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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
8章 デスティネーションコンダート編
59/150

59話 物語の船旅は大抵トラブルが起きる

 青空と青い海が広がる中、ガレオン船の乗組員達は陽気に歌いながらビールを飲み、宴を始める。


 「昼間からの酒はサイコーだぜ!!」

 「俺達は~最強にしてサイコーの海人さ~♪」


 コンダート王国には3~4か月後に到着するらしい。

 元居た世界のように、エンジンを積んでいない風の力だけで航行する帆船なので、ここまでかかってしまうのは何ら不思議ではない。

 何でも、コンダート王国の船は鉄で出来ていて重いはずなのに、これと同じぐらいの距離を1ヶ月程で到着してしまうぐらい速いそうだ。


 それまではのんびりとするとポーラ船長は言う。

 俺は乗組員達と一緒に宴を楽しみながらコンダート王国の国王について聞いてみる。


 乗組員達は実際に国王には会ったことがないので、どういう人物かは分からないが噂によると、今の国王が来てからコンダート王国は軍事のみならず経済発展を遂げていた。また国内には列車が走っているらしく、それも帝国にあった列車とは比べ物にならない速さで走るとのことだ。

 

 他にも国王の周りには同盟国の姫や女性将校等が何人も集まっており、その女性たちは全員美人なのだそうだ。その女性達も国王から譲り受けた武器で戦うらしい、おそらくその武器とはアーザノイル城で助けてもらった黒い軍服の人達が持って行った銃と同じ類だろう。


 「後は最近だと島よりも巨大な蟹のようなモンスターを倒したとか」

 「凄いパワフルですね国王」

 「いいな~俺も美女に囲まれて~」


 その一連の情報から、どうやらコンダート王国の国王もIMSPと同様なチート能力を持っていると考えられる。もし上手く同盟関係を結べれば協力して帝国を倒すことができる。しかし逆に同盟関係を結べずに敵対関係になってしまったら帝国と並行して戦うのは不可能だ。最悪イスフェシア皇国を滅ぼされる可能性さえある。

 これは国王と会う時は慎重に動かなければならないな。


 「船長、ちょっと来てくれませんか?」

 「ん?どうした」


 乗組員の一人がポーラ船長を呼ぶと単眼鏡を渡して見てほしい方向に指をさす。すると距離がかなり遠くぼんやりとしか見えないが、確かにその方向にぽつんと船らしきものが見える。


 「これは……」

 

 ポーラ船長に何があったのかを聞いてみると、このガレオン船と似た特徴を船がこっちに向かっているらしい。

 この船と似た船ってことは、相手は本物の帝国船……つまり敵とエンカウントしそうになっている。


 「野郎共ぉ!宴は一旦中止だ!おもぉぉかぁじ!!」

 

 ガレオン船は右に曲がり帝国船から少しでも離れようとする。そして仮に敵に見つかってしまった事を考えて乗組員達は臨戦態勢に入る。

 ポーラ船長は海図をテーブルに広げて逃走経路を練る。


 「このまま海南ルートに行けば帝国の奴らとランデブーか……しょうがねぇ、ちと遠回りだが海東ルートに切り替える」

 「そうなると、出雲国海軍の活動海域に入りますね」

 「構わん、ここで俺達の存在がバレちまうと今後の商売に響いてしまう。極力戦闘は避けてコンダート王国に向かうぞ!」

 「了解!!」

 

 船は東へと進み続けると、とても不気味な雰囲気を漂う深い霧の中へと入る。




 霧の中に入ってから約30分が経過、帝国船からは無事に逃げることは出来たとは思うが霧が濃くて辺りが見渡せない。乗組員の一人が船長に一旦引き返そうと提案するが今ここでUターンすれば帝国船と鉢合わせするので却下する。

 

 「おかしいな、海図だと今頃は出雲国東部海域にたどり着くはずなんだが……」

 「この霧、気味が悪いですね」

 「警戒は怠るなよ、何か発見したら直ぐに知らせ……」

 「船長、あれを見てください」


 乗組員が指をさした方向を見ると先程遭遇しそうになった帝国船が正面に現れる。

 

 「馬鹿な!?奴らは俺達の後ろ側の位置にいたはずだ!いったいどうやって回って来やがった?」

 「何か、様子がおかしいような……」


 乗組員から単眼望遠鏡を貸してもらい帝国船を見ると船に人の姿が見当たらない。しかし帝国船はこちらに近いて隣り合わせになる。

 ポーラ船長は腹をくくって乗組員達に剣を抜けと指示を出すと乗組員達は帝国船に乗り込んで襲撃を開始する。甲板に敵は確認できず船室に入ると乗組員の悲鳴が響く。


 「どうした!?」

 「こ、こいつら、アンデッドです!!」


 船室の中には帝国軍人だった人達が亡者となり果てたモンスターがいた。

 アンデッドは乗組員達に襲い掛かり、肉を喰らおうと嚙みついて来る。


 「この、化物め!!」

 「来るな!来るなあぁぁ」

 「この野郎!!」


 乗組員の一人がアンデッドに襲われているところをショルダータックルでアンデッドを突き飛ばす。

 まずい、IMSPがないこの状態でアンデッドに勝てる気はしない。しかし俺はこの人達を見殺しになんて出来ない。

 近くに落ちていたサーベルを拾ってアンデッドの首元を斬る、ドゴっと首が地面に落ちるとアンデッドは動かなくなった。


 「首だ、首を落とせばこいつら動かなくなるぞ!」

 「奴らにタイマンを張る必要はねえ!複数対一に持ち込み、確実に仕留めろ!!」


 乗組員達と協力してアンデッド達の首を斬りまくる。よし、これならIMSPを使わなくても勝てるぞ。

 アンデッドの攻撃を何とか防いでその隙に後ろからポーラ船長がアンデッドの首を斬る。1体のアンデッドがポーラ船長に抱きついて肩を食べようとするところをサーベルでアンデッドの頭を突き刺す。


 「これで最後だ!」

 「成仏しやがれ!」


 ポーラ船長と乗組員達と協力して20体のアンデッドは全て倒すことに成功した。乗組員達は疲れがドッと来たのかその場に座り込み、俺もそれにつられて座り込んだ。

 

 「あ、危なかった~」

 「皆で手に入れた勝利です」

 「船に戻ったら宴の続きをするか!」


 皆が勝利に酔っているところ一体の首なしアンデッドが急に動き出し、乗組員の体を引き裂く、


 「ぎゃあああああああ」

 「な、何!?」


 さっきまで倒れていたアンデッドが全員立ち上がって再び攻撃を仕掛けてくる。小賢しいことにこのアンデッド共は死んだふり(・・・・・)をすることで俺達を油断させて一気に殺しにかかるつもりだったらしい。

 撤退をしようにもアンデッドが数体船室の入り口を塞ぐように待ち構えている。まずいな、先程の戦闘で全員疲れが溜まってまともに戦闘が出来ない。このままでは全滅してしまう。


 「くそ!」


 IMSPがあればアンデッドに苦戦することもなく倒すことは出来ただろう。しかし現実はそんなに甘くなく、今の手元にはサーベルしかない。

 咄嗟に乗組員を襲っているアンデッドに攻撃を仕掛ける。それに気付いたアンデッドはわざと腹にサーベルを刺さして俺の動きを一瞬止める。その後、鋭い爪で首元を狙う。

それを見たポーラ船長は俺を突き飛ばして代わりにアンデッドの攻撃を受けてしまう。

 

 「船長!!」


 ポーラ船長に近づいて直ぐに回復のポーションを飲ませるが傷が深い所為か吐血して喉に通らないみたいだ。アンデッドの攻撃は段々と激しくなり一人ずつ乗組員が倒れていく。

 

 悔しさと怒りがこみ上げてくる、“イスフェシアの勇者”と言われながらIMSPがなければ何も出来ないし誰も救うことができないなんて……。


 「何が“勇者”だ、ちくしょう!!」


 もう一度、サーベルを拾ってアンデッド達に向かって斬り掛かろうとすると返り討ちにあう。そしてそのままアンデッド達に囲まれて体中を引き裂かれ倒れる。

 

 意識が飛びそうになる。ふと頭の中で疑問が横切る、俺は何でこんなことになっているんだっけ?確か真理がレイブンに攫われてその後フェリシアが真理は異世界いるって事を教えてくれて、ミーアの勇者召喚の儀式で異世界に転移して……そしてデスニア帝国からイスフェシア皇国を守っていった。


 ああ、もし叶うならもう一度、真理や皆に会いたいな……。


 意識が薄れていく中で右手が光りだす。そうだ、俺はまだ諦める訳にはいかない。デスニア帝国からイスフェシア皇国の平和を取り戻して真理と一緒に元の世界に帰ろう!

 光っている右手を高く上げると右手には身に覚えのある端末を掴んでいる。俺はその端末の電源を入れると魔力が全身に行き渡り傷が塞がっていく。

 アンデッド達はその光景を見て一斉に襲い掛かってくる。

 

 「『タキオンソニック』!!」


 アンデッドの攻撃をかわして、ポーラ船長と乗組員達に『ライフ・フィールド』という範囲回復魔法を展開するとアンデッド達によって受けたダメージを癒していく。

 その後に透かさずライフセイバーの刀身に魔力を流し込む。そして剣を横振りすると魔力が斬撃となってアンデッド達を一刀両断する。

 一刀両断されたアンデッドは上半身だけになっても地面をはって襲い掛かってくる。だが『タキオンソニック』を発動している以上、アンデッド達の動きは止まっているに等しい。


 「『龍炎双牙』!」


 両手から炎の龍を召喚してアンデッドを燃やし尽くす。アンデッド達は悲鳴をあげながら次第に消し炭になっていった。

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