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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
6章 サプライズウォー編
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44話 終焉のカウントダウン(前編)

 時は流れ翌日、この日の天気は青空が見えなく曇りでどんよりとしていた。

 メイドから陛下が呼んでいると伝えられ王の玉座に向かうと真理とハーゲン皇帝が話をしている。挨拶してから話を伺うと先日に進軍させていた騎士団が帝国兵に見つかり交戦中であることが分かった。予定通りに後退しながら帝国兵をテレン聖教皇国に誘導しようとしている。

 真理は連絡石でウインチェルに状況を伝え、イスフェシアの騎士団と魔術師達をカタカリ大草原に配置するように指示する。その後、真理はモーレア達と共にイスフェシア皇国に戻る為、馬車へと向かう。


 「イスフェシアの勇者よ。以前に我らに使った氷の魔法を頼めるか?」

 「わかりました。」

 「気を付けてね」

 「ああ」


 オゼットは王の玉座から離れ、騎士団と帝国兵が交戦しているガヘナという場所に向かった。




 一方、ガヘナでは帝国兵が優勢でテレンの騎士団を追い込んでいる。この帝国兵を指揮しているブリガン・タヤスカはこの状況を見て笑いが止まらずにいる。


 「はははははは、テレンの兵は雑魚しかおらんのか。何故今まで攻めなかったのか不思議でしかならないわ!!」

 「中将殿、このまま進軍なさるつもりですか?」

 「無論だとも中佐!!このチャンスを逃さない訳がない。このまま進軍だ!テレンを滅ぼした暁には私がテレン聖教皇国の王になっても良いと陛下が仰っていたのだ!!私が……王に!!」


 なるほど、この男がどうしてテレンと戦争したがっていた理由はそういうことか。

しかし一見こちらが優勢に思える状況だが、俺にはわざと後退しているように思える。もしそうだとすればこのまま進軍すれば罠にハマるだろう。


 「お言葉ですが中将殿、テレンにはイスフェシア皇国と同盟している。このまま進軍すればイスフェシアの兵と合流して挟み撃ちになる可能性があるのでは?」

 「関係ない、イスフェシア皇国も支配すればよかろう。情報でイスフェシア皇国の兵は3万程度しかいないという話ではないか!お前達の無能部隊では無理だったろうが私の軍勢ならすぐにでも陛下にイスフェシア皇国を献上してみせよう」

 「イスフェシア皇国を舐めない方がいいですよ。中将殿」

 「貴様こそ舐めた口を利くでないわ中佐。あのイスフェシアの勇者とかいう男に関する資料を見たが、あんなデタラメな資料を信じる者なぞ一人もおらん」


 まぁ確かに普通の人間からすればたった一人で6万の兵を氷漬けにしたという本当の話でもそう信じる人はいないか。このまま話をしていても埒が明かない。

 レイブンは席を離れて連絡石を取り出し、ジャックに通話を始める。


 「俺だ。今の状況は?」

 「こちらジャック、テレンの騎士と交戦していますが手ごたえを感じませんね。まるで本気で戦う気がないような……一応、伝令兵から「このまま進軍せよ」と命令は出ているのですがいかがなさいますか?」

 「やはりお前もそう思うか、ブリガンの阿呆はこのまま進軍してテレンを自分の物にしようとしているらしい」

 「そうですか、あの野心家のしそうなことですね」

 「ああまったくだ、付き合いきれん。ジャックは一度戦線から離脱しルアールと合流してくれ」

 「わかりました」


 席に戻るとブリガンは葉巻を吸いながら伝令兵に前進せよと命じる。伝令兵が馬に乗って進軍している兵達のもとに向かおうとするとピタッと止まる。ブリガンが伝令兵にどうかしたのかと尋ねると伝令兵は空に指をさす。空には巨大な魔法陣が展開されてどんどん魔法陣は広がっていく。

 

 「な、なんだあれは!? あんな魔法陣今までなかったではないか!」

 「おそらく雲で見えていなかっただけですね……と言うより雲の上で魔法陣を展開して詠唱をしていたのが正しいかと」

 「冷静に思考している場合か! 一体何なんだあの魔法は?」

 「資料に書いてあったじゃないですか。そして私はこうも言いましたよね「イスフェシア皇国を舐めない方がいいですよ」と」

 

 ブリガンが騒ぐ中、魔法陣から巨大な氷の塊が地面に落下する。資料の情報では発動までに約12分は掛かっていたはずだが僅か3分で発動している。これはまずいな、帝国兵が全員凍結してしまえばせっかくの作戦が台無しになりブリガンの責任問題は免れないだろう。

まぁ、ここまでは予定通り(・・・・)なんですがね。


 巨大な氷の塊は地面に激突し、塊が破裂すると激しい氷風がデスニアの兵士達を襲う。一瞬にしてテレンの騎士団を追撃していた第一部隊、第二部隊、第三部隊が凍結した。第四部隊の兵士達はブリガンがいる拠点の守備をしていた為、たまたま氷結から逃れることができたのだ。

しかし、仲間達が氷漬けにされた光景を見て恐怖し、何人かは逃走を始める。

 

 「おいお前ら!敵前逃亡は重罪だぞ!!」


 ブリガンが激怒する中でレイブンは大鎌を召喚し肩に担ぐとブリガンに近づく。


 「さて中将殿、この戦争は帝国軍の敗北になりましたが……覚悟は出来ていますか?」

 「な、何を言っているんだ。私は……まだ…………負けて……いない」


 戦意喪失しながらもブリガンは必死にレイブンから距離を取る。


 「いやいやもうあなたの負けですよ?約9万の兵は氷漬けにされてもう戦うことはできないし、もし帝国兵が一人でも捕虜にされて我々の情報が流失するようなことがあればどう責任を取るつもりですか?そもそも責任が取れるレベルではありませんよね?これは重罪だ、帝国を脅かした愚者には“死”をもって償うしかないよなぁ!」


 ゆっくりと近づいてくるレイブンに対してブリガンは逃げ回るがついに壁際に追い込まれてしまう。


 「やややや、やめろ!!うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 悲鳴を上げながらブリガンは両手に火球を召喚してレイブンにぶつけて抵抗するがそれも虚しく、大鎌はブリガンの腹を切り裂く。

 切り裂かれた部分から大量の血が噴き出し、その血がレイブンに降りかかる。

 ドサッと死体が倒れる音と同時に連絡石でゼルンに連絡する。


 「……博士、たった今ブリガン中将は死亡した。これより指揮は俺が取る。“例の兵器”を召喚してくれ」

 「わかりました。10分少々お待ちください」

 「伝令、第四部隊隊長に伝えろ。『作戦変更、第四部隊は凍結した第三部隊の救出を優先とする』そしてこれを使え」


 レイブンは伝令兵に魔法石を渡す。伝令兵がこれは何かと尋ねるとこれはゼルンが作った“どんな氷も溶かす魔法“が込められている魔法石らしい。伝令兵は急いで第四部隊の隊長と連携を取りに行く。

ブリガンが座っていた椅子に座って時を待つ。


 さぁ本当の戦いはこれからだ、イスフェシアの勇者よ。




 一方、ガヘナの東部ではテレンの騎士団と合流したオゼットが究極呪文(アルティメットスペル)『アブソリュート・ゼロ』を発動しデスニアの兵士達を凍結した。

 前回のテレンとの戦争の時はイスフェシアの魔術師達に魔力を共有するスキル『マジックリンク』や魔術師達の魔法をテレンの騎士団に当てる時に使った空間魔法『ディメンション・スペース』を常時発動していた為、詠唱時間が長かったのだが今回はそれが無いので詠唱に集中出来ていた。

 

 テレンの騎士団はこれを機に残党狩りを始め、拠点を確保しに行動する。このガヘナを確保すれば敵の本拠地とも言えるディシアに攻めて女帝の首を取る。そうすればデスニア帝国も自然と崩壊するであろう。

 しかしまだ油断ができない、デスニア帝国にはレイブンがいる。あの男のことだからこのまま終わることはないはずだ。

 

 オゼットの近くで魔法陣が現れると魔法陣からウインチェルが出てきた。


 「オゼットさん」

 「ウインチェル、何かあった?」

 「上空から敵の様子を見てみましたがほぼ全員が氷漬けになっている状況でした。オゼットさんが使用した魔法の影響を受けなかった敵兵は敗走していますね」

 「なるほど、ではこのまま進軍してガヘナ全域を占拠し敵の何人かは捕虜にして帝国の情報を頂くとしよう」

 

 早速テレンの騎士団の隊長に報告して進軍するように提案する、隊長は提案に応じて騎士団に進軍命令を出す。地面が凍っているため、うまく馬を走らすことができないので騎士達は徒歩で敵地に向かう。

 

 「では私はイスフェシア城に戻りますね」


 ウインチェルが転移魔法でイスフェシア皇国に戻ろうとした時、西の上空に巨大な魔法陣が出現する。


 「あれは、まさか究極呪文(アルティメットスペル)!?」

 「……いいえ、あれは転移魔法の魔法陣です。」


 あんな巨大な転移魔法で“何を”転送してくるのか、何処かにあの魔法陣を展開した人物がいるはずだが魔力探知では特定することができない。……なにか嫌な予感がする。


 「ウインチェルはイスフェシア城に戻ってください。真理のことお願いします。」

 「わかりました。ご武運を」


 ウインチェルは転移魔法でイスフェシア皇国に転移する。その後上空の魔法陣が強く光り出し雷が地面に落ちると巨大な影が出現する。全長約40mの巨大なゴーレムのようだ。

 

 「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」

 

 ゴーレムの雄叫びを上げゆっくりと前進し、雄叫びを聞いたテレンの騎士団はすぐに後退を始めた、あんな化け物に勝てるわけがないと。

 あのゴーレムの進行を止めなければテレン聖教皇国やイスフェシア皇国が滅茶苦茶になってしまう。オゼットは『タキオンソニック』を使ってゴーレムの近くまで走った。


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