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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
7章 セカンドスタート編
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54話 人それぞれの形

 村長を追いかけて森の中に入ると結界の影響で村人達は村長を見失い、バラバラに散ってしまう。

 私とアステラは幻想の宝玉で結界の影響を受けずに村長を追いかけると洞窟にたどり着いた、どうやら村長はこの中に入ったらしい。

 アステラは弓を構えて慎重に前進する。


 「暗いわね、私の魔法で明かりをつけるわ」

 「ダメです、そんなことしたら敵に私達の場所が特定されてしまいます。ここは私に任せて」


 アステラは目を閉じて集中する、耳を澄ませ感覚を研ぎ澄ますと二人以外の足音が聞こえる。

 

 「そこ!!」


 矢を放つと奥から悲鳴が聞こえ、そこまで走ると足を射抜かれた村長が倒れていた。


 「お主ら……よくもわしの計画を台無しにしてくれたな」

 「村長さん、早く神隠しにあった人々を解放しなさい。そうすれば今ならギルドに突き出す程度で済むわよ」

 「わかった、言うことを聞く…………と思ったか!たわけめ!!」


 村長は壁にあるスイッチを起動させると私は落し穴に落ちる。


 「柊さん!」


 アステラは手を伸ばして私の手を掴もうとするが届かず私は闇の奥へと落ちて行った。




 ここはどこだろう? 暗闇で何も見えない、敵がいるかどうか幻想の宝玉を使って索敵を開始する。近くに魔力は感じない……とりあえず敵はいないみたいね。

 私は魔法『ムーンライト・スフィア』を発動し周囲を明るくする。どうやら奥まで道は続いていて前に進むしかなさそう。

 

 しばらく前に進むと明るい場所にたどり着いた。辺りを見渡すとそこにはかなりの数の人形が置いてあり、思わずびっくりした。なんて趣味の悪い空間なのだろう。

 

 「それにしてもこの人形達、クオリティが高いわね」


 遠くからみたら本物の人間に見えてしまうレベルのクオリティだ。いったい誰が何のためにこの洞窟に人形を置いたのだろう? 考える時間が欲しいが今は他の道を探してアステラと合流しよう。

 

私は人形達を後にして他に道がないかを探す。するととても見覚えがある少女の姿をした人形を発見した、

最初にこの村で会った少女……ルリちゃんに。


 「何これ、どういうことなの?」


 そしてもっと周りを見渡すとルリの母親によく似た人形、パン屋でバターロールとサンドイッチを買った時に話をした女性店員の姿をした人形がある。まさか神隠しにあった人達は皆……。


 「どうだい、僕の芸術的作品達を見た感想は?」

 「誰!?」


 後ろを振り向くと一人の男が立っている。今まで幻想の宝玉を使って索敵を続けていたのに反応しなかったなんて。


 「僕はこの人形達を作ったハルフト・マルシャと申します」

 「人形を作った? 村人達を人形に変えた(・・・・・・)じゃなくて?」

 「ほう、君は余所者だと思っていたが村人達をよくご存知で」

 「村人達を人形に変えてどうするつもり!?」

 「なに、この人形は商品だ。商品は売るに限るだろう? 最近帝国の貴族達がこの商品達を欲しがっていてね。生産が間に合わないからあの村の村長に大金と引き換えに村の女性達を人形にして良いって合意を貰ったんだよ、予約も殺到して大忙しなのさ」


 この変態は何を言っているのか理解できない……いや理解など出来るわけがない。怒りが全身にこみ上げてくる。


 「さて話はここまでだ、君も商品になってもらうよ。君はイスフェシア皇国の女皇とよく似ているからとても高く売れそうだ」

 「もう黙りなさいよ、あんた」


 幻想の宝玉を解放して背中から翼を生やす。その後、魔法で光の槍をハルフトに投げるがハルフトは人形に糸をくっ付けて引っ張り盾にする。思わず私は魔法を解除する。


 「卑怯な! 商品じゃなかったの!?」

 「商品だよ、しかし替えなら別の国に行けばいくらでもある。君を人形に変えたら次はコンダート王国の娘共を商品化しようかな、あの国は美人が多いと聞くから楽しみだよ」

 

 迂闊に攻撃すれば人形を盾にされてしまう。もし人形を破壊してしまったらその人形は元の姿に戻れるのだろうか? おそらく無理だ。人形を破壊することはその人達を殺すに等しい。ならどうやってこいつを倒す?

 

 「幻想の宝玉よ、私を勝利に導いて!」

 「無駄だよ、君は僕に勝てない!」


 ハルフトは人形を次々と動かして攻撃を仕掛けてくる。上空に羽ばたいて攻撃を回避するがこのままでは埒が明かない、まだ試していなかったけどこの幻想の宝玉の力を引き出す!

 背中の翼が強く輝くと周囲に薄霧が発生する。


 「目くらましのつもりか? 君の位置はバレバレなんだよ!」


 人形が持っている包丁が真理を刺す、しかし刺さったと思われた真理の姿は消える。

 

 「何が起きた?」


 ハルフトは辺りを見渡すが真理の姿は見当たらない。そして次の瞬間ハルフトの目の前にナイフが現れて太股に刺さる。


 「ぎゃあああああああ」

 

 真理は上空で翼から粒子を大量に放出し薄霧を作っている。これは彼女が持つペンダントの能力だ。

 幻想の宝玉は能力を解放すると周囲にナノマシンを展開し、ナノマシンを体内に含ませることで幻覚を見せたり幻聴を聞かせる、相手の脳を麻痺させて五感を操作するといった事ができる。

 そしてこれらを応用すれば相手に本物と変わらない幻を見せることができ、幻であっても触覚を操作して本物と変わらない痛覚や影響を与えることができる。


例えば幻で作ったナイフを相手に刺した瞬間に触覚を操作すれば相手はナイフが刺さったと錯覚して痛みを感じる、そして刺した部分に血を流すという幻覚を見せればその相手は本当に血が出てしまっていると錯覚してしまうのである。


この能力を一度でも受けてしまえば最後、術者が解除するまで相手は永遠に本物に近い幻と痛みを味わうことになる。

 

 「た、助けてくれ!!」

 

 ハルフトは人形を盾にしながら逃げる。上空から無数の光の槍が降ってくるが槍は人形をすり抜けてハルフトに命中し続ける。次第にハルフトは動きが鈍くなり力尽きる。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 ハルフトが倒れたことで私は我に返る。この能力は下手をすると相手を殺してしまうから加減を間違えないようにしなければならない。

 人形達が段々と人間に戻って行く、どうやらあの変態の能力が解除されたみたいね。

私はこの男を拘束した後、奥へと続く道を見つけて先に進んだ。


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