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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
13章 テイク・バック・ザ・フューチャー編
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127話 メシア・システム

 

 勝の一言で俺の心は折れてしまった。いったいおれはこれからどうすればいいのか。何をしたらいいのかがわからない……。


モゾモゾ


 洞窟の奥で何かが動いている。恐る恐るそれを除くと上半身が鬼で下半身が蜘蛛のモンスターが死体を喰っている。

 さっきまで銃撃戦をしていたのにあの鬼はこちらに気づいていないのか?それとも興味がないのか?疑問は残るが俺は八重樫のところに近づき縄を解く。


 「八重樫、しっかりしろ!」

 「……う、れ、蓮?」

 「いいか静かにしてここから出るぞ」


 本当は捕まっている人全員助けたいが、それをしている場合ではない。

俺と八重樫は洞窟を抜け出して一旦落ち着きられそうな場所に向かい休憩をしながらこれまでの状況を説明する。

 八重樫は俺達と通話している最中にモンスターに襲われ、銃を持った男達が現れたので助けを求めようとしたところ男達に気絶させられたらしい。どうやらあのモンスターと男達はグルだと判断しても良さそうだ。


 「これからどうする?」

 「まずは勝を見つけてそれからボートを探そう。この島から脱出するんだ」


 俺は男から奪ったハンドガンのマガジンを抜いて残弾を確認する。弾は残り7発、これでどこまで行けるかだな。

 早速、勝を探しに歩き始める。おそらくそう遠くには行っていないはずだ。





 しばらく歩き北の方角に進むと水道、トイレ、炊飯場等がある場所にたどり着く。どうやらキャンプ場みたいだ。

 水道の蛇口を捻ると当然だが水が出る。一旦はこれで水分補給ができそうだ。


 「たすかった~」


 八重樫は浴びるように水を飲み休憩する。近くにモンスターは見当たらない。今のうち役に立つものがないか探す。

 キャンプのベンチに向かうと一人の女性を見つける。女性は本を読んでおり、くつろいでいた。もしかして今の状況を知らないのか?

 俺はその女性に声を掛けた。


 「おい、あんた!ここは危ないぞ!」

 「……あなたは?」

 「俺のことはどうでもいいから一緒に逃げよう!」

 「この状況でまだ生き残りがいるとは……あなたなら私の夢を叶えてくれるかもしれません」


 いったい何を言っているんだ?そしてこの状況と言うことはこの女性は現状を理解していることになる。もしかしてあの男達の仲間なのか?


 「れ、蓮……助けて」


 八重樫の方向を向くととても苦しそうにうずくまっている。近づこうとすると女性は俺の手を掴み止めに入った。


 「近づいては行けません」

 「何を言っているんだ?」

 「彼女は……もう手遅れです」


 女性が首を振ると八重樫は悲鳴を上げ、背中から触手が生えていく。足は獣の様に毛が生え、腕は刃物の様に鋭くなっていく。


 「な、何で?」

 「もしかして彼女はこの島の水を飲んでしまったのではないですか?帝国はこの島の水道に人を化け物に変える薬を混ぜていましたからね」

 「は?帝国?薬って何であんた知っているんだ!?」

 

 女性に問いかけるがモンスターになった八重樫はこちらに走ってその刃物になった腕で切り裂きに来る。

 

 「八重樫!やめろ!!」

 「無駄です。彼女はもう死んでいます。今目の前にいるのは化け物です」

 

 女性は俺に黒いスマホを渡す。見たところ電源がついていないようだ。何でこんなのを渡すのかを聞くと資格があるならそれはあなたを助ける力になると答える。

 

 「死にたくないなければ起動しなさい」

 

 彼女の言葉を信じるわけじゃないが俺は黒いスマホの電源ボタンを押し起動する。すると画面には“Messiah・System”と文字が表示されて黒い渦が俺を包む。


―絶望タ~イム♪―


 体にパワードスーツのような鎧が装着されて俺の姿は変わった、力がみなぎってくる。それを見た女性は喜び始めた。

 

 「ようやく出会えました。私の夢を叶えてくれる人!」

 

 モンスターになった八重樫は俺に攻撃を仕掛けてくる。しかし先ほどは違い動き遅く感じる。俺は八重樫の腕を掴んで投げた。すると思った以上に力が入り八重樫は空に飛んでいく。

 

 「ガアアアアアアア!!」

 「もう一度言いますが、彼女はもう死んでいます。彼女の体を奪った化け物を倒すなら今です」

 「うおおおおお!!」


 腰に付いている黒いスマホが光り出し右足に黒いオーラが纏う。

 俺はモンスターに向かってジャンプしオーバーヘッド・キックを決める。モンスターは地面まで吹っ飛び数秒後に爆発した。

 地面に着地すると変身は解除された。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 「お見事です。あなたは資格を手に入れ力を得ました」

 「お前は……いったい何者なんだ」

 「私はウインチェルと申します。あなたは?」

 「来須……蓮だ。蓮でいい」

 「蓮さん。あなたにお願いがあります。私と協力して私の夢を叶えてくれませんか?協力している間はそのDark Messiah System Phone……略してDMSPをお貸しします」


 DMSP、この黒いスマホの名前らしい。しかしこの力があれば勝を……大切なものを守れるかもしれない!

 俺はウインチェルの提案に乗った。

 

 「で、あんたの夢って何だ?」

 「私の夢、それは……」

 「お兄ちゃん!」


 その声を振り向くと勝がこっちに走ってくる。俺は急いで勝に近づいて抱きしめる。


 「勝!!」

 「お兄ちゃん、ごめんなさい!ぼく……怖くて」

 「ああ、すまなかった。怖かったよな?でももう大丈夫だ!俺はこの力でお前を守れるんだ!」

 「うん!さっき見ていたよ!お兄ちゃんがあのモンスターをやっつけたところ!!」


 どうやら勝は八重樫があのモンスターになった瞬間は見ていないらしい。しかし好都合だ。勝には悪いが本当のことは言わないでおこう。


 「勝、この島から脱出しよう!」

 「うん、お兄ちゃんがいれば怖くないもん!!」

 「ギャオオオオオオオオ!!」


 突然地面から黒い粘液が飛び出し、触手が勝を捕まえる。俺は吹き飛ばされて倒れた。

 

 「勝!!」

 「お兄ちゃ…」


 次の瞬間、勝はそのモンスターの口に入れられモンスターはよく噛んで食べる。一瞬だけ口が開いてその先には勝だった肉が見えた。


 「ウン、オイシイ、アリガトウ……レン……」

 「う、うわあああああ!!!!」


 その黒い粘液の正体は静香を喰ったあのスライムだった。俺は怒りで我を忘れ、もう一度DMSPを起動し、スライムを殴り続ける。


 「返せ!!返せ!!弟を、勝を返せぇ!!!」

 「レン……イタイヨ……」

 「その声でしゃべるな化け物!!」

 

 黒いオーラがスライムを包み、スライムは中へと浮いていく。

 

 「消えろおぉ!!」

 

 そのスライムを握り潰す様に手を握るとスライムはオーラと共に文字通り消えた。

 倒すことはできたが勝を助けることはできなかった。この力があれば弟を助けることはできたはずなのに!

 これ以上は何もする気力にならない。俺はそのまま倒れ込んだ。



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