36話 聖光の白騎士
ジャックは倒れた男達を一ヶ所に集めて縄で縛る。尋問を始めようとする時に連絡石が光り出し、取り出すとオゼットの声が聞こえる。
『あー、あー、誰か聞こえますか』
「こちらジャックです。そっちの方で凄い爆発が見えましたが大丈夫でしたか?」
『ええ、敵が自爆してきたんですけど、爆発する前に何とか敵に巻き付いてあった爆弾を切り落としてその場から離脱しました。ちなみに自爆しようとした敵も捕まえてあるので安心してください』
「そうですか、こちらも敵二名を捕獲しましたのでこれから尋問をするところです」
オゼットは捕まえた男が言っていた話をジャック達に話す、するとジャックは声色が変わる。
「そうだったのですね、わかりました。私達はこれから城に戻って黒幕の計画を阻止します」
『わかりました。私もウインチェルさん達に伝えた後すぐに向かいますので、よろしくお願いします』
通信を終了するとラーシャは居ても立っても居られず城へと飛んで行く。ジャック達も城に向かおうとするとガイルが肩を掴む。
「待ちなさい。貴方、さっきこの二人が持っている武器を何で知っているの?それにさっきのラーシャちゃんの様子を見る限り、貴方達はラピスのことも知っているわね……貴方達は何者なの?」
どういっていいか言葉が詰まる、これ以上は隠し切れないだろう。
「……わかりました、お話致します。ですがその前に……ルアール、ラーシャが心配ですので先に城に向かってください」
「はいよ、狼男は置いていくからね」
ジャックの指示に従い、ルアールは背負っていたディズヌフを地面に置いて城に向かう。
「待ちなさい!」
ガイルが止めようと手を伸ばすとジャックがその手を止める。
「では質問にお答え致しましょうか、私達は“919小隊”と呼ばれるデスニア帝国の特殊部隊の者です。そしてあの武器は帝国がコンダート王国に対抗するために用意した武器です」
「帝国……ではこの国に来たのは破壊活動でもしに来たの?」
「いいえ、私達はあの男達を始末し、貴方達が捕虜にしているラピスを救出するために動いています」
ラピス……前回、夢の世界を作ってこの国中の人々を閉じ込めた女性でオゼットとテレン聖教皇国の騎士達と共に彼女の野望を阻止し、今はイスフェシア城地下牢獄に閉じ込めている。
「ガイルさん、大人しくラピスをこちらに引き渡しては頂けませんか?そうすればこの国には手を出さない様に私から上の人達に伝えます。そしてどうでしょう、帝国とイスフェシア、さらにテレンで和平を結びませんか?」
和平だと?散々この国に危害を加えた連中が何言っているんだ。
ジャックの提案に対してガイルは即答で返す。
「お断りよ。第一、帝国はマリー様を誘拐しテレン聖教皇国にこの国を征服するように脅した。さらにはこの国の人々に危害を加えた……そんな人達を信用なんて出来ると思う?」
「そうですか……残念です。貴方とは良い戦友になれると思ったのですが仕方がありません」
ジャックはポケットから白い魔石を取り出し、魔力を込める。すると魔法陣が展開され光がジャックを包む。
光から白い鎧を纏った騎士がゆっくりと歩いてくる。
「貴方を始末します」
光を包んで別の姿に変わる……まるでオゼットが持つIMSPのようだ、さっきの武器はコンダート王国の技術を真似して作ったといい、帝国はいろんな国の技術を真似しているみたいだ。
こちらもただ黙って聞いていた訳ではない、連絡石で通話の状態でポケットに隠していたのだ。ポケットから連絡石を取り出し、ウインチェルと話す。
「ウインチェル、今までの話聞いていたわよね?」
『はい、使い魔でそちらの光景を一部始終見ています。地下牢にはモーレアさんとアルメリアさんが向かいました。オゼットさんにも連携します』
「頼んだわよ」
連絡石をしまって拳を構える。ジャックはこちらの話が終わるまで律儀に待っていてくれたようだ。
「話は終わりましたか?それでは参ります」
白騎士は剣を前にかざして突進してくる。ガイルは辛うじて避けるが、斬撃が頬にかする。
「つっ!そんな強い装備があるなら最初から出してあの男達を捕まえるなんて容易だったわよね!?」
「この鎧も試作品なのでいろいろと不備がありまして、使うのを躊躇ってしまうのです。それにこの鎧ではアサルトライフルの弾丸を防ぐことなんて出来ません。余裕で貫通してしまいますからね」
ジャックから放たれる無数の光の斬撃にガイルは体中を切り裂かれる。
「ぐっ!舐めるんじゃあ……ないわよ!!」
体中を切り刻まれながらもガイルはジャックに向かって走りだし、鎧に正拳突きを放つ。ジャックがのけぞった後、すかさず頭に目掛けて後ろ回し蹴りを決める。
「……やりますね。しかし!!」
剣が光りだして、空にかざすと空中に魔法陣が展開され、光の槍がガイルに降ってくる。ガイルはすぐに距離をとり、肉体強化の魔法を発動して再び近づく。
ジャックが剣を振るう瞬間に剣を持っている腕の手首を掴み、顔面に目掛けて拳を放つが寸前で拳をかわされる。
「ふんっ!!」
ジャックはガイルを蹴り上げて、よろけた隙に剣で切り裂く。白いワンピースは段々と赤く染まり始める。
「がはっ!」
ガイルは吐血し倒れる。ジャックはゆっくりと近づいて横一閃に剣を振る。必死に立ち上がって反撃しようとするが、ジャックはガイルを切り刻む。
「さよならです。ガイルさん」
「ま……だ……おわ……って……」
出血がひどく意識が朦朧とする。ここで立ち上がらなければと思っても身体が動かない。
ジャックはイスフェシア城へと向かう。あのまま行かせてしまえば仲間達が危ない、何としてでも彼を止めなければ……。
周りを見渡すと先程の戦闘で敵が使っていたアサルトライフルを目にする。これを使えば彼を止められるかもしれない。必死にアサルトライフルが落ちている所まで移動し、掴み取る。
「まち……な……さ…………い」
ガイルはアサルトライフルをジャックに向けて構え引き金をひく、すると凄まじい騒音と共に弾丸がジャックの白い鎧を貫通し、身体に命中する。
ジャックが倒れたことを確認するとガイルは意識を失った。




