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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
7章 セカンドスタート編
55/150

55話 私の旅はこれからも続く

 ハルフトを倒したことで結界は消え、村人達は洞窟にたどり着く。そして村長を見つけると拘束してギルドへと連行する。

 アステラは私を探して洞窟を探索すると途中で合流することが出来た。人形にされた人々は元の姿に戻って一緒に村へと帰る。その後、ハルフトを今回の事件の首謀者としてギルドに連行した。

 

 「本当にありがとうございました。」

 「お姉ちゃん、とってもかっこよかったよ!」


 ルリの母親とルリちゃんは私にお礼を言う。どうやら人形にされた時でも意識はあるらしく、私がハルフトと戦っているところは一部始終見ていたらしい。

 

 「はは、ちょっと恥ずかしいわね」

 「柊さんはこれからどうするのです? 旅に行かれるのですか?」

 「そうね、ちょっと休憩したらまたコンダート王国に向かって旅に出るわ」

 「でしたら途中まで一緒に行きませんか?」


 アステラは今回の件でもそうだが前々から引越しを考えており、これを機にコンダート王国にある街に引越しをしようと準備をしていたらしい。

 コンダート王国は他の国にはない技術があるらしく、何でも転移魔法を使わなくても国中を行き来することができる馬車?があるんだとか……。

 

 「一人で旅するよりも二人で旅をした方が楽しいわよね。これからよろしくね、アステラさん」

 「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 話が決まるとアステラは荷物を取ってくると言って自分の家に戻った。

 私も旅の準備をしようと食材を買いに行こうとすると村人達が私に集まってくる。


 「あんたがうちの娘を助けてくれたんだって?」

 「俺の彼女を助けてくれて本当にありがとうございます!」

 「お姉ちゃん、ありがとう!」


 村人達からたくさんの感謝をされると、なんだが照れくさくなる。今まではイスフェシア皇国の女皇として部屋の中で仕事ばかりしていた所為か、こうして皆から直接感謝されるは慣れていないのだ。

 女皇としての仕事を思い出すとふと考えてしまう。今イスフェシア皇国はどうなっているのだろう……イスフェシア城の皆や翼は無事なんだろうか?

 

 早くコンダート王国の王に会って協力してもられるように話をしなければならない。その為にも何としてでもコンダート王国にたどり着かなければ……。

 

 「柊さん、お待たせしました」


 考えごとをしている間にアステラが馬車に乗って戻ってきた。この馬車はギルドの人達が今回の事件の解決に協力したお礼だと言ってもらったらしい。

 

 「後よろしければこちらをどうぞ」

 

 アステラは私に服を渡す。今までこのドレスで旅をしたり今回のハルフトとの戦いとかでボロボロになってしまったから服を買おうと思っていた。

 

 「ありがとう、アステラさん」

 「では行きましょうか、コンダート王国に!」

 

 アステラは馬車を走らせると村人達は私達に手を振って見送ってくれた。





 一方、イスフェシア城の地下牢獄ではモーレアとウインチェルが捕まっている。罪状はマリー・イスフェシア女皇に危害を加えようとした反逆罪とされている。

 本来ならば死刑判決を下されるところをマリーが「大切な友人を死なせたくない」と言って無期懲役を言い渡す。本人曰く今は反省してまた国のために力を貸してほしいとのことだ。

 牢獄ではウインチェルが作った結界と魔封じの腕輪により魔法と能力の発動が出来なく、さらにモーレアには鬼人としての力を発揮できないように改良された腕輪がつけられている。

 

 「腹減った~。飯はまだかよ」

 

 モーレアはスプーンで鉄格子を叩きながら食事か運んでくるのを待っていた。カンッカーンカンッとよくわからないリズムで叩く音にウインチェルは苛立ちを覚える。


 「モーレアさん、いい加減にお腹が空くたびにスプーンで叩くのをやめてくださいよ」

 「え~、だってよぉ腹減ってしょうがないんだもん。腹減ったー、はーらーが!減った~!!」

 「そんな子どもみたいに言っても来るわけ……」


 モーレアとウインチェルが口論している間に一人の女性が二人の食事を運んできた。


 「お待たせ、今日の食事よ。それと分かったからその鉄格子を叩くのやめなさい」

 「よぉアルメリア、調子はどうよ?」


 アルメリア・ラムケット、彼女は今までマリー女皇に仕えていた魔導医師で今回のイスフェシア襲撃の際にデスニア帝国に寝返った人物だ。

 

 「アルメリアさん、私達にとってあなたは大切な仲間だと思っていたのに……何故裏切ったのですか?」

「前にも言ったけど、裏切るも何も私は最初からマリー様の忠実な僕よ。私はマリー様の指示に従った、それだけよ」

「今のマリー様が操られているのに?」


 ウインチェルはアルメリアに睨め付ける。確かにマリー様が操られている確証はないがあの時、イスフェシア城に侵入したゼルンが使った武器で仲間が傷ついているのをただ見ているだけなんてあの人はしない。本当のマリー様なら仲間が傷ついたのをみたら直ぐ魔法で手当てをするような優しい人なのだ。


「まぁよ。今は大人しくしているが、もしこの牢獄から出た時は一発殴られる覚悟をしてもらうぜ」

「ええ、ここから出られるのならね」


 モーレアはアルメリアが持って来たパンを食べながらスプーンでカーンッカンカンと音を立てて挑発する。

 その音を聞いたアルメリアは一瞬口元がにやけたように見えたが直ぐに後ろを振り向いて牢獄から立ち去って行った。


「あの人は何を考えているのかわかりませんね」

「何、昔も今もアルメリアは陛下の忠実な僕だってことだろう。今は時を待つしかないね」


 モーレアはパンを食べ終わった後、横になって昼寝を始める。それを見たウインチェルは呆れて何も言えなくなってしまった。

 

 

 

 場所は変わってイスフェシア城の食堂、ミーアとラルマはアルメリアに呼ばれてこの場所にやって来た。ミーアは仲間達を裏切って牢獄に閉じ込めたことを根に持っており、不機嫌な態度でアルメリアに要件を聞く。


 「あーちゃん何の用? あたし達とっても忙しいんだけど?」

 「二人にお願いがあってね、この袋をガイルさんに渡してほしいのよ」


 アルメリアは何かが入った紙袋をラルマに渡す。


 「これ何が入っているんです?」

 「料理の材料よ。前から頼まれたのだけれど最近忙しくてなかなか渡せなくて、私の代わりにガイルさんに渡してくれる?」

 「忙しいのを理由にして本当は面倒なだけじゃないの?」

 「ふーん、せっかくお願いを聞いてくれたらガイルさんにお願いして二人にストロベリーパフェをご馳走しようと思ったのになー」

 

 ストロベリーパフェとはガイルが経営している店“ネバーランド”で売っているデザートでミーアの好物でもある。それを聞いてミーアの耳がピクっと反応する。


 「仕方がないからラーシャちゃんに頼もうかしら、あの子なら素直に行ってくれると思うからあの子にストロベリーパフェをご馳走することにするわね」

 「う~~わかったよぉ、行ってくるもん」

 「ではアルメリアさん行ってきます」

 「二人共気を付けてね、夕方までには戻ってくるのよ~」


 ミーアは頬を膨らませてラルマと一緒に城を出てネバーランドへと向かった。

 

 

 

 二人は商店街を歩いて目的地へとたどり着く、店の扉を開けると「いらっしゃいませ~」とスキュラの亜人のウェイトレスが席に案内しようとするとガイルが二人に気づいて近づいてきた。


 「あら、ミーアちゃんにラルマ君いらっしゃい。待ってたわよ~」

 「ガっちゃん、こんにちは!」

 「こんにちは」


 二人は挨拶した後、ガイルにアルメリアから預かった紙袋を渡した。どうやらガイルは予めにアルメリアから頼まれた品を二人に持っていかせることを伝えていたようだ。

 紙袋を開けると小麦粉と小さいワインボトルと手紙が入っていた、手紙を読むとガイルは真剣な顔をしたが、ふとミーア達を見ると我に返って「ちょっとそこの席で待っててちょうだい」と言い厨房へ向かった。

 しばらくするとガイルはストロベリーパフェを持って二人に現れる。


 「お待たせ~、はい二人にご褒美よ!」

 「わーい! ありがとう、ガっちゃん!」

 「ありがとうございます」

 「こちらこそ、わざわざ渡しに来てくれてありがとうね。本当ならアルメリアちゃんから貰いに行こうと思っていたのだけどお店が忙しくて行けなかったのよ~」


 二人はストロベリーパフェを頬張ると「おいしい!」と笑顔になる。その二人の笑顔を見た客と店員は「尊い」と言い心が和むのであった。


 二人がストロベリーパフェを食べている中、ガイルは事務所でアルメリアからの手紙を読み返すとその手紙を燃やしてゴミ箱に捨てる。そして彼は壁に置いてある剣を見つめる、その剣はかつて自分が騎士団隊長として使っていた相棒とも呼べる魔剣だ。


「もう一度あたしは立ち上がらなきゃいけないのね……今度こそ、あのお方を救ってみせるわ」


 もうこれ以上帝国の好きにはさせない、元イスフェシア皇国騎士団隊長ガイル・ディクソンとして悪を断ち切ってみせる。彼は魔剣を手に持って決意を固めるのであった。


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