128話 幸せを取り戻すと誓った日
気がつくと俺はベッドで寝ていた。あの女性……ウインチェルは俺が目覚めたことに気づくと水が入ったコップを渡す。
「お疲れ様です。気分はいかがでしょうか?」
「最悪だ。俺は悪夢を見ていたのか?」
「いいえ、全て現実です。あなたはDMSPを起動しあのモンスターを倒しました。そして倒れこんでしまったのでこの世界まで運びました」
「この世界?」
俺はカーテンを開けると日本とはほど遠い、まるで昔の外国に来たような光景だ。しかし外国とは違うのは人が杖を跨いで空を飛び、街では人外が歩いて買い物をしている。
「な、何なんだこれは!?」
「ここはイスフェシア皇国、別名“魔法の国”と呼ばれている国です。あなたには私の夢を叶えていただく為にこの世界に異世界転移したのです」
異世界転移とはアニメじゃあるまいしと思いたいが、事実として女木島ではモンスターに襲われたり、この黒いスマホによってモンスターを倒したんだ。異世界転移があったとしても不思議ではないか……。
「しかし俺ではお前の夢を叶えるのは無理じゃないのか?俺は大切な仲間や……弟を救う事ができなかった」
「確かに救うことはできませんでしたね。しかし私にはあなたの力を貸してほしいのです。DMSPを起動できるあなたに」
ウインチェルは魔法で壁にある映像を見せる。それはモンスターや銃を持った男達が街を次々と制圧……というよりは侵略している光景だ。
「これはあなたの世界の現状です。あの集団はこのアーガイル大陸にあるデスニア帝国の兵士達です。帝国は今から5年後、世界を変える力を手に入れてこの世界を征服した。しかしそれだけでは飽き足らず、帝国はあなたがいた世界に転移する装置を開発し、あなたがいた世界は帝国に征服され帝国の物へと変わったのです」
「ちょっと待って全然理解が追いつかない」
「ですので私は5年前のこの世界にタイムスリップして帝国の企みを阻止しようとしています。しかし私だけでは帝国を止めることはできません。帝国にはあなたと同じ転移者がいて、誰も帝国を止める者がおりません」
「そこで俺がそいつを倒せと?」
「いいえ、帝国の転移者にはもう一人、この国で召喚した転移者がいますのでその方に彼を倒すもしくは邪魔していただきます。あなたはその隙に帝国へ侵入し破壊工作をしてほしいのです。その中にはあなたの世界へと転移できる転移装置があるはずです」
転移装置、それの所為で俺達はあんな惨劇を経験する羽目になったのか。絶対に許されない。
怒りと憎しみがこみ上げてくる。そしてウインチェルの話が間違いではなければここは5年前、この世界がまだ帝国によって征服されていない時代ということだ。
ならば、ここで破壊活動をすればこの世界の未来を変えられる。ということは俺達の世界で帝国が転移して来なかったという事実に変えることができるのではないかと考えた。
「その破壊活動をすれば、俺達の世界は救えるのか?」
「もちろん。歴史は変わり、あなたの世界は平和な未来になるでしょう」
その言葉を聞いて折れていた心から活気が湧き上がる。
「わかった。あんたに協力しよう」
俺はウインチェルに手を差し出すとウインチェルも応じて手を差し出して握手をする。
「これからよろしくお願いしますね、蓮さん」
「ああ、必ず未来を変えてみせる!」
こうして俺はウインチェルと手を組み、イスフェシアの勇者が帝国の転移者……仮面の男と戦っている間に俺は帝国の研究施設を破壊しにいったのだ。
悪夢から醒めた俺は隠し部屋を出る。
今から向かう場所は帝国が密かに建設した施設でそこにはあの忌々しい悪夢の元凶ともいえる異世界転移装置があるらしい。何としてでも破壊しなければならない。
「行ってくる」
「お気を付けて」
ウインチェルは手を振って見送る。
絶対にしくじる訳にはいかない、俺は未来を変える。そして世界を救ってみせる!!




