70話 帝国からの挑戦状
レナに急いで来てほしいと言われて直ぐに執務室に向かうとワタ、メリア、真理と二人の女性がいた。俺は二人の女性に挨拶をする。
「初めましてオゼットです」
「私はエレオノーラ、こちらは陸軍参謀総長のヴァーテ・エレンです、よろしく」
「よろしくお願いします」
挨拶を済ませるとワタは早速本題に入り、テーブルに置いてある魔法石を起動する。すると魔法石から映像が浮かび上がって一人の男が映し出された。
『あー、あー、マイクテス、マイクテス。聞こえているかな?あ、OK?じゃあ始めますか』
「レイブン!」
『ごきげんよう、コンダート王国の国王と不愉快な仲間達。俺はデスニア帝国特殊部隊919小隊の小隊長でレイブンという者だ。基本的には北東の国を管轄していたのだが、この度南の国も管轄する事になったのでよろしく……さて、用件を言うと既に帝国はテレンとイスフェシアと2ヵ国と和平を結んでいる。そこで提案なのだが今までの事は水に流して帝国と和平を結ばないか?』
レイブンから衝撃な言葉が聞こえたが決して騙されはしない、この男の性格を考えて本気で和平を結ぼうなんてするとはとても思えない。
『……と言いたいところだが、君達には帝都ディシアを滅茶苦茶にされた借りがある。全ての帝国軍人は君達を決して許さないだろう。そこで君達の国にある兵器達をプレゼントしようと今送り込んでいる最中だ。たぶんもう検知はしているとは思うがね』
エレオノーラは先程、情報部から帝国のウェルフェナーダという地域から40mの巨大ゴーレムと魔物の大群がこの国に向かっているという報告を受けていた。
その巨大ゴーレムというのは物理攻撃と魔法攻撃は効かない能力を持つ“ジンマ”で間違いない、あいつには俺が持つ『オメガ・アイギス』じゃないと倒せない。
『約2日後には君達の国に到着する予定だ。その2日間で降伏するなら考えても良いと思っている。但し条件としては全ての武装及び兵器をこちらに渡して国王と女王の身柄もこちらで預かる事だね。ちなみに交渉とかは一切受け入れない。答えはYesかNoのどちらかだけだ』
「何をふざけたこと言ってんだ!」
完全になめた態度を取ってくるレイブンの映像を見て俺と真理は怒りをあらわにする。
『では良い返事を待っているよ。最も俺個人としてはお前達を血祭りにしたいから降伏なんてつまらない返事は聞きたくないがね。じゃあね~』
レイブンは一方的にメッセージを言い残し、映像は切れる。
映像を見た後、しばらくワタは腕を組み何かを考えこんでいた。
「エレン、B集団作戦地域に展開中のブラックベレー(陸軍特殊部隊)一個中隊を動かして、敵兵の数や魔物の種類、武装など敵の詳しい情報を集めさせてくれ」
「かしこまりました。陛下!」
「レナは陸軍省情報局と連携して、帝国軍のこれまでの作戦行動や戦術が報告書に書いてあるからその過去の事例を基にレイブンがどんな作戦を取るか検証してみてくれ」
「はい!」
「エレオノーラはレナに同行して手助けするんだ」
「はい!ご主人様!」
ワタは考えがまとまると、ここにいた3人に矢継ぎ早に指示を出していく。
指示を聞いたエレオノーラとレナ、エレンは急いで部屋を出ていった。
ワタは彼女達が出ていったあと、机の上にあった電話でさらに空軍に連絡を入れ、B集団作戦地域の上空に戦闘機を飛ばすように命令をしていた。
聞けば、一番早く作戦地域上空達する戦闘機を用いることによって、ある程度の情報を素早く収集することが出来るのだと言う。
空軍への電話を済ませると間髪入れずに、オゼット達の作戦地域を担当する東部戦線のウルス・ヴェイドという男性の司令官に現在の戦線の状況と、占領出来た地点の情報を聞き出していた。
命令を出し終わったワタは俺にレイブンについての情報が欲しいと聞いてくる。どんな性格か、時を止める以外にどんな魔法を使うか、今まで戦いで彼がどんな行動をしたかを。
俺はレイブンについて知っている事を全部話すと、ワタはこの状況を打破するさらに作戦を考える。
「今日はありがとう、とりあえず君達は休んでくれ。夕方にはもう一度この部屋に集まって状況整理と作戦を説明するよ。特にオゼットは昨日の疲れが取れていないだろう?ゆっくり休んでくれ」
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
俺と真理は執務室を出て次の戦いに備えて自分の部屋に戻り休むことにした。




