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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
6章 サプライズウォー編
40/150

40話 帝国サイド

 目が覚めたら棺桶の形をしているカプセルの中にいた。確か俺はあのすばしっこい奴と戦って倒れたんだっけ?まさかこの世界で俺に怪我(ダメージ)を負わせる奴が現れるとは……いや、もしくは油断してしまったのかもしれないな。


 「お目覚めかね、中佐殿」


 近くには珈琲を飲みながら資料を見ているゼルンがいた。俺が眠っているこの棺桶に似ているカプセルは彼が発明したもので眠っている者に対してカプセルに内蔵している魔石の魔力を使って回復魔法を発動し続けるという装置らしい。

 しかし、この装置は試作段階と聞いていたのだが、どうやらこいつは俺を実験台にしてこの装置をテストしていたんだな……だが、体の痛みもなく軽くなった感じがする。悪くないな。


 「……ああ、博士、このカプセルはなかなか良いもんだな。体が楽になったよ」

 「ふむ、そうかそうか。なら次はこのカプセルを量産出来れば、戦力の立て直しが速くなるな。今後の課題としよう」


 ゼルンはそう言うと俺に資料を渡す。内容を見ると昨日の騒ぎでの報告内容が書かれていた。

帝国から脱走した暗殺部隊は一人を除いて全員始末に成功していたが、その逃れた一人というのはウィルという人物である。彼はイスフェシアの騎士に捕虜にされているがラピスの能力により、眠りから覚めることが出来ないことから情報が漏えいすることはないと考えられる。尚、暗殺部隊が所持していた武装は全て回収に成功し陸軍魔術化軍団が保管しているとのこと。

 

 この陸軍魔術化軍団とはブリガン・タヤスカ中将が率いる帝国陸軍でテレン聖教皇国及びイスフェシア皇国の侵略を担当している部隊だ。そのブリガンという男は能力者を嫌っており、その集まりである俺達919小隊を忌み嫌っている。


 「あのブリガンが所持しちまったのか」

 「余計な騒ぎにならなければいいがな。……珈琲を飲むかい?」

 「いただこう」


 珈琲を貰って飲みながら資料の続きを読む。今回の件で負傷した者は俺含めて2名でその一人がジャックだ。彼は治療魔法で応急処置はしていたものの、商店街での戦闘でアサルトライフルの弾が直撃しており、その弾丸の摘出手術をした。今は軍病院にて入院中で明日退院できるらしい。

 

 「なるほどな」

 「中佐殿、こちらも報告したいことがあるのだが、いいかね?」


 ゼルンは俺にもう一枚資料を渡す。その内容には前から計画していた巨大ゴーレムによるイスフェシア皇国及びテレン聖教皇国を侵略する作戦書だった。


 「これを見せるということはあの巨大ゴーレムの稼働が成功したってことでいいんだな?」

 「ええ、中佐殿がいた世界の住人達の魂を使って目覚めさせることができました。いつでも作戦を実行することが可能です」

 「よし、明日の午後ミーティングルームに集まるようにメンバーに伝えておいてくれ」

 「承知致しました。そして最後に……我らが陛下からのラブレターが届いておりますぞ」


 ゼルンから女帝からのラブレター(指示書)を貰い、研究室を出て外に向かった。





 帝都ディシア、ここはアーガイル大陸で一番都会だと言われていたのだが、最近コンダート王国による大規模な空襲によって帝国のシンボルであるディシア城は跡形もなく崩壊、帝都の市民はこの襲撃の影響で恐慌状態に陥っている。政府高官や軍上層部はこの事態の終結に向けて会議室に籠り対策を練っているようだ。

 

 この空襲によって軍人の戦死傷者は5万6800名、一般市民も1200名の犠牲が出ていた。

この時、この国の女帝エメキア・ディエナはたまたま国内の軍幹部と会談をするために帝国西南部にあるテーザ湖の近くの宿に宿泊していた。そのため運よくこの襲撃の難から逃れていた。

 そして帝国領内では帝国がこのままではコンダート王国に負けてしまうのではないかという人々が出始めており、帝国国内各地の住民達が次々と“武装蜂起”が起こしていた。


 「た、頼む!助けてくれ!!」

 「恨むなら、愚かな行動をとった自分を恨むんだな」


 俺達919小隊は女帝の命令により女帝直下の部隊と協力し“鎮圧”という名目で武装蜂起した住民達の“口封じ”を行っていた。大鎌で次々と住民の首を狩っていく。この大鎌『ソウルアウト』は倒した相手の魂をこの大鎌に保存し魔力に変換、もしくは魂を別の場所に移動させることができ、また相手を倒す度に自分の力が強化される。

 狩りを楽しんでいる最中にドカンッ!!と爆発音が聞こえる。その音の近くに行ってみるとルアールが武装蜂起した住民を爆破していた。

 

 「あ、中佐殿。元気してた?」

 「ルアールか、お前も陛下からの命令で鎮圧活動しているのか?」

 「そうだよ、他のメンバーにも届いているんだけど……ラーシャちゃんは先日の暗殺部隊始末の件でお友達と喧嘩した所為で落ち込んで家に引き籠っちゃったんだ。それでラピスがラーシャちゃんを慰めに行ったからあたし一人で鎮圧活動をしているの」

 「それはすまなかったな。俺もついさっき目が覚めて状況を聞いたところだ」


 二人は雑談しながら襲い掛かる住民をあしらっている。二人に勝てないと思った住民達は全力で逃げ出す。


 「ところでゼルンにも言ったんだが、明日の午後にミーティングルームに集まってもらうように他のメンバーに伝えてくれるか?近日中に前から計画していた巨大ゴーレムを使用した侵略作戦の会議を行う」

 「了解しました。みんなに伝えておきますね」


 ルアールは逃げ出した住民達に矢を放つと住民達の近くで矢が光り、爆発した。





 一方、ディシアの東部にあるラーシャが住んでいる満月館でラーシャは自分の部屋で引き籠っている。館で働いているメイド達が入ろうとしても部屋のドアは鍵がかかっており、領主……つまりラーシャの父親しか持っていないマスターキーを使わなければ外側から開けることができない状態でいる。

 ラピスはラーシャが部屋に引き籠ってしまっている事をメイドから連絡を受け、心配になって館に訪問しに来た。メイドからラーシャの部屋に案内されドアノックをしても反応がない。


 「ラーシャちゃん、ラピスです。少しお話をしませんか?」

 「……ほっといて」


 ラーシャはかなり元気のない声で答える。ルアールの話だと最近イスフェシア皇国で友達が出来てからとても元気だったのだが、その友達がイスフェシアの勇者の仲間であり、自分が帝国の者であることが理由で戦闘してしまって後悔しているらしい。

 ラーシャは吸血鬼であり、能力者であることから同い年の子達からは“化け物”と言われ近づく者はいなかった。その為友達がいなかったラーシャにとってはイスフェシア皇国で出来た友達はとても大切な存在であったのだ。


 「メイドさん達がラーシャちゃんの好きなアプフェルシュトゥルーデルを焼いてくださいましたよ。一緒に食べませんか?」

 「…………」


 ノックをしても返事が返ってこない。仕方がないとラピスはボソッと呪文を唱えた後メイド達に個室を借りれないかを聞く、メイドは空いている部屋を案内するとラピスはメイドにお礼を言いベットで横になる。そして能力『監獄夢(プリズンドリーム)』を発動し、夢の世界を構築し始めた。

数時間後、ラピスが創り出した夢の世界に一人の幼女が迷い込んだ。その幼女はラピスを発見すると走って近づいてきた。


 「ラピ姉!!私に睡眠魔法を掛けてここに引きずり込んだでしょ!!」

 「こんにちは、ラーシャちゃん。ようやくお話しができますね」

 「早く私をここから解放して!!」

 「それは、話しが済んでからにしましょう。みんなラーシャちゃんのことを心配しているのですから」


 ラーシャが何を言ってもラピスは微笑んで返す。口論は数十分間続いたが、ラーシャは諦めて先日の暗殺部隊の始末の件を話した。ルアールから聞いた通りイスフェシア皇国で出来た友達と喧嘩してしまってどうしたらいいのか分からない、そしてラーシャは今まで同い年の友達がいなかった為にどうしたら仲直りができるかを分からないでいる。

 ラピスは涙目になっているラーシャを抱いて一緒に考えましょうと提案する。ラーシャはその場で泣き崩れた。





 翌日の午後、ミーティングルームにてレイブン、ゼルン、ラピス、ルアール、ジャック、ラーシャが集まった。


 「諸君、よく集まってくれた。これより作戦会議を始める」

 「が、その前にみんなに私が開発したプレゼントがあるんだ。受け取ってくれたまえ」


 ゼルンはラピス、ルアール、ジャック、ラーシャに魔法石を渡す。この魔法石にはそれぞれに効果があってラピスに渡した青い魔法石『スリープ・ウイルス』には発動後、大規模のウイルスをまき散らし、発動した者以外の感染した者を一時的に眠らせるという変わったウイルスが入っている。

 

 今までラピスの能力は寝ている者の精神を自分が創り上げた夢の世界に引きずり込む能力でその関係上、その相手を夢の世界に引きずり込む為には相手に近づいて魔法で眠らせるか相手が眠るのを待つ必要があった。しかしこの魔法石があれば昼や夜関係なしに遠距離の相手を眠らせる事ができ、相手を夢の世界に引きずり込む事が可能だ。


 次にルアールには武器を召喚できる黄色い魔法石『サモン・ウェポン』を渡す。この魔法石は予め登録された武器を召喚できるという。早速ルアールは魔法石に自分の愛武器である弓を登録し、魔法石に魔力を流し込むと魔法石が光り、背中に背負っていた弓が手元に移った。


 「こりゃあ、便利だね」

 「ちなみに矢もその魔法石に保存が可能なので荷物がかさばる心配はないのだ」

 「ありがとう、博士!」


 ジャックにはルアールと同じ『サモン・ウェポン』を渡したが、ルアールとは違いこの白色の魔法石にはジャックが持っている白い鎧を召喚できる魔法石を強化したものとなる。


 「これには君が使っていた白い鎧を召喚できるのだが、私はその白い鎧を強化してあのコンダート王国が使う武器にも耐えることができる装甲にしておいた。ただし長時間の使用ができなくなってしまい、約10分を経過すると強制的に装備を解除してしまう仕様になっているので気を付けたまえ」

 「わかりました、ありがとうございます。博士」


 ラーシャには黒い色の魔法石『ナイトメア』を渡す。この魔法石には国を覆う規模の結界を展開し結界内を夜にすることができる。これでラーシャは吸血鬼としての力をいつでも発揮する事ができるようになった。

 4人に魔法石を渡して説明を終えるとゼルンはみんなに今回の作戦の資料を配る。

 

 「さて、これよりイスフェシア皇国及びテレン聖教皇国を侵略する為の作戦会議を始める」


 レイブンは黒板に作戦図を書きながら今回の作戦の説明をするのであった。この作戦が成功すれば2つの国を帝国の物にする事ができる。そうすれば次はコンダート王国、エンペリア王国を支配し、やがてアーガイル大陸の全てを帝国の支配下にしてやる。陛下が俺の“願い”を叶えてくれる為に……。


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