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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
9章 クロスオーバーガンセイバーズ編
67/150

67話 黒いIMSP

 姿が変わったブルメを見て驚きを隠せずにいる。あの端末、色は黒いが間違いなくIMSPだ。


 「その黒いIMSPをどうやって手に入れた!?」

 「教えてあげないよ。さあブルメちゃん、早くこいつを倒して仇討ちにいこうよ」

 「そうですわね……私はあの国王を決して許さない、必ず八つ裂きにしてやる!『タキオンソニック』!」

 

 ブルメは『タキオンソニック』で一気に近づき、剣で切り刻んでくる。すかさずこちらも『タキオンソニック』で応戦をする。甲板内は常人の目では追えない高速な戦闘が始まる。

 スピードは互角だが、剣の腕に関してはブルメの方が上だ。魔法を使えばその隙に斬撃が飛んでくるので迂闊に使えない。

 

 唯一ブルメに勝っている部分は防御力ぐらいだろう。『ファンタジー・ワールド』で防御力をカンストさせたおかげでブルメが放つ一撃に何とか耐えることが出来ている。

 

 「『龍炎双牙』!」

 「『氷狼牙』!」


 2体の炎の龍で攻撃を仕掛けるとブルメは氷で出来た狼で2体の龍に戦わせる。

龍と狼が激突すると水蒸気が甲板中を包み込み、その隙に魔法の詠唱時間を短くできるスキル『スペル・カット』と詠唱速度を上げるスキル『スペル・ブースト』を発動し、魔法陣を展開させる。

 

 「闇を照らす聖なる光よ、『ロイヤルフラッシュ』!」

 

 ブルメの目の前に光る球体を出現させると球体は激しい光を放つ、ブルメはその眩しさで目を閉じる。その隙にブルメに攻撃をする。


 「……やはり、あなたの戦い方は素人だわ」


 ブルメは目を閉じているにも関わらず俺の剣を弾き、そのまま回転して上段回し蹴りが俺の頭に直撃すると俺は壁際まで飛ばされた。

 脳を揺らされた所為か、まともに立ち上がることが出来ずIMSPによる変身が解除される。

 

 「あのイスフェシアの勇者をここまで追い詰めることができるなんて、凄いよブルメちゃん!」

 「この力があればどんな相手でも敵ではありませんね」

 「さあ、さあ、早く止めを刺して地上にいるコンダート軍も蹴散らしてやろうよ。そして次はコンダートの国王をやっつければもう怖いもんなしさ」

 

 ルアールの言葉を聞いたブルメは相槌を打つとゆっくり歩いて俺に近づいてくる。


 「情報だとあなたは今まで人を殺さずに戦ってきたらしいけど、そんな甘い考えで戦うなんてイスフェシア皇国ってとても平和だったのね……だけど、人を殺す覚悟がないなら戦うな!!」

 

 確かに彼女の言う通り、人を殺す覚悟がないのに戦うのはおかしいことなのかもしれない。だが俺はこの世界に転移してからというもの、モンスターを殺したことはあっても人の命を奪うようなことはしていない。人を殺してしまったら俺はレイブンと何ら変わらないことをしていることになる。


 俺はレイブンとは違う、少なくとも奴みたいな好き勝手に誰かの命を奪う様な事はしない。俺なら……俺とこのIMSPがあれば誰かを殺さずに戦う事が出来るはずだからだ!


「……勘違いするなよ、俺は人を殺す為に戦っているんじゃない、お前達みたいな人の幸せを踏みにじる奴らから人を守る為に戦っているんだ!だから俺は人を殺さない覚悟でお前達と戦う!!」


 全身に力を入れて立ち上がる。もう一度IMSPを起動しようとするとIMSPが白く輝き始める。

 こんな現象は今まで見たことがないがIMSPから“力”を感じる……。

 俺はIMSPを起動すると画面に“Sun light Evolution”の文字が表示され、光に包まれると服装が白いコートに鎧のようなボディアーマーが装着した姿に変わる。


 「偽善者ですね、なら見せてください……あなたの覚悟を!」

 

 ブルメは再び『タキオンソニック』を発動して首に目掛けて剣を振ると俺は攻撃を避けてブルメの腹に正拳突きをする。

 一撃を喰らったブルメは再び近づき四方八方から斬撃を繰り出して来る。しかし俺にはこの先、ブルメが何処から攻撃を仕掛けて何をしてくるのかが見えるのだ。

 一つ一つの斬撃をかわしながらブルメに近づき殴る。ブルメは何故自分の攻撃が避けられた……というより自分の攻撃が読まれているのかが疑問に思い一旦、距離をとる。


 「さっきまでの素人の動きとはまるで違う、私の攻撃を完全に見切っている?」

 

 IMSPを起動すると脳に情報が流れ込んできてどんな魔法やスキルを使えるかが解るのだが、この姿になってスキルと技が追加されているみたいで、そのうちの一つが『フューチャー・アナライズ』だ。

 このスキルは数十秒先までの相手が次にどんな攻撃や行動をしてくるのかを見せてくれる。いわゆる未来予知の様なものだ。

 

 俺はブルメに一気に近づく、ブルメは反撃するが次の攻撃が見えているのでそれをかわして空間からライフセイバーを召喚してブルメの剣を折る。

 

 「ぐっ!」

 「IMSPで強化されているから多少の攻撃なら耐えられるよな?少し痛いから覚悟しろよ」


 ライフセイバーを召喚解除して構えると地面に魔法陣を展開し、魔法陣は左足に集まって左足が光り出す。

 左足をブルメの方に蹴り上げると光の衝撃波がブルメに直撃し、下に先程の魔法陣が浮かび上がってブルメを拘束する。その後、俺の右手が炎を纏いその拳でブルメに目掛けて殴る。

 

 「『プロミネンス・バースト』!!」

 

 赤く光る拳は爆発し、ブルメは壁を貫通して飛空艇の外へと飛ばされた。それを見たルアールは「あ、これはまずい」と言いこっそりと逃げようとする。俺はルアールの肩を掴む。

 

 「待て」

 「い、いやー今日のところはここで退散しようと思ってね」

 「あの黒いIMSPはどうやって手に入れた?それを教えてくれれば捕虜にして身の安全は保証するが」

 「あれ“IMSP”って言うんだ。あれは君が捕虜になっていた時に取り上げたあのアイテムをゼルン博士が調べて作ったんだってさ」

 

 ゼルン博士、おそらくレイブンを召喚したと思われる人物。しかしIMSPはウインチェルがフェリシアと協力して作り出したチートアイテムだ。それを一人で作ったというのか?


 「ま、複製は出来なかったから全く同じって訳じゃないけどね。どうやってかは知らないけど君のそれは魔力が尽きないとんでもない構成になっているらしいけど、博士はその構成を別の形で実現したんだよ」

 「どうやって?」

 「それは人の“魂”を魔力に変換する事で君と同じ力を使える様にしたんだ。あのアイテムは人の魂を保管する事が出来て、それを消費する事で莫大な魔力を手に入れる事が出来る」

 

 ドカンッ!!


 ルアールが話す中、飛空艇の何処かで爆発する。一瞬よろけてしまった隙にルアールは先程ブルメを飛ばした時に出来た壁の穴に向かって走る。


 「じゃあね、イスフェシアの勇者!次に仕事で会うときは殺すけど、プライベートで会ったらゆっくりお茶でもしようね!」

 「待て!」


 ルアールは穴に向かって飛び込んで霧の中へと落ちていった。

 飛空艇は落下していく、急いで操縦室に向かうと部屋には壊された舵とそれを操縦したと思われる人物の死体があった。

 

 「操縦が効かない、このままだと地上にいるコンダート軍に被害が及ぶ。何とかしないと!」


 不時着させるのはどうか考えるが不可能っぽい。ならばこの飛空艇を爆発させずに木っ端微塵にするしかないな。

 飛空艇の壁を壊して地上に降りるとレナが駆け寄ってくる。


 「オゼットさん、無事でしたか……何か服が白くなりましたね?」

 「レナさん、戦況は!?」

 「敵の竜騎士兵は殲滅したわ、あなたの方は?」

 「上空に巨大な飛空艇があって、それが今この場所に落ちて来てます!」

 「なんですって!?」

 

 レナは直ぐに兵士達にこの場から離脱するように指示を出す。

 俺は飛空艇が落ちてくる場所まで走り、詠唱を始める。


 -目覚めよ、黄金の魂 その魂はあらゆる絶望から生命を守る希望の光なり 降臨せよ-

 

 「『オメガ・アイギス』!!」


 『オメガ・アイギス』を召喚して飛空艇までジャンプして突撃する。盾に触れた飛空艇は少しずつ粒子に変換され、盾から展開されるフィールドバリアの衝撃波がこの戦場を覆っていた霧を晴らす。


 「いっけええええええええぇぇぇぇぇ!!」


 激しい光が空を照らし、やがて飛空艇は光となってと消えていった。





 レナは空を見上げると空から光の粒子が雪のように降ってくる。それはここが戦場とは思えない綺麗な景色だった。

 そしてレナの横にドスンッと何かが落ちて来た。


 「オ、オゼットさん!?」

 「痛って~」

 「大丈夫ですか!?」


 レナは手当てしようと近づくが、彼には何処にも怪我が見られない。普通に考えたらあんな上空から落ちたら死ぬはずなのに無傷で尻餅着いて痛がっている程度の仕草をする。これが“イスフェシアの勇者”の実力……王国に帰還したら直ぐにワタ様に報告しなければ。


 「さて……敵防衛軍は殲滅が完了し、この区域はコンダート王国の物となった訳だから作戦は終了かな?」

 「え、ええそうね」

 「なら帰りましょうか」


 二人は車に乗って王国へと帰還する。走行中にオゼットは戦いの疲れでぐっすりと眠っているのを見てレナは思った。ワタ様の命令でこの男が裏切る様な行動すれば射殺許可を頂いているが、その様な行動は見られず逆に私を助けてくれた。この人と協力すればいつかデスニア帝国を滅ぼす事が出来るかもしれないと……。


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