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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
1章 異世界へGO編
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5話 面影

 オゼットは目の前にいる女皇に向かって問う。


 「真理!真理なんだろ!!俺だ、翼だ!!」

 「無礼者!!!この方を誰と心得ている!!この方こそ、イスフェシア皇国第三女皇、マリー・イスフェシアその人であるぞ!!」


 マリー女皇の隣にいる、二本の角が生えている鬼人の女性はオゼットに喝をいれる。ミーアもオゼットに説明する


 「違うよ、おにいちゃん。あの方はマリー様だよ。」


 周りの皆は口をそろえて言っているが間違いない、この人は真理だ。どういう訳か俺を知らないみたいだ。


 「失礼ですが、私は貴方とはどこかでお会いした事が?」


 マリー女皇の一言で、オゼットの心の中で何かが崩れる音がし、それと同時に膝を落とす。ミーアがオゼットに近づいて心配をする。


 「こいつが、ミーアが召喚したっていう勇者様か?何か頼りないな」

 「もーちゃん!そんな事ないよ!おにいちゃんは強いよ」

 「へぇ……何なら、一戦交えるか?」

 「やめなよ。今、IMSPが壊れて、おにいちゃんは本来の能力が発揮できないの。だからこれから私達はうーちゃんの家に行こうと思っているの」

 「ウインチェルの家にか?ミーア一人でも充分だが、何かあったら大変だからな……よし、ラルマ、お前もついてってやれ」


 二本角の女性はマリー女皇の右隣りにいる少年に指をさして言う。


 「ぼ、僕も?それはいいけど、モーレアさん一人だと何かあったら大変だよ?」

 「大丈夫!俺一人で充分だぜ!!千人来たって負けねぇからよ。後わりぃけど、帰り際にガイルの奴にも会ってくれねぇか?“陛下が帰ってきた”と伝えて欲しいんだ」

 「わかったよ。けど無茶をしないでね?絶対だよ」


 ラルマと言われる少年が、二本角の女性を心配すると女性は少し照れくさそうに顔をかく。一方、マリーの一言でメンタルをやられたオゼットもようやく我に返る。どうやら女皇の話を聞く前に、この端末を直しに行くらしい。少年が近づき挨拶をする。


 「初めまして、僕はラルマ・ポータンと言います。よろしくお願いします。」

 「おお、そういやぁまだ自己紹介をしてなかったな。俺はモーレア・ミスト、イスフェシア皇国の騎士団隊長だ」

 「俺はオゼットです、よろしくお願いします」


 モーレアは少し疑問を抱いた様でオゼットに質問をする。


 「さっき『翼』とか言ってなかったか?」

 「それは前にいた世界での本名ですが、今はオゼットとお呼びください」

 「そうか、これからよろしくな!」


 自己紹介も終わり、ミーアとラルマは準備をして、マリーに挨拶をする。


 「「それではマリー様、行ってきます!!」」

 「はい、いってらっしゃい。気を付けて行くのですよ?」

 「「はーい!」」


 遠くから見るとまるで、母親とこれから外に遊びに行く子ども達の会話みたいだ。





 イスフェシア城から出て、目的地を尋ねると、どうやら一旦国を出て森に入った奥に家があるらしく、そこが目的地だそうだ。ミーアとラルマの二人組みは楽しそう歩く。

 森の中に入り、ミーア達は呟いた。


 「うーちゃん、元気かなぁ」

 「大丈夫だよ!この前、お家に遊びに行ったらお菓子くれたよ」

 「あーずるい!僕もお菓子欲しい!」


 これから会いにいく“うーちゃん”とは何者なのか?この端末を作るほどの技術者だ。かなりの有名人なのだろう。オゼットはミーア達に聞いてみることにした。


 「ねえ、うーちゃんってどんな人なの?」

 「うーちゃんはね、私達のお師匠さんなんだよ!魔法の研究をしていて、とっても偉い人なの、でもあまり人と喋るのが恥ずかしいらしくて、いつもは家にずっといるの」


 オゼットは思った。ミーアの実力を全て見た訳ではないが、ギルド施設にいた時、レバンはミーアの名前を聞くと、皇国最年少の大召喚士と言っていた。そしてモンスターを召喚し、レバンを囲んだ訳だが、俺がやっていたファンタジー・ワールドでは、低級モンスターを召喚するのに数秒の時間を必要とする。しかし、ミーアは詠唱時間無しで複数体モンスターを呼び出した。普通ならスキルやアイテムでも使わない限り、不可能な事だ。その召喚法を教えた『うーちゃん』という人はかなり腕が立つ魔術師に違いない。


 「着いたよ。ここがうーちゃんの家」

 

 気が付いたら森の奥に付き、そこには大きい屋敷がある。周りにはモンスターを近づけさせない為か、魔除けの札が貼ってある。ミーアは屋敷の扉に近づき、ノックする。


 「こんにちはー!ミーアだよ!」


 しばらくして扉が開き、一人の少女が出てきた。大人しそうな雰囲気を持ち眼鏡をかけている。

 

 「こんにちは、ミーアちゃん、それにラルマ君も。……そちらの人は?」

 「初めまして、オゼットです」

 「初めまして、私はウインチェル・トードです。さて、ミーアちゃん、今日は何しに来たのかな?」


 ミーアがオゼットの袖を引っ張る。オゼットはウインチェルに壊れた端末を見せる。


 「……なるほど、彼が勇者様って訳ね。IMSPが壊れてますね……ああ、なるほど」

 「目が覚めた時には、画面が割れてあって、電源を入れても、電源が付かなかったんですよ。ところで、この端末は何なんですか?」

 「その話をすると長くなるから中に入って、お茶でも飲みながら話しましょう」


 ウインチェルは扉を開け、部屋まで案内する。

 オゼット達はウインチェルに案内された部屋の椅子に座る様に言われ、彼女は紅茶淹れ、ミーア達用のジュースを一緒に持ってテーブルに置く。


 「さて、その端末が何なのかって話でしたね」


 ウインチェルはコホンっと咳払いする。


 「その端末はIMSP、Infinity Magic System Phoneは特殊な2つの魔石を組み込むことによって、適合した人の魔力を無尽蔵にする事ができるの。ただ、あなたの世界の人間達は魔力を持っていない為、そもそも魔法は使えない。そこで私はある人と協力し、あなたがやっていたゲームのアカウントデータを手に入れてそのデータを魔石に入れる、端末が起動した際に特殊な空間を展開、その魔石に入れたデータは魔力を使って具現化し適合者に投影させる。すると適合者はそのキャラクターの能力、武器と魔術、アイテムを使う事ができるというわけです」


 ウインチェルの話はまるで呪文の詠唱の様に聞こえてくる。ミーアとラルマは話についていけなくなって二人で絵を描き始める。

 

 「そして、ミーアがあなたを召喚する際に術式を弄って、あなたがこの世界に召喚された時にこのIMSPがあなたの手元に転移するように設定をしたのですが、ミーアが召喚の反動に耐え切れず、術式が中途半端に崩壊してしまい、あなたは別の場所に召喚され、IMSPは転移の衝撃に耐えられなかった…という訳ですね」


 「どういう原理で動いているのかは少しだけ解かりましたが質問を、何故あなたは私がやっていたゲームを知っているのですか?それにこの端末の形は俺達がいた世界で使われているスマホですよね?」


 「『すまほ』っていうのですね。それはある人がくれたものなの、その人はあなたやっていたゲームのデータを魔石に封じ込めて、私に作って欲しいと頼んできたんですよ」


 ある人?俺がファンタジー・ワールドをやっている事を知っている人物と言えば真理しか知らないはずだが……。


 「そのある人とは誰なのでしょうか?」

 「あなたも会っていると思いますが、フェリシアさんです」


 フェリシアの名を聞くと一瞬記憶がフラッシュバックする、この世界に来る前に白い空間で出会ったあのクソ女神の事か?


 「フェリシア様は私にアキバに連れていってくれる代わりに、このIMSPを作って欲しいと頼んできました。ああ、これでまたあの素晴らしい本や物を見る事ができるのですね」

 「『アキバ』って秋葉原の事? しかも『また』だって!?」

 

 あの女神、自分は監視しかしないから介入はしないとか言っている割には滅茶苦茶介入しているじゃねえか!!


 「えっと……よく秋葉原に行かれるのですか?」

 「ええ!あそこには私達の世界にはない“どうじんし”と呼ばれる本があってそれがとっても面白いの!“ふぃぎゅあ”と言われる人形もとっても可愛いし、癒されるわ!この格好でアキバにいっても“こすぷれ”とか言われて、問題なく歩けるし、あなたの世界は平和でとても良い文明ね!!」


 ウインチェルは目を輝かせて語る。絵を描いていたミーアとラルマは外に遊びに行く。


 「うーちゃん、早くそれ直してね、あたし達、外に遊びに行くから。行こう、ラルマくん。」

 「うん」

 「……そうだったわね、では早速その端末の修理に取り掛かるから待っていてください」


 壊れた端末を持ってウインチェルは別の部屋に移動する。扉に飾ってある看板には研究室と書いてある。オゼットは疲れが溜まっていたせいか、睡魔が襲ってくる。オゼットは倒れるように眠りについた。


 

 屋敷の少し離れたところで、声が聞こえる。


 「目的地到着、これより作戦を実行する」

 「さーて、魔女狩りの始まりだ!行くぜ、野郎共!」


 男達はゆっくりと屋敷に近づき、外で遊んでいるミーア達を襲う。


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