56話 コンダート王国軍
いつもお読みになっていただき誠にありがとうございます!
本章から経蔵と国416さんが書いている作品「サバゲーマーが、異世界転移して、王に成り上がって、現代兵器無双!」のキャラクター達と絡み始めます!
本章以降に出てくるコンダート王国での物語は下記リンク先で読めますので、興味がある方は是非ご覧くださいませ!
【サバゲーマーが、異世界転移して、王に成り上がって、現代兵器無双!】
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今後とも何卒、よろしくお願いいたします!
ところ変って帝国国内某所地下
ここにはコンダート王国中央情報局(略称KCIA、対外諜報機関)の現地情報調達部と戦闘偵察部第一大隊、陸軍情報局外事部(諜報活動任務)、陸軍参謀本部情報参謀部の共同部隊が帝国国内の情報収集を行うための拠点を築いていた。
この場所以外にも帝国国内のいたるところにこのような情報収集をするための拠点がある。
この拠点が帝国軍にばれてしまった際には地下室の真下に広がるダンジョンに逃げ、拠点から遠く離れた位置にある出口から脱出するようになっている。
地下室には多数の通信機器や壁際に置かれた長机にはラップトップが置かれ、そこで複数の隊員や局員が作業をしている。
そして壁には国家への忠誠を薄れさせないために、コンダート王国国王の写真が納まった額縁と国旗が張り付けられていた。
そんな拠点にいる人員の全ての指揮を執るのは、陸軍情報参謀のカレンドロス・リリア陸軍准将。
彼女は獣人族氷狼種で四大獣人貴族の一つであるカレンドロス家の長女。これまでに冒険者兼情報屋として王国国境付近や帝国国内で活動していた過去を持ち、情報収集に関しては一流の腕を持つ。
そしてその頃帝国国内で活動していたことと、その時に十数人のメンバーを束ねるリーダーとしての経験を陸軍に買われ、今こうして任務に就いている。
拠点のメンバーの任務は、帝国内部の情報を逐一コンダート王国国内のアルダート駐屯地にある国防総省と中央情報局へと情報を送ることだ。
「失礼します」
「なんだ?」
部屋の中心の机でコーヒーを飲んでいたリリアは、入口に背を向けたまま入って来た部下に返事をしていた。
「追っていたイスフェシアの勇者が帝国軍に捕らえられたとの情報が入りました」
「なんだと!」
部下からの予想外の情報を聞いたリリアは、氷狼種の特徴である頭頂部にある白い耳をピンッと立たせ、若干灰色がかった白いふさふさの尻尾をゆっくりと横に振る。
「イスフェシア皇国の勇者……、確かオゼットとか言ったか?」
「そうです、その彼がちょうど昨日一人の帝国軍人との一騎打ちに敗れそのまま捕らえられたそうです」
「場所は?」
「はっ!情報によるとアーザノイルの町で捕まっている模様」
「そうか、ご苦労、戻れ」
「はっ!失礼しました」
以前よりイスフェシア皇国の勇者が帝国国内で活動しているという情報を得ていて、いずれ帝国軍と何等かの戦闘になると想定していてはいたが、まさか一部地域を丸ごと魔法によって凍結させてしまうような強力な魔法と戦闘能力を持つと言われていた人物が、一帝国軍人にやられるとは思っていなかった。
「おい?聞いたか?」
リリアは隣の部屋で休憩をとっているある人物を呼ぶ。
「ええ、聞いていましたよリリア閣下」
すると隣の部屋からぼさぼさの金髪と灰色のスーツが特徴の30代後半の男が出て来た。
彼は現地情報調達部部長のエントナ・クラウズという男だ。
「相変わらずだらしないなぁ、何とかならないのかそのぼさぼさの頭は!いつも直せって言っているだろう?」
「そんな、世話焼きの奥さんみたいな言い方しないでくださいよ」
リリアにだらしないと言われてしまったクラウズは、たばこを口にくわえながらゆっくりとリリアに近づく。
クラウズに「世話焼きの奥さん」と言われてしまったリリアは怒りの表情と共に尻尾をピンと張り毛を逆立たせていた。
「う、うるさい!私には心に決めた“お方”がいるんだ!お前に奥さんなんていわれたくないわ!!」
「はい、すみませんでした、そうですね閣下はあの“お方”がお好きなんですよね?」
クラウズは意味ありげに壁の方向を見ながらリリアをいじる。
すると途端にリリアは怒りを収めたかと思うと、今度はクラウズに図星を突かれたことが恥ずかしかったのか、顔を赤らめながら明後日の方向を見ていた。
そのまましばらく二人の間に気まずい空気が漂う。
しかし、そんなことより大事な話があると思い出したリリアは早速話を切り出す。
「そ、それより、これをどう見る?」
「そうですね……、これは救助して王国で匿うことにしましょう、そうすればイスフェシア皇国に恩を売ることもできます。さらに彼が知っている帝国の情報も聞くことが出来るでしょう」
「それもそうだが……、彼を倒した帝国軍人のことだ」
「それでしたら、間違いなくその帝国軍人はレイブン中佐と呼ばれる男でしょう」
「ああ、なるほど!そういうことか、それならこうなることも納得だな」
「恐らくレイブンと呼ばれる男が彼を自分のテリトリーにおびき寄せ、包囲したうえ袋叩きにしたのでしょう。」
さらにオゼットはゴーレムのような巨大モンスターにも攻撃されたという情報もあり、いくら戦闘能力が高いとは言え、一人が集団に襲われてしまえばやられてしまうのも時間の問題だろう。
「話を戻そう、早速彼の救出作戦だが私は実行すべきだと考える。D大隊A中隊と戦闘偵察部第一大隊に行ってもらおう。移動についてだが、先遣隊は馬を、本隊は竜騎兵隊と共に向かう。それでいいかザックス、ジェイク」
「はっ!お任せください」
「問題ありません」
救出作戦の任務には王国陸軍ブラックベレーD大隊からA中隊と戦闘偵察部第一大隊が就く。
王国陸軍ブラックベレーというのは王国陸軍特殊部隊の一つで、ブラックベレーは国外での任務を主にしており、中でもD大隊は強襲偵察や破壊工作、敵地内基地防衛任務を得意とする部隊だ。
そしてこのD大隊は帝国国内に潜伏している王国情報収集部隊の護衛任務に就いている。
もう一つの戦闘偵察部第一大隊はKCIA(中央情報局)に所属する準軍事部隊で、彼らは武装した状態での偵察や情報提供者の防護と救出、政府や軍の要人の暗殺を任務としている。
「よし、まずは確実な情報を得てからだ、すぐに偵察部隊を向かわせろ!」
「「「了解!」」」
部隊がアーザノイルに向かってから数日後。
偵察に行った部隊は詳細な地図と情報を無事持って帰って来ていた。
イスフェシア皇国の勇者オゼットの収監された場所はアーザノイル城の地下牢獄で、そこにはなんと先の大戦で行方不明となり戦死と判断されていたコンダート王国陸海軍の将校たちと魔術研究の権威であるエドナ―博士も捕らえられていたという。
そのことは瞬く間に本国にいる陸軍参謀総長のヴァーテ・エレン大将の耳に届き、これを聞いたエレン大将は「すぐに救出作戦を開始せよ、我が国を守った英雄をすぐに助けに向かわせろ!追加の部隊を送ってもよい、何が何でも救出するんだ。悪いがイスフェシア皇国の勇者より大事だ」と作戦開始を下令した。
もちろん、イスフェシア皇国の勇者も大事な救出目標ではあるが、その同じ場所に先の大戦で活躍した自国の高級将校がいたとなれば、そちらを最優先にしなければならない。
エレン大将から直接作戦開始の命令を受けたリリア准将は、すぐに麾下部隊に出撃を命じた。
陸軍上層部は追加の部隊を送ろうとしたが、帝国の内陸部に部隊を送るのは容易ではない為断念した。




