141話 感動的絶望な再会
ゼルンとの戦いで体力と魔力を消耗したモーレア達は休憩を取る。しかし下の階にいる人形達は動きが止まらず前進してきている。
「あの変態野郎共を倒したってのに何で止まらなねぇんだよ」
「さぁね、でもこのままじゃまずいね」
「ボーマ!ナリタ!モーレア達が回復するまで応戦するぞ!!」
ボーマは大槌で地面を砕いて人形達の進行を遅らせるとハンソンは剣で人形を横に両断していく。
ルアールとジャックも応戦し爆破しながら数を減らす。ラーシャとミーアはモーレアとガイルに治療魔法で傷を回復させる。
何としてもこのフロアを死守して人形達を上の階に行かせないようにしなくては……。
一方、オゼットとレイブンは『タキオンソニック』で壁を登り、最上階へと辿り着いた。
周囲にはウインチェルとメシアの姿は見当たらない。奥には転移魔法らしき魔法陣があるが、そこの前には二人の人物が待ち構えている。一人は見覚えがある人物で、かつてウェルフェナーダでエレザと戦って戦死したと報告にあった“青剣姫”エルクベレ・ブルメだ。
しかしもう一つ女性は知らない人物で見た目はこの世界には似合わない学生服を着ている。おそらく転移者だろう。レイブンはその人物を見ると仮面を外して声を掛けた。
「久しぶりだな。まさかこんな形でもう一度お前に会えるとはな」
「本当にね。いろいろあり得ないことがあってうまくは言えないけど…………会いたかったよ。兄貴」
「知り合いか?」
「ああ、俺の妹だ。しかしお前が何でここにいるんだ?」
亜紀は胸ポケットから黒いカードを取り出す。
「あたしの魂はこの黒いカードの中に入っていたでしょ。その中でちゃんと今まで兄貴達がやってたこと見ていたんだけど、蓮さんが兄貴達を襲った時にこのカードは落ちてウインチェルさんが拾ってくれたんだ。そしてウインチェルさんの魔法とあの月の魔獣の力であたし達は蘇ったってわけ」
「なるほどな。なぁ亜紀、そこを通してくれないか?あの月には俺の仲間が囚われているんだ」
「知っているよ。でもね、逆らおうとすると頭が痛くなるし体がいうことを利かないの。さっきゼルンって人も抵抗していたんだけど同じように体がいうことを利かなくなってウインチェルさんの命令通りにしか動けなくなってたし」
「あの博士も一応は抵抗していたんだな」
レイブンと亜紀が話している最中にブルメは黒いIMSPを起動して戦闘態勢に入る。
「亜紀さん、わかっていますよね?ここにいる二人を倒さなくては私達に自由がないってことを。そして私はウインチェルさんにこの戦いに勝てばジークフリートを蘇らえさせてもらえる約束をしていますの。負けるわけにはいきません」
「おい、誰がお前の話を聞くって言った?今俺は亜紀と話しているんだ。横やりを入れるんじゃねぇ」
レイブンはチェーンソーを取り出しCCSを使って時を止める。その後ブルメを斬るが黒いIMSPで召喚した鎧で攻撃がはじかれる。
レイブンは距離をとって時を動かし始めた。
「ちっ!」
「中佐殿、その節は大変お世話になりました。あなた達のおかげでこの力を手に入れることができ、忌々しいコンダート王国国王の首は取り損ねましたが今は私の恋人を蘇らせる為にあなた達の敵に回ります。よろしいですよね?」
「ああ構わんよ。しかしお前の願いが叶うとは限らないことも視野に入れておけ!」
オゼットも戦闘に加勢しようとブルメに剣を振る。しかしブルメはオゼットの攻撃を見切り、指二本で剣を止める。
「何!?」
「あなたの攻撃は前回の戦いから進歩していませんね。またあの白い服に着替えたらどうです?」
ブルメはオゼットの剣を弾き両足に向かって斬撃を飛ばす。その後、顔を掴んでレイブンがいるところに投げる。レイブンは飛んでくるオゼットを避けるがその隙にブルメが近づいて蹴り飛ばす。
「炎よ、我が敵を燃やし尽くせ!『ブレイズ・ブレイド』!」
オゼットがいるところまで飛ばされると二人を纏めて炎で焼いていく。
「兄貴……」
「亜紀さん安心しなさい、この程度でやられるようでは彼らがここまで来るのは不可能ですよ」
ブルメがそういうとさっきまで炎で焼かれていた二人は消えている。ブルメの背後からレイブンがチェーンソーを振り避けようとすると地面から手が出てきてブルメの足を掴む。レイブンの攻撃を避けきれないと思ったブルメはレイブンの腕を裏拳で殴り、攻撃をずらした。
しかしブルメの足を掴んだ手はそのまま地面に引きずり込んで動けないようにした。
別の地面からオゼットは這い上がる。
「形成逆転だな」
「それはどうかしら?」
ブルメが笑うと亜紀はポケットから黒いIMSPを取り出して起動する。鎧を纏うとレイブン向かって両手斧を振る。
「やめろ亜紀!」
「無理、やめたいんだけど体が勝手に動くの!」
レイブンは亜紀の攻撃を避けるか弾くしかできない。その隙にブルメは埋まった地面から脱出して追撃を加える。
オゼットは『タキオンソニック』を発動してブルメの邪魔をしようと攻撃を繰り出す。しかし両足に痛みが走り、動きが鈍くなっている。先程ブルメから受けたダメージが今になって効いてきたみたいだ。
「ぐっ!?」
「どうしました?それで私達に勝てると本気で思っているのですか?」
ブルメの斬撃が四方八方と飛んできて避けることもできず、そのまま受けてしまう。
「ちっ!タイム・フリー…」
「させませんよ。亜紀さん!!」
亜紀が両手斧を地面に叩きつけると鎧が光る。そしてレイブンの時を止める能力が発動しない。オゼットも『タキオンソニック』で距離を取ろうとするが『タキオンソニック』が発動しない。
「亜紀さんの鎧は周囲にいる人の魔法や能力を封じる力がありますの。私も魔法が使えなくなりますがあなた達程度なら充分に勝てます。」
これで状況は更に不利になった。相手の一人は自分たちよりも剣術が達者でもう一人は魔法と能力を封じ、レイブンは彼女を攻撃する事ができない。
このままではウインチェルのところに行けない。どうやってこの状況を打開すればいいのだろうか……。




