129話 未来を変えるための戦い
いつもご覧いただきありがとうございます。旅人サンです。
この作品も遂に最終章に突入します。
2021/04/10から投稿を始め早くも2年が経ちここまで続くとは正直思わなかったです。
ここまでご覧になってくださった皆様には大変感謝しております。
何卒、最後までこの作品をお楽しみください!!
俺は帝国にある研究所に向かう。ウインチェルの情報ではその研究所ではレイブンのような転移者を召喚するための施設らしい。その研究が進めば俺達のような規格外の力を持った転移者を大量召喚し、精神操作をする事で帝国は最強の生物兵器を手に入れることになる。
その後、帝国はこの世界を征服し異世界転移装置で俺がいる世界に転移し征服した。俺はその歴史を変えるために5年前のアーガイル大陸に転移した。
そして今、目の前にはその元凶の装置がある。装置というわりには機械チックな物ではなく、魔法陣と人が入れる魔石で出来た棺桶のような物だ。
「これが異世界転移装置……」
この異世界転移装置はいわゆる試作品であり、後の未来にこの試作品から異世界転移装置の量産型が作られるのだ。
こいつの所為で俺達の世界が滅茶苦茶になったと考えると怒りがこみ上げてくる。俺はDMSPを起動する。
―絶望タ~イム♪―
「……変身! 『カオス・バニッシュ』!!」
異世界転移装置に一撃を与えて機能を停止させる。直ぐに天井に付いている魔石から警報が鳴る。
二度とこんな装置を作らしてはいけないと周辺の魔石を砕き、資料を燃やし尽くした。
そしてドタバタと足音が聞えてくる。どうやら帝国の兵士達がこちらに走って来ているようだ。しかし今の俺にとってそんなことは重要じゃない。この施設にある物全てを破壊しに来たのだからな。
「敵を発見!排除せよ!」
帝国の兵士達は銃の形によく似た魔石を使う事で魔法を飛ばす武器で俺に攻撃を仕掛けてくる。だが、このメシア・システムは魔法と能力による攻撃は効かず、影響を受けない。帝国の魔法武器など俺にとって玩具でしかない。
俺は黒い波動で帝国の兵士達に攻撃すると兵士達は吹っ飛び気絶する。そしてゆっくりと出口まで歩いて外に出て、魔力を両手に集中させ施設の上空に黒い球体を召喚する。
「消えろ、俺達の未来の為に!『メシア・ホール』!!」
黒い球体が施設に落ちると球体に触れた部分から段々と消えていく。これで帝国は異世界転移装置を再び作るのは困難になったはずだ。5年後に俺達の世界に転移することはもうない。俺達の未来は救われたのだ。そう考えると気が抜けて疲れがどっと出てくる。
俺は少し休憩してウインチェルがいるイスフェシア城の隠し部屋に帰った。
部屋に帰るとウインチェルがコーヒーを淹れて出迎えてくれた。
「お疲れ様です。そしておめでとうございます。これで5年後、あなた達の世界に帝国が侵略することはなくなりました」
「ああ、これもウインチェルが俺に力をくれたおかげだ。本当にありがとう」
「しかし、まだ油断してはなりません。転移装置を破壊したとしても帝国がこの世界を征服する未来は変わっていません。この世界を征服した後、転移装置はまた作られてしまうでしょう」
「次はお前の夢を叶える番だな」
「はい。私の夢が実現すれば帝国は何もできず、争いそのものができなくなる世界へとなります」
ウインチェルは机の上に置いてある二つの魔石を持つ。この魔石には時の邪神ヴェノムと魔力の女神フェリシアが封印してある。この二つの力を使えば世界を変えることも新たな世界を創ることもできる。
「では蓮さん。次の依頼内容を説明しますね」
「いいや結構だ。次は“もう一人の異世界転移者の捕獲”だろ?」
「あら、良くわかりましたね。であれば話が早いです」
「前にイスフェシアの勇者を襲撃したときに言っていたからな。魔獣の生贄にすると」
「その通りです。よろしくお願いします」
「今は休憩させてもらう。実行するなら夜だ」
俺は夜になるまで部屋のベッドで仮眠を取ることにした。
ウインチェルは自分の夢の実現……計画を進めるために城を出てカタカリ大草原の森へと向かおうとしていた。そこは元々ウインチェルの家があったところでもある。魔法で転移したいのは山々だが、今は魔力を温存したいので馬に乗って向かうのであった。
馬で走ってカタカリ大草原にある川を渡る為の橋を通ろうとすると見覚えがある人物が立っている……アルメリアだ。
「アルメリアさん。どうしたのですかこんな所で?」
「あなたこそ、国から出て森に向かおうとしているけど、どうしたのかしら?急いでいるみたいだけど……」
「ええ、前に私の家の周辺に咲いていた薬草を採取しに行こうと思いまして」
「あなたなら転移魔法で行けばいいのに、わざわざ馬で向かうなんて少し変じゃない?まるで魔力を使いたくないように思えるわ」
「……何が言いたいんですか?」
ウインチェルは帽子を深く被るとアルメリアは服からメスを取り出して構える。
「ウインチェル、あなたはあの赤い月を召喚した張本人ね」
「……ええ、そうですよ」
「だったら私が言いたいことはわかるわよね?」
「あえて言います……お断りします!」
ウインチェルは上空に魔法陣を展開し雨のように魔法の弾を降らす。アルメリアは距離を取ってメスを投げる。メスはウインチェルの目の前まで飛ぶが魔法の弾がメスをはじいた。
「どうしてあんな月を召喚したの?あれはこの世界を魔物だけが住む世界に変えられる程危険だってあなたなら知っているはずなのに」
「全てはこの世界の未来のためです。この世界は帝国や転移者達によってあまりにも本来の形から外れてしまった……だから私はこの世界を元に戻す、そして二度と帝国や転移者がこの世界に介入できないように修正する必要があります」
「でもそれって帝国が悪いはずでしょ?何でオゼット君みたいな転移者もダメなの?」
「そもそも帝国がほとんどの国を侵略出来る様になったのは異世界から来た転移者が原因です。奴らが介入し、神々がチート能力なんてものを付与したばっかりに転移者は好き放題にこの世界を変えて行く……私はそれに我慢ができないのです!だから私は転移者を生贄に捧げ、アームスヴァルトニルを目覚めます!!」
ウインチェルは魔法で巨大な火球を生成し地面に落とす。アルメリアが氷の魔法を唱えるが、氷の魔法を発動すると瞬時に溶けてなくなる。どうやらこの魔法は氷系の魔法を無力化する効果があるらしい。
アルメリアはこの場所から離れようとするとウインチェルは結界を張ってこの炎の海から抜け出せなくする。
メスで首元に攻撃するが魔法の壁で刃が入らない。ウインチェルはアルメリアの顔を掴みそのまま炎で焼き、次第にアルメリアの全身は炎に包まれる。必死に抵抗するが段々と弱くなって力が尽きる。
ウインチェルは彼女を川へ投げた。
「余計な魔力を消費してしまいましたが仕方がありません。アルメリアさん、さようなら」
馬に再び乗る。遠くから“何かが”イスフェシア皇国に向かって行った。おそらくアルメリアの暗殺部隊がこちらを観ていたのだろう。そしてマリー様に報告しにいったというところか。しかしこちらの計画に支障はないと考えたウインチェルは森へ進むのであった。




