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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
13章 テイク・バック・ザ・フューチャー編
125/150

125話 幸せな日

 

 オゼットが黒い空間に入って数時間後、来須蓮は隠し部屋で一眠りにつく。これから忙しくなるので今の内に体力を温存するためだ。

 頭がぼやけ始め、彼は懐かしくも忌々しい夢を見ることになる。





 時は遡って俺は家で目を覚ます。

 今日は確か3人の友人達と弟の(まさる)で女木島に遊びに行く約束をしていたんだった。

 今の季節だと屋台が並び、思いっきり泳ぐことができる。

 車で高松に行き船で女木島に向かう。勝は船に乗った事がなかったので大はしゃぎしする。


 「弟君は何才?」

 「今年で10才だ」

 「かわいい~食べちゃいたい!」

 「おいおい」


 杉崎(すぎさき)(しず)()八重樫(やえがし)()里奈(りな)はほっこりしながら勝を眺めていた。俺は勝にあまり走り回らないように注意をすると勝は駄々をこねる。


 「子どもは元気でいいね~」


 高木(たかぎ)(けい)()は勝を見ながら荷物とクーラーボックスを運ぶ。この荷物には鉄板やコンロが入っている。海に着いたらバーベキューしようと皆で考えたのだ。

 船の向かう先に目的地がはっきりと見え始める。勝は指をさして大はしゃぎしている。


 「あ、あれがめーぎじま!?」

 「女木島な。この島の名前を聞いてピンとこないかもしれないけど、この島は別名“鬼ヶ島”と呼ばれているんだ」

 「あの桃太郎の?」

 「そう、鬼ヶ島は桃太郎が鬼を退治して鬼無という地名になり、大正3年に女木島にある洞窟を発見したことによって桃太郎の鬼ヶ島=女木島と伝わったらしい」


 豆知識を披露したところで皆は「ふーん」とそこまで興味をもたなかったが、そんな雑談をしている間にアナウンスが流れる。


 ―間もなく女木島です。皆様お忘れ物なきようお願いいたします。本日はご利用いただきありがとうございました―


 「お、着いたか」

 「皆行こうぜ」


 船から降りると奥には砂浜と屋台があり目的地である海はとても人が集まっており活気にあふれていた。


 「よーし遊ぶぞ!!」


 5人は設置してある脱衣所で水着に着替えてバーベキューができる場所を確保する。俺と勝は泳ぐ前に準備体操をして高木はサーファーボートで浮いて波を待っている。

 杉崎と八重樫は勝を連れてボール遊びをする。その間に俺は持ってきた大型コンロと鉄板を設置し肉を焼く準備をする。

 

 「お兄ちゃんも遊ぼうよ!」

 「まぁ待てって、もう少ししたら昼ご飯できるからその後でいっぱい遊ぼうな」

 「うん!!」

 「蓮君、私も手伝うよ」

 「ありがとう」

 「ぼくも手伝う!」

 「じゃあ、皆で昼ご飯作ろうか」


 杉山はコンロに火をつけて鉄板を熱する。少量の油を入れて全体にのばし、勝は肉を次々と入れる。俺は肉を焦げないように焼いていくといい香りで一気にお腹が空いてきた。

 そしてある程度肉を焼いたら今度は鉄板の半面で焼きそばを作る。定期的に麺を動かさないと鉄板に引っ付いてしまうので意外と難しい。

 

 「……よし、できたぞ!」

 「それ、いただき!」

 

 俺が焼いていた肉を杉山はつまみ食いをする。


 「おい」

 「うん、美味しい。ありがとう蓮」

 「お姉ちゃんずる―い。僕も食べたい」

 「ごめんごめん。さぁ皆で食べよっか」

 「高木兄ちゃんは?」

 「ああ、あいつはいいよ。サーフィンの邪魔しちゃ悪いし」


 高木を除いて皆で焼肉と焼きそばを食べることにした。鉄板で焼きそばを作るのは初めてだったので少し不安だったが、上手くいったみたいだ。

 

 「蓮が作る料理は美味いね~。あんた良い嫁さんになれるよ」

 「おい、俺は男だ」

 「それでも嫁さんは嬉しいだろうね。ねぇ静香?」

 「ちょっと、何か意味深な発言ね」

 「べっつに~」

 「お兄ちゃん、お肉ちょうだい!」

 「はいよ。肉以外にも野菜も焼いてあるぞ」


 勝に肉と野菜を皿に盛ると勝は嫌な顔をするが、渋々と食べる。


 「いや~久しぶりに大きい波に乗れたわ。皆見てくれたか俺の勇士を……っておい、いつの間に食べてんだよ!?」

 「あ、高木お帰り。あんたの分はとってあるわよ。野菜多めで」


 八重樫は高木に皿を渡す。野菜多めと言っていたが皿には野菜しかない。肉はないのかとクーラーボックスの中を見ると肉や焼きそばの麺はなくなっていた。

 仕方なく野菜を食べた後、屋台の焼き鳥と焼きそばを買おうとすると杉山と八重樫にかき氷を買ってきてと使い走りに行かされた。

 

 「流石に可哀想だから俺も行こうか」

 「いいよ蓮は。それにあんたは静香と海に行っといで」

 「えーお兄ちゃんと遊びたい」

 「坊やはお姉さんと良いことしましょうね」

 「お姉さん?おばさんじゃなくて?」

 「おいこらガキ」

 「逃げろ~」


 勝は海に走ると全力で八重樫も勝を捕まえに行く。

 俺と杉山と二人だけになってどうしようかと聞くと少し風に当たりに行きましょうと杉山は俺の手を引っ張って端側の海岸へと向かった。

 

 

 

 

 人気があまりない海岸、少し暑さは残るが涼しい風が吹いている。

 杉山は先に進んで行き、後を追いかけるとピタリと止まり出す。


 「ここでいいかな」

 「どうしたんだ?」

 「蓮は覚えている?初めてあたしとあった時のこと」

 「あの時は大学で心理学の講義で被ったんだっけな。俺と圭太で話していたら先生が怒って講義室から出てけって怒られて」

 「そしてその隣に座っていたあたしと麻里奈までとばっちり受けて講義室にでたら麻里奈と高木が喧嘩してさ」

 「ああ、あの二人を止めるのは大変だったが、それがきっかけで俺達仲が良くなったもんな」

 「本当に不思議よね。今ではこうして海に行くこともあるぐらいだし。でもね、そうやって遊んでいく中であたしは蓮ともっと仲良くしたいって思い始めたの」

 「静香……」

 「あたしを……あなたのそばに……あたしの彼氏になってほしいの」

 

 杉山の発言で少し無言の時間が続く。俺は勇気を出して答えを言う。


 「俺も……す」


 言い切ろうとした瞬間、いつの間にそこにいたのかわからないが杉山の背後には見たこともない黒い粘液……スライム?がゆっくりと近づいてまるで杉山を捕まえようとしている。


 「危ない!!」

 「えっ」


 俺が杉山を庇おうとすると黒いスライムは触手で俺を吹き飛ばして杉山を掴み、取り込んだ。

 

 ボキッ!バキバキッ!!グシャリ!ゴックン!

 

 黒いスライムは杉山を食べた。俺はあまりにも理解が出来ず思考停止していたが、本能がヤバいと告げ全力で走り出した。

 いったい何が起きているのかわからないがここにいてはいけない気がする。急いで皆のところに戻らなければ……。

 

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