かに見えるだけで完全に捉えているわけではない。だが敵の攻撃パターンさえ分かれば何処から攻撃してくるのかを予想して防御することはできるし、応用すれば魔法で行動を制限することもできる。

 

 「炎よ、大地に降り注げ!」


 エレザは『火球(ファイアボール)』を雨の様に降らすとブルメはその攻撃を避けながら近づいて来る、次に『ファイアウォール』で近づいてくるブルメの先に出現させた。

 ブルメはすぐにその場に止まって迂回するが『火球(ファイアボール)』の雨が集中的に降り注ぎ行動範囲を制限されてエレザに近づけなくなり、それに追い打ちをかけるようにエレザは背負っていたHK416A6というアサルトライフルでブルメの足場付近に弾幕を張って動きを封じた。

 動きが止まった瞬間に銃口を足場付近からブルメに照準を合わせる。


 ブルメは剣で弾丸を弾くが全てを捌ききれず、『火球(ファイアボール)』の雨と共に直撃した。膝をついて動けなくなったところをエレザはブルメに近づいて剣をブルメに向ける。


 「この力を以ってしても私が負ける?」

 「そうこれで終わりだ」

 「そんなの嫌……まだ私は何も成し遂げてないのよ、こんな形で終わるなんて嫌よ!」


 ブルメから黒いオーラが湧き出る。何故かは分からないがあのオーラからは怒り、悲しみ、憎しみという負の感情が伝わってくる。


 「力を、こんなのじゃ足りない。もっと力を……モット“チカラ”ヲ!!!」


 これ以上は何かヤバいと感じたエレザはブルメに剣を刺し心臓を貫く。しかしブルメは立ち上がり宙に浮き、黒いオーラがブルメを包む。次第に黒いオーラは直径10mの大きな卵のような形へと変わる。


 「ギャアアアアアアアア!!!!」


 黒い卵からブルメの断末魔が響き思わず耳を塞ぐ、いったい何が起きているのだろうか。卵は脈を打つかのように光り出す。

 やがて黒い卵から亀裂が走り割れ始める。


 「なんだあれは!?」


 上半身は人間の姿のままだが背中には4枚の黒い翼が生えており下半身は蜘蛛の胴体、尻尾らしき部分は蛇になっている。

 ブルメはエレザを認識すると8本の足で踏み潰そうと足踏みを始めた。急いでその場から走って回避をする。次にブルメは南へと進み始める、方向的にコンダート王国に向かうつもりだ。

 ブルメ……いや、もうあれはモンスターだ。もしあのデカいモンスターがコンダート王国にたどり着いてしまえば被害拡大は免れないし何よりもワタが危ない!


 「各員聞こえるか!聞こえるならあの馬鹿デカいモンスターを狙え!」


 通信機で第17機械化歩兵師団に連絡を取ると装甲車や戦闘ヘリの機関砲がモンスターに向く。


 「撃て!ありったけの弾丸をぶち込め!!」


 エレザの合図で一斉射撃が開始され、凄まじい銃声が戦場を響き渡る。モンスターの体には無数の風穴が開き肉片があっちこっちに飛び散っていく。

 しかしモンスターの動きは止まらない。モンスターは上空に魔法陣を展開し巨大な結晶石を召喚して地上へ落とした。もしこの結晶石が地上に落ちればここにいる自分を含めた王国軍は全員死ぬだろう。



 すぐに結晶石から離れようと隊員達は逃げるがエレザは前に進み、VP9を結晶石に向けて弾丸に魔力を込めながら詠唱を唱え始める。


 (ここで引き下がる訳にはいかない、ワタから頂いたこの銃と私の魔法が合わさればどんな強敵でも倒せると信じているから、恐れるものなど何もない!)


 「太陽の力を司る破壊神よ、その荒ぶる熱で全てを燃し尽くせ!『プロミネンス・フレアブリット』!!」


 VP9の銃口から巨大な炎の弾丸が発射され結晶石のところまで飛び激突する。結晶石は炎の熱で少しずつ溶けていくがこのままでは落下を防ぐことができない。ここまでなのか。

 ふと頭の中でワタの笑顔が横切る。


 (そうだ、まだ諦めるのは早い。全ては王国とワタの為に……まだ死ねない!)


 限界まで魔力を出して『プロミネンス・フレアブリット』を強化する。炎は結晶石を包み、エレザが拳を握りしめると段々と結晶石を包んだ炎は小さくなっていく。


 「消えろ!忌々しい復讐と共に!!」


 炎は完全に燃え尽きたと同時に炎に包まれた結晶石も消えた。

 モンスターは魔力を使い過ぎた所為か地面に倒れ込んだ。エレザはモンスターに近づいて剣を抜刀する。


 「お前のおかげで私は強くなったよ。ありがとう、そしてさよならだ」


 モンスターの頭に剣を刺すとモンスターの体はゆっくりと塵になっていく。


 「ア……リ……ガ……トウ、コレデ……ジークフリート……ノトコロニ……」


 最期にモンスターはエレザに微笑んで消滅した。

 魔力や体力の限界を迎えてしまった所為かすごく眠い、エレザはその場で倒れゆっくりとまぶたを閉じたのであった。



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