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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
最終章 グランドフィナーレ・アルカディア編
137/150

137話 人の形した化け物

 

 一方、ウインチェルは黎明の塔の頂上に魔法陣を展開した。これでいつでも赤い月に行ける様にしている。赤い月には地球と同じく酸素があるので問題なく移動が可能だ。

 ウインチェルが真理と共に赤い月に転移しようとするとメシアが報告しに来る。


 「あいつらに動きがあった。どうやって知ったかはわからないが、ここに向かって来ている」

 「それはあなたのポケットに入っている魔石の所為でしょうね」

 「……知っていたなら何故俺達の場所をばらす真似をした?」

 「言ったでしょう。もう彼らにアームスヴァルトニルの目覚めを邪魔することはできません」

 「しかし……」


 ウインチェルは仕方ないと黒い魔導書を開き呪文を唱える。これは一時的に死者を蘇らせ絶対に命令に従わせることができる“逆転生の書”と呼ばれる魔導書だ。

 この魔導書は膨大な魔力を必要とし、蘇ったとしても長くこの世に滞在は不可能らしい。ウインチェルはこの本を使いミーアとラルマの両親やかつての友を蘇らせる事に成功したが数10分後には塵と消えてしまう為にこの魔導書は使えないと判断して封印していた。


 しかし、今の彼女は黎明の塔の魔力とアームスヴァルトニルの一部能力を手に入れている。

 アームスヴァルトニルは取り込んだ者の力や魔法等を使える能力があるらしくそれを第三者に与えることもできるらしい。

 ウインチェルは逆転性の書である人物達を蘇らせ、ヴェノムの時を止める力でその人物達の体の時を止めた。逆転生の書の力でこの黎明の塔からくる敵を倒すように命令する。


 「……」


 蘇った5人のうち、1人は大量の人形を召喚して黎明の塔の守りを固める。その数は約1万3千、本来ならこの大量召喚は不可能だが黎明の塔から出る魔力の酸素とフェリシアが持つ無限の魔力の能力をウインチェルが使って魔力共有しているため可能にしている。

 残りの4人は塔の入り口、中間の広間、頂上で待機し敵を迎え撃つ準備をしている。


 「さあ蓮さん。行きましょう」


 メシアは真理を担いでウインチェルと共に魔法陣に入った。





 一方、レイブン達はワイバーンで黎明の塔に到着しようとするが上空には魔力がこもった霧が塔を包んでいて頂上にたどり付けない。どうやらこの霧には平衡感覚や距離感を失わせるらしく上手くワイバーンが飛べないでいる。仕方なく近くに降りると周囲には人形の大群が待ち構えていた。


 「うわぁ、戦いたくないわね」


 ナリタは不気味な動きをしている人形を見て剣を構える。人形達はこちらに襲いかかって来た。


 「無理に戦う必要はない!塔まで走って邪魔な奴だけ切り捨てろ!!」


 ハンソンは目の前の人形を切り捨てながら道を作る。それに続くように3人は走る。

 レイブンは黒い空間から手榴弾を取り出して人形が集まっているところに投げる。爆発で人形達は木っ端微塵になるがまだまだ目の前には大量の人形が襲ってくる。


 「ちっ!仕方ねぇか!」


 レイブンはCCSを使って時を止める。次に魔法が込められているカードを上空にばら撒きカードから火の玉を大量に召喚して人形に直撃させる。

 時が動き出すと人形は消滅する。4人は道が塞がる前に塔の入り口まで走った。

 入り口にたどり着くと見覚えがある人物が立っている。


 「お久しぶりです。レイブン中佐」

 「お前は確か……ハルフト・マルシャだったか?」


 ハルフト・マルシャ、彼は元帝国軍人だったが彼の人形を生成、人間や動物等の生命を人形に変える能力で金儲けする為に軍を抜けた。しかし彼はとある村でギルドの傭兵に捕まって死刑になったと聞いている。


 「お前が生きているのなら、この大量に群がっている不気味人形がいるのも納得できるわ」

 「残念です。あなたにこの人形達の素晴らしさが理解できないなんて……聞けばあなたは妹さんを復活させるために今まで魂を集めていたとか」

 「だからどうした」

 「許可さえ頂ければ妹さんの魂を人形に定着させて永遠に生きさせることも可能ですよ?」


 ハルフトはにっこり微笑みとレイブンはチェーンソーを彼にぶん投げた。


 「くせぇからそれ以上しゃべんな」

 「……いいでしょう。あなたを人形にして、あなた目の前で妹さんの体を楽しむとしましょうかね」


 ハルフトは人形を使ってレイブン達に襲わせる。レイブンは手に先程投げたチェーンソーを召喚して襲い掛かる人形の首を切り落とす。


 「この人形共は俺達に任せろ。お前はあのゲス野郎をぶった切れ!!」


 ボーマは大槌で人形を粉砕してナリタはワイバーンに指示する。指示されたワイバーンは口から火炎を出し人形を焼いていく。

 「ふーむ素晴らしいですね。ワイバーンが言うことを聞くなんて。あなたを是非私のコレクションにしたい」

 「近寄らないで!気持ち悪い!!」

 「俺が相手だ!」

 「男を人形にするのは私の美学に反しますが、レイブン中佐は例外としましょう」

 「うるせぇ!とっととこの世から退場しやがれ!!」


 レイブンは時を止めてハルフトの腹にチェーンソーを刺す。時が動き出すとハルフトは倒れた。しかし何か不気味な手ごたえを感じた。まるで人間の肉を切り裂いたのではなく人形を切ったような感覚だ。

 直ぐにハルフトの死体を確認しようとするとハルフトの手が体から離れてそのままレイブンの首を掴む。

 

 「ぐっ!?」

 「あまいですね。私は人形を愛する者、ウインチェル様にお願いして私自身を人形にしていただいたのです。これで私は不老不死、誰も私の趣味を愚弄することは許しませんよ!」

 「マジかよ……ぐぇっ」

 

 掴まれた手を振り解こうと抵抗するも力が強すぎて意識が遠のいていく。

 ハンソン達は人形に苦戦して助けに行けない。ここまでかと思ったレイブンに上空から閃光が走り掴んでいたハルフトの手は粉々になる。


 「別に待ってはいねぇけどよ……お前、速いけど遅いよな」

 「言っている意味が不明過ぎるな。後、少しは感謝したらどうだ?」

 「俺がお前に感謝したら気持ち悪いと思うけど、お前はそれで嬉しいのか?」

 「いいや全っ然!」

 「お前も言っている意味不明だわ」


 さっきまで大量にいた人形はバラバラになっていく。何が起きているのかハルフトは近くに落ちていた人形の手を自分の体にくっ付けて立ち上がる。


 「誰ですか?私のコレクションを粉々する愚か者は!!」

 

 その素早く動く者はピタリと立ち止まって名乗る。


 「俺はオゼット、イスフェシアの勇者だ」


 ハルフトは直ぐに人形を召喚して体制を整える。

 イスフェシアの勇者と仮面の殺人鬼、2人の転移者はそれぞれの目的の為に目の前の敵に剣を向ける。


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