69話 信頼の天秤
一方、コンダート王国の執務室ではイスフェシア皇国の奪還作戦の計画が練られている。こちらの勝利条件はマリー女皇とハーゲン皇帝の洗脳を解く事だ。そうすればテレン聖教皇国とイスフェシア皇国にいるデスニア帝国の兵士達を追い払う事が出来る。逆に敗北条件は二人の洗脳を解くことが出来る真理の戦死及び捕獲される事だろう。
「イスフェシア皇国は高山で囲まれているから検問所以外の侵入は難しいです。空には外部からの攻撃を防ぐバリアが貼られていますのでバリアを破壊しない限り空からの侵入も無理ですね」
「そうなると海から侵入して正門に向かうしかないのか。ただ海から攻めるとテレン聖教皇国とイスフェシア皇国の間に上陸する事になるから板挟み状態になるな」
「では正門までヘリで移動してそこから攻めるのは?」
「ヘリでの移動だと人数が限られるし、少人数でイスフェシア皇国の騎士達全員相手するのは無理がある」
ワタ、真理、メリアで作戦を考えている中、トントンとドアからノックする音が聞こえる。ワタが「どうぞ」と言うとレナとオゼットが帰ってきた。
「ただいま戻りました。陛下」
「再びお邪魔します」
二人はワタに帝国の防衛軍殲滅作戦の結果を報告する。帝国が支配していたゲルシュタイン、テュルタ、ローレライの3つの区域は完全に占領を完了し、現在はコンダート軍が3つの区域を防衛している。
もう一つ報告としては敵にオゼットの存在がバレてしまった事、その情報が帝国に……特にレイブンに渡ってしまえば何かしらの対策をしてくるだろう。
「すみません」
「謝ることはないだろう、それに帝国の防衛軍を殲滅した事によって戦力を削る事も出来たし、こちらの行動範囲も拡大出来たんだ。ありがとう」
ワタはオゼットに戦いの後で疲れていると思うから部屋でゆっくりと休んではどうだと提案するとオゼットはお言葉に甘えて部屋に戻る事にした。
「真理さんも少し休憩しましょうか」
「いえ、私は別に大丈夫です」
「ここまで休憩なしで計画を練って来たんだから私の部屋でお茶にしましょう」
メリアは真理を連れて自室に向かう。執務室にはワタとレナだけになりワタは一息をつくとレナにコーヒーを入れて椅子に座らせる。
「……で、“イスフェシアの勇者”の実力はどうだった?」
ワタはレナに帝国の防衛軍を殲滅と同時にオゼットの実力の分析と監視を命じていた。理由としてはまだオゼットを信用していないので、もしここで裏切るようならばレナの手によって暗殺する予定だった。
レナの話によると彼の力は我が国にはない“異常”とも言える魔法や技を使っており、加速系の強化魔法を使われてしまえば自分達の武器で彼に当てることすら不可能だ。そして以前報告書に書いてあったテレン聖教皇国6万の兵士達を氷漬けした話は事実だと確信したとレナは言う。
「なるほど、では一番重要な質問をしよう。彼は信用できる人物だったかい?」
「……私は彼を信用できる人物だと思います」
彼とは少ししか共闘していないが竜騎士兵の攻撃から守ってくれたり、巨大な飛空艇が落ちて来た時には逃げずに一人で飛空艇を消した。もし彼が裏切り一人で逃げて飛空艇が地上に落ちてしまったら我が軍の被害はもっと酷かった事になる。だから彼が裏切る様な人物には見えなかったとレナは答えた。
それを聞いたワタはオゼットを信じたレナを信じる事にした。
コンコン
ドアをノックされたのでワタが入れと許可を出すとメイドがワタに魔法石を渡した。
この魔法石について聞くとこれには国王であるワタに感謝と応援のメッセージが入っているらしい。
誰から貰ったのかを聞くと金髪で肌が白い子どもがこの城の正門にいる警備兵にこの石を国王に渡して欲しいと言い、警備兵はこの石を預かったとの事で一応罠の可能性も考えて被害が出ない場所でこの石を起動したら罠よりもたちが悪いものだったと警備兵は言ったらしい。
魔法石を起動するとある男が映し出されメッセージを伝える。
「これは!?」
「レナ、オゼット達を呼んで来てくれ。これは帝国からの“挑戦状”だ」
レナは急いで部屋を出てオゼットと真理を呼びに言った。




