134話 同盟関係
一旦イスフェシア城に行きメシアとの戦闘による怪我を治療魔法で回復しラーシャに休暇を取らせた後、ルアールとジャックを最後に見た場所を教え2人の捜索を指示する。ラーシャはミーアとラルマと共にワイバーンに乗って捜索を開始した。
ラピスを救出して邪神ヴェノムを取り戻し、亜紀を蘇らせる為には戦力が足りていない。それを補うには少し腹が立つがイスフェシアの勇者をこの世界に転移させ利用する必要がある。おまけにイスフェシアの連中はあの忌々しいメシアの場所を特定出来ているらしい。
俺は奴がいる場所の情報と引き換えにイスフェシアの勇者をここに呼び戻してやると交渉した。
「おい女、お前は俺と一緒に来い。お前ならあいつが何処にいるか予想が付くだろう?」
真理は渋々と俺に近づく。俺は黒い空間を出現させ元にいた世界へと転移した。
一方、オゼットは元の世界に転移させられた後、家に帰って自分の部屋に引きこもっていた。母親は今まで何をしていたのか、真理は見つかったのかを聞いてきたがそれを答える気力もなくただただ部屋に閉じこもりファンタジー・ワールドをプレイしていた。
あの時、メシアの攻撃を回避できたのならウインチェルを止めることができたかもしれない。攻撃を受けたからわかったがメシアの『カオス・バニッシュ』は謎の吸引力で引き寄せられて蹴りを入れる技だ。その吸引力を何とかできれば回避もしくは反撃を与えるチャンスが生まれるはずだ。
俺はその打開策を考えるために無重力状態エリアに行き『タキオンソニック』でフィールドをジャンプしながら進みあるモンスターを探す。
「見つけた」
そのモンスターはアドコレランダームといい、口を開けて辺りの物を吸い込んでは吐いて散らかしている。俺を見ると走って近づいて吸い込みを始める。
この吸い込みを耐えるのはかなり難しい上にこのエリアは無重力なのでかなりきつい。対策がなければこいつの腹の中に入って速攻で消化されゲームオーバーになるので、いろんな意味でプレイヤー達から嫌われているモンスターだ。
俺はライフセイバーを地面に刺して耐えるが吸引力が凄まじく刺した地面が割れて宙に浮いてしまう。
この状態になると回避や防御はできない……だが方法はまだある。
「こいつをくらえ!!」
俺はアドコレランダームの口に爆弾を投げた。爆弾を飲み込んだアドコレランダームは爆死し体は飛び散った。
この方法を応用してメシアの目の前まで近づいたら爆弾を爆発させればダメージは受けるが蹴りの攻撃を回避できる。後はアーガイル大陸に転移ができれば良いのだが、フェリシアはウインチェルによって封印されている。
他に方法があるとすれば以前ミーア達が俺達の世界に転移できたという“秋葉原の書”を使って合流できればウインチェルを止めにいくことができるのだが……。
「何とかしてもう一度いけないかな……」
今の俺ができることは真理達を信じて待つしかない。それまではファンタジー・ワールドで腕が鈍らないように戦闘を続ける。
―オゼットさん、メッセージが1件届いています―
インフォメーションの通知を受けメッセージを確認すると俺はファンタジー・ワールドからログアウトした。
VRゴーグルを取り、家を出ようとすると母親が尋ねる。
「何処にいくの?」
「野暮用、またしばらく帰ってこないかもしれない」
「そう、あんたのことだから止めても行くんでしょうけど無理するんじゃないよ」
「わかった、気を付けるよ」
「いってらっしゃい」
母親は見送ってくれて俺は新宿にあるコクーンタワーへと向かう。コクーンタワーの入り口には真理と白髪の男性が立っていた。
この男性はおそらくレイブンだ、素顔は始めて見るが雰囲気でなんとなくわかる。何故一緒にいるかは疑問に思うが、彼もまたウインチェルによって被害を受けたと考えれば想像は付いた。
「真理……」
「元気だった?」
「まぁな」
「そう……良かった」
「話しているところ悪いが、とっとと戻るぞ」
「まさかお前も一緒にいるとは思わなかったよ」
「俺もお前と協力しなきゃならねぇとは思わなかったぜ」
レイブンは人目が付かない場所まで移動すると黒い空間を出現させ俺達は空間の中に入るのだった。




