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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
7章 セカンドスタート編
48/150

48話 仮面の記憶(前編)


 暗闇の中から一人の少女がレイブンの前に姿を見せた。これは夢だとレイブンは思う。目の前にいる少女は微笑みながらレイブンに近づく。


 「兄貴」

 「亜紀……」


 時は(さかのぼ)り一年前、黒井圭一は両親を失い、亜紀と一緒に生活をしていた。

 亜紀は腹違いの妹だが俺にとってはそんな事は関係ない、かけがえのない家族だ。亜紀のために俺は必死に仕事をこなし稼いだ金で暮らしていた。

そんなある日、あの事件が起きたんだ……。

 

 「兄貴~」

 「ん?」

 「今日は何の日か覚えてる?」

 「ん~、何だっけな~」

 「ひどーい、今日はあたしの誕生日なのに!」

 「冗談だ。亜紀、誕生日おめでとう!」

 

 亜紀は今年で18歳になる、今日は仕事も有給休暇を取って亜紀と一緒に過ごす予定だ。

 

 「亜紀は誕生日プレゼント何がいい?」

 「あたしはもう大人なんだからプレゼントはいらないよ」

 「そうか、せっかく亜紀が好きなベリーベリーケーキを予約していたんだが……いらないか」

 「え、マジ!?」


 ベリーベリーケーキとは、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーを生クリームと一緒に混ぜケーキにナッペ(ナッペとはケーキなどをデコレーションするときにクリームを塗る作業)したフルーツケーキである。

 俺はスマホを取り出してケーキ屋に電話しようとすると亜紀が全力で止める。「冗談だ」と言うと亜紀はポカポカと背中を叩く。

 

 「じゃあ、今日あたし料理作るからさ、兄貴はケーキ取って来てよ」

 「いいのか? 今日は誕生日だから好きなモンを出前するぜ」

 「いいよ、あたしが料理を作りたい気分なんだ。ベリーベリーケーキよろしくね!」


 そう言うと亜紀は夕飯の材料を買うため商店街に向かう。俺はバイクでケーキ屋に向かった。

 

 

 

 商店街の本屋で亜紀は今日の夕飯を何にしようかを考えながら料理本を見る。麻婆豆腐や青椒肉絲などの中華料理でもいいけど、ベリーベリーケーキも一緒に食べると考えるなら西洋料理の方がいいかな。

 

 「よし、今日はグラタンとロールキャベツ、テリーヌとか作るぞ!」


 商店街で材料を選びレジに並ぶと後ろから声がかけられた。振り向くと金髪の少女が後ろで並んでいた。

 彼女は北条優奈、同じ高校の同級生でよく()るむ友人だ。


 「よ、亜紀」

 「お、優奈じゃん。優奈も夕飯の買い物?」

 「まぁね、今日バイトはオフだから家でのんびりしようと思ってんの。亜紀は? 何か随分と買い込むじゃん」

 「今日はあたしの誕生日でね、それで兄貴にお礼をする為に料理するんよ」

 「ん? 誕生日って普通、誕生日の人が祝ってもらうモンじゃね?」

 「そうだけど、いつも兄貴は私の為に生活費を稼いでいるからさ、あたしもバイトで稼いでるけど全然足りないし…………だからそのお礼もしたくって」

 

 亜紀がそう言うと優奈は亜紀の背中を叩いて笑う。


 「いいね~いい話だわ。マジ兄妹愛ってやつ?」

 「は? そんなんじゃないし」

 「いいじゃん。亜紀は高校でも兄の話してくるし、みんな亜紀の事はブラコン認定してるから大丈夫!」

 「なっ」


 優奈が茶化してくるのに対して反論しようとする間にレジの順番が回ってくる。会計を済ませて優奈と一緒に店を出る。途中まで帰り道が同じなので一緒に帰ることした。

 商店街を抜けるとゲーセンの中から5人の男達が苛立って出てきた。


 「チクショー、マジむかつくぜ」

 「相手の攻撃をジャンプで避けたら追撃してコンボでHP全部持っていくとかあり得んわ」

 「ストレス発散する為に行って逆にストレス溜まるとか……なんかスッキリしてぇな~」



 男達が会話している中、一人が亜紀達を見る。


 「お、あの二人可愛くね?」

 「確かに、ちょっと体の挨拶でもするか」


 男達は亜紀達に近づいて声を掛ける。亜紀と優奈は男達の声を無視して歩くと男の一人が優奈の肩を掴んで動きを止める。

 

 「ちょっと、やめてください」

 「いいじゃんか、俺達とお茶でもしようぜ。奢るからさ」

 

 男達に囲まれて退路を塞がれてしまう。亜紀は抵抗をするが男に拘束され商店街の裏側に連れていかれそうになる。そこに偶然に2人の警官がその光景を目撃する。


 「お前達、何をしている!」

 「やべぇ、マッポだ! 逃げるぞ散らばれ!!」

 「おう!」


 男達は全力で商店街を出てそれぞれの方向に散らばって逃げた。警官の1人は逃げた男の1人を追っていく。もう一人の警官は亜紀と優奈に近づいて身の心配をする。


 「君達、大丈夫かい?」

 「は、はい……ありがとうございます」

 「最近ここの商店街で悪ガキどもが悪さしているって話を聞いてパトロールしていたら案の定だったよ。君達も気を付けて帰りなさい」

 「はい、本当にありがとうございました」


 警官にお礼を言い二人は家に帰る。途中で優奈と別れ亜紀は家に帰ると力が一気に抜けてその場で膝を落とす。それを見た圭一は心配して亜紀に何があったかを聞く。亜紀の話を聞いた後、圭一は優しく亜紀を抱きしめた。




 時は少し経過して夕方、亜紀は元気を取り戻して料理を作る。最初は無理しない方がいいと言ったが、亜紀は「今日一日を無駄にしたくないし、楽しい一日にしたい」と言って頑張って料理を作る。

 約1時間後、亜紀からご飯が出来たよと呼ばれテーブルを見るとグラタン、ロールキャベツ、野菜のテリーヌ、カボチャのポタージュが並んでいた。


 「ふっふっふ、どうだ兄貴びっくりしたっしょ? これがあたしのフランス料理よ!」

 「お~凄いな、美味しそうだ」

 「さぁ、召し上がれ!」


 まずは野菜のテリーヌ、ゼラチンの中にはオクラとアスパラと人参、ヤングコーンが入っていてゼラチンを食べるとコンソメ味がした。

 

 「お~うめえ!」

 「でしょ!」

 「お前、才能あるじゃん。これならお前が嫁に行っても問題ないな」

 「な、何言ってんだよ」


 亜紀は顔を赤くして圭一の背中を叩く。二人で美味しく料理を食べてその後、冷蔵庫から圭一が買ってきたベリーベリーケーキを取り出してテーブルに並べる。


 「ロウソクつけるか」

 「いいよ面倒だし、早く食べよ!」

 「じゃあ、食べる前に…………亜紀、誕生日おめでとう!!」

 「うん、ありがと兄貴!」

 

 二人で楽しくベリーベリーケーキを食べて楽しく会話をする。

 



 しばらくして食事を済ませて圭一は亜紀と一緒に台所で皿洗いをする。


 「どうよ兄貴、あたしが作ったフランス料理は」

 「おう、めちゃ美味しかったわ。ありがとうな亜紀」


 圭一は亜紀の頭をなでると亜紀は頬を赤くする。


 「でも一つだけ言わせてくれ」

 「な、何?」

 「グラタンとテリーヌ、ポタージュはフランス料理だが、ロールキャベツはトルコ料理だぞ」

 「…………マジで」


 圭一の一言で亜紀は我に返る。二人は食器を片付けた後、明日の準備をして寝るのであった。



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