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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
最終章 グランドフィナーレ・アルカディア編
133/150

133話 反逆の仮面、家族を取り戻すために……

 

 ミーア達が勇者召喚の儀式をする前、レイブンこと黒井圭一はメシアによって元の世界に転移、二子玉川にある多摩川に飛ばされた。そして流されているところを一般人が発見し病院に搬送された。

 医師はどうやったらそんな怪我をするのか疑問に思いながらも緊急で手術をして何とか一命を取り留めた。

 

 退院できるのは半年掛かると言われて圭一はずっとベッドで眠っていた。

 たとえ怪我が治ったとしても生きる意味がもうない。あの時、メッセンジャー……いやイスフェシアの魔女の妨害を阻止できれば妹は……亜紀はあの世界で再び生きることができたのだ。しかし今ではあの世界に戻る方法がない。CCSは取られて、ヒーローもどきとの戦闘で亜紀の魂が入った黒いカードはなくなっている。


 「……」


 本来なら後悔と憎しみがこみ上げてくるはずなのだが、その気力も無くなっている。このまま死ねば亜紀のところに行けるのだろうか?

 いや、亜紀の魂が黒いカードに入っているということは、亜紀はあの世に行っていない。一生あのカードに閉じ込められたままあの世界にとどまることになる。


 亜紀に会いたい。しかしもう一度あの世界に戻れるなんて奇跡はないと圭一はただただ眠り続けるのであった。





 夢を見ていた。それは邪神によって妹は復活し、アーガイル大陸は魔族だけが生き残っており豊かな自然が広がっている世界……圭一は亜紀と919小隊の皆でピクニックを楽しんでいた。


 「兄貴~早く」

 「レイ兄ぃ!」

 「まぁ待てって」


 亜紀とラーシャは奥にある花畑まで走っていく。ラピスとルアールはゆっくりと歩きながら後を追い、圭一とジャックとゼルンの3人は荷物を運びながら追いつこうとする。


 そして奥に進んだ先には白い花が咲く花畑にたどり着く。そこで圭一達はビニールシートを敷いて食事にすることにした。

 ランチボックスにはラピスが作ったハムときゅうりのサンドイッチやたまごサンド、ルアールが作ったおにぎりが沢山入っている。


 「いただき!!」

 「待て」


 亜紀がつまみ食いするその手を掴む。食事をする前に手を洗えと圭一は魔法で水の球体を出して亜紀の手をその球体に突っ込む。

 全員手を洗った後「いただきます」とランチボックスにあるサンドイッチやおにぎりを手にして食べる。


 「うん!ラピスさんが作ったサンドイッチ美味しい!このカツサンド何かソースを使ってる?」

 「はい、マスタードと牛と豚の出汁、出雲国の醬油を合わせて作っています。」

 「すごい!良かったね兄貴、こんなに美人な嫁さんがいて。あたしこれからラピスさんをお義姉ちゃんって呼ぼうかな~」

 「おい」

 「あらあら」


 ラピスは顔を赤くするとルアールがちょっかいを出す。ラーシャは少し嫉妬して圭一に抱きついた。それを見たゼルンは笑いながらハイボールを飲む。

 夢だと分かっているがとても微笑ましく幸せな気分になれる。この夢がいつまでも続けばいいのに……。


 「ダメですよ。諦めちゃ」


 いきなりラピスが圭一に言う。


 「だが、今の俺ではあの世界に戻ることはできない」

 「確かに中佐殿はウインチェルさんと黒い男の戦いによって邪神ヴェノムは奪われ、妹さんのカードは失いました。そしてルアールさんもジャックさんも……私はウインチェルさんに攫われて赤い月の魔獣、アームスヴァルトニルに取り込まれました」

 「ああ、俺は皆を失っちまったんだ……ん?待て。俺は赤い月に魔獣がいることは知らないし名前なんて知るはずもないぞ?まさか、お前……」


 ラピスの体は段々と消えかかってきている。


 「そうです。魔獣に取り込まれましたがそのおかげで魔獣と邪神の魔力を使って『監獄夢(プリズンドリーム)』を発動して中佐殿を見つけました」

 「すげえなお前」

 「しかし魔獣の力が強くて意識がそろそろ持たないようです」

 「どうすれば俺はお前達の世界に行ける?」

 「今ラーシャちゃん達が転移者を召喚しようとしています。どうやらイスフェシアの勇者を再召喚しようとしていますが、そこに中佐殿を割り込みます」


 そんなこともできるのかと圭一は驚いたが今のラピスは神の力を一時的に手にしているも同然なので可能らしい。しかしそれも時間の問題だ。


 「わかった。どんな手を使ってでもお前を必ず助けるから待っていろ」

 「ええ、信じています……」


 ラピスは完全に消えこの夢の世界はひびが割れて崩れ始める。意識が朦朧とし目が覚めようとしている。

 今度こそ俺は大切な家族を……取り戻す!!





 そして現在、目が覚めると目の前にはちびっ子2人が倒れていてラーシャが泣きながら俺に抱きついていた。さっきまで傷だらけだった体が何もなかったかのように回復している。


 「レイ兄ぃ!!どうして!?」

 「ようラーシャ」


 俺はラーシャにこれまでのことを話した。そしてラーシャも落ち着きながら現状を報告する。

 どうやらあの魔女は森で魔獣を大量に召喚して時間稼ぎをしているみたいだな。そしてあの赤い月に眠っている魔獣を使って何かとんでもないことをするらしい。

 しかも森にはかつて自分達が召喚したジンマがいると来たもんだ。あのゴーレムを召喚するのにすごく苦労したのにあの魔女は簡単に召喚しやがって……。


 「ラーシャ、まずはこのチビ共を安全な場所まで運べるか?」

 「うんわかったわ!レイ兄ぃは?」

 「あのゴーレムを黙らせに行ってくる」


 今ここでCCSを呼び戻せばその時点であの魔女共に俺の存在がバレてしまうが、もうそんなことはどうでもいい。あいつらの野望を絶対に阻止してラピスを助けてやる!


 「来い、俺の相棒!むかつく奴ら全員血祭りにしてやろうぜ!!」


 強く念じると左腕にCCSが手元に現れる。それを腕に装着して黒い空間を召喚する。ラーシャも小さな黒い空間を召喚すると中からいつも俺が付けていた仮面を取り出した。


 「やっぱりレイ兄ぃはこうでなくちゃ!」

 「ありがとうよ。じゃ、行ってくるわ」


 黒い空間に入って俺はジンマがいる森まで転移した。





 一方、ジンマと交戦しているモーレア、ガイル、サンソン、ボーマ、ナリタは魔力の消耗が酷くジンマを拘束していた『ストレイトチェーン』が破られてしまった。

 ジンマの進行は止められない。そして全員体力が限界まできており、撤退するしかないと考える。


 「ちくしょう、撤退だ!全員一旦イスフェシア城まで撤退しろ!」

 「しかしこのまま戻っても、あいつを倒す手段が……」

 「諦めてんじゃねぇよデブ!少なくとも今ここで戦っても先にくたばるのは俺達の方だ!」


 モーレアがボーマの大きい腹を叩いて喝を入れる。サンソンとガイルも同意見で馬で森を離れようとしたその瞬間、黒い空間からある意味懐かしいが会いたくない奴が現れた。


 「てめぇはレイブン!!」


 レイブンはモーレア達の言葉を無視してジンマに近づく。

 あのゴーレムは確か物理攻撃と魔法攻撃は効かないが魔法の効果は通用するはずだ。つまり俺の時の魔法の効果は適用できる。


 「久しぶりだなジンマ、そしてさっさと死ね」


 レイブンは空を飛んでジンマの顔面を殴った。

 彼が発動した魔法『タイム・タッチコントロール』は触れた者の時間を操作する。殴った瞬間にジンマの体をとりあえず3億年前に時間を戻した。ダメージが通らなくても生まれる前以上に時間を調整すれば存在を消すことは可能だ。

 ジンマの体は文字通り消えていった。モーレア達はあんなに苦戦したジンマを瞬殺されて啞然としている。


 「流石は転移者といったところか……で、次は俺達と殺り合うか?」

 「今お前らと戦っても何の得にならない」


 俺は目の前にある黒い樹に触れて『タイム・タッチコントロール』を発動する。樹は枯れ崩れ落ちていく……。

 黒い樹が朽ちた影響で召喚された魔物達は消失、一旦はこの戦いに終止符を打つことができたのだった。


 そして今後はあの赤い月をどうするかが問題である。そのためにはかつて敵だった者同士、協力しなければならない。


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