76話 アサルト
航空機部隊に偵察を要請してから暫くして、偵察部隊から搭載していたカメラで録画したデータが送られて来ていた。
オゼットはそのデータを見ることにした。
F-15が先導して魔物達にミサイルや機関砲をお見舞いし魔物達の数を減らしていると上空から体が宝石で出来ている竜……ルビードラゴンが近づいて火球を放つが戦闘機の速さでは火球は当たらない。
F-15は旋回してルビードラゴンの背後を取りそのまま機関砲が放った無数の弾丸がルビードラゴンの体を粉々にしていく。
その光景を見れば空中戦において戦闘機に勝てる者はいないと誰もがそう思うだろう。
3機のF-15はそのままジンマのところまで接近しミサイルを放った。ミサイルはジンマに直撃したが全く動じない。そして次の瞬間、1機の戦闘機が墜落した。
「何が起きた!?応答しろ!」
パイロット達が状況を把握しようと墜落したF-15のパイロットに連絡を取ろうとするとコックピットの上に赤髮の女性が立っている。ありえない、いったいコックピットの上までどうやって来たのか、何で平然と立っていられるのかと考えてしまうが考えているうちに女性は右手に持っている紅の剣でコックピットを貫き、パイロットを刺す。
最後の1機になってしまったF-15は撤退を決意し急旋回急上昇をすると、その瞬間そのF-15目掛けてジンマの目からレーザーが放たれた。
間一髪のところでレーザーを回避し全速力でその場所を離れる。
赤髪の女性は墜落していくF-15とルビードラゴンを踏み台にしながらジンマが放ったレーザーのところまで飛ぶと紅の剣でレーザーを弾きF-15がいる方向に飛ばす。
「そんな馬鹿な!?」
レーザーはF-15に直撃し爆発する、そして紅の剣がカメラに飛んできて画面がブラックアウトした。
映像はここまでである。
「何ていうか……、もう無茶苦茶だな」
映像を見たエレザは額に手を当て深くため息をついた。
今までデスニア帝国とは何度も戦った事はあるが、あんな規格外と戦った事はないからだ。
「これからあの女と戦うのか……、私でも勝てるかどうか不安だな」
俺との話し合いでジンマと戦っている間は邪魔が入らないように、エレザに周囲の敵を排除するという事を予め決めていたのだ。
「あの赤い髪の女性……、確かブルメといった気がします、彼女は相当強い」
ブルメとも以前、レナと共に行動しているときに遭遇し俺のIMSPの劣化版を使って攻撃してきたので、侮れない。
「まぁ、だとしてもやるだけやってみるさ」
「ありがとうございます」
とはいえ、ブルメとジンマ両方の相手をしている余裕はないので、無理を承知でエレザに戦ってもらうほかない。
そして今度こそ俺はジンマを倒す、前回とは違って対策はわかっている。
「報告!」
「なんだ?」
「魔物の集団発見との通信が入りました」
その通信を入れて来たのは、俺達よりも先にウェルフェナーダの町へと向かっていた第8戦車師団からだった。
「内容は?」
「はい、既に魔物の集団と帝国兵と戦闘中とのことですが、奇襲を受けたため“全滅判定”ではなく、全滅に近い状況との事」
「う、嘘だろ?あの第8戦車師団が全滅に近いだと……?」
師団長が驚くのも無理はない、これまでの戦闘で無敗続きだった第8戦車師団の5割以上が被害を受けたのだから
その魔物の集団の中に巨大なレーザーを放つ魔物もいるという情報も上がって来た。
「間違いない、それがジンマだ」
巨大なレーザーを放つ魔物といったらジンマしかいない。
「味方の被害は甚大です、早急に救助に向かいましょう」
魔物に対してこれまで無類の強さを持っていた王国軍が甚大な被害を受けたのは、魔物が“霧”から突然正面に現れた事、さらにどこかに潜んでいた帝国兵による火属性魔法や手製爆弾による攻撃を背後から受けたからなのだという。
何とか味方の砲撃によって魔物の数は減らしたようだが、依然として被害は拡大しているとのことなので、早急に救援に向かわないとこのままでは本当に全滅してしまう。
いよいよジンマとの決戦が始まる。




