124話 さよなら、向こう側の世界
赤い月が召喚される前、女神フェリシアは教会でとある人物に合う。その人物はデスニア帝国の転移者であるレイブンの目的が判明したと言って……そしてその野望を阻止する方法を聞きたいと。
夜の教会は誰もいないので会いやすいと思いフェリシアは教会で現界した。
そして彼女……ウインチェルは現れた。
彼女はレイブンの目的は魂を集めて時の邪神“ヴェノム”を復活させるつもりだと言う。
ヴェノムはこの世界を破滅させて魔族だけの世界を作るつもりだったのだが、それを知った神々とフェリシアは彼を封印し次元の狭間へと送り込んだ。そしてこの世界の監視を任されたのがフェリシアなのだ。
「まさか、あいつが復活するとはね……」
「ウェルフェナーダを爆破するとはとんでもない人達です。そしてその影響で邪神をこの世界に召喚されれば私達に勝ち目はありません」
「そうね、過去にあいつを封印したこの結晶石を使いなさい。これならどんな神だって封印できます」
「どんな神でも……ですか」
ウインチェルはその結晶石を貰うとポケットにしまう。
ガサガサッ
教会から東側の草むらが動く。
「誰!?」
草むらから出てきたのは黒いIMSPを持った男だった。
男は黒いIMSPを起動してこちらに襲い掛かる。
「この力は私の魔力……いったい何故この男が? ウインチェル!ここは私にまかせ…」
フェリシアがウインチェルを庇おうとしたその瞬間、ウインチェルはフェリシアからもらった結晶石を発動する。フェリシアは結晶石に吸い込まれ始める。
「ウインチェル……何故?」
「申し訳ございません、フェリシア様。全ては私の夢のためです」
フェリシアは完全に結晶石の中に入った。
「あともう少しで私の夢は叶うのです。誰にも邪魔はさせません」
そして現在、ウインチェルは俺にフェリシアを封印したことを話した。
何故、彼女がこんな事をしたのか?彼女の夢とはいったい何なのか?それを聞こうと尋ねるが彼女は魔法で俺の動きを止める。指一本動かないし口を開くこともできない。
「オゼットさん、今まで本当にありがとうございました。あなたのおかげでマリー様は無事に救出し、しかもマリー様を生贄に捧げずとも赤い月の中にいる魔獣……アームスヴァルトニルを降臨する事が出来るのですからあなた達には本当に感謝していますよ」
「あ……あが……」
「ああ、すみません。魔法で口を開けませんでしたね。安心してください、あなたは元の世界に帰れますよ」
ウインチェルは黒い空間を展開すると俺をそこまで引きずる。俺は必死に抵抗しようとするが、魔法で動けない。さっきウインチェルはマリー様を生贄に捧げずとも赤い月の中にいる魔獣を降臨できると言っていた。いったいどういう意味だ?しかも“あなた達”ってまさか……。
怒りを力に変えて指を無理やり動かし、IMSPを起動する。
「これは驚きました。自力で私の魔法を解くなんて」
「ウインチェルさん。あなたは真理をその魔獣の生贄にするつもりですか?」
「はい、そうですよ」
「ふざけるな!!」
俺はライフセイバーでウインチェルに斬り掛かるとガキンッと剣が止まる。目の前にはあのヒーローもどき……メシアがウインチェルを庇ったのだ。
「蓮さん!」
「俺達の邪魔をするな。自分がいた世界に帰れ」
メシアは『カオス・バニッシュ』で俺を蹴って黒い空間の中まで吹っ飛ばした。
「ありがとうございます。蓮さん」
ウインチェルは黒い空間を閉ざすとジュネヴァからもらった魔導書を焼く。メシアは変身を解除し胸ポケットに入っている写真を取り出す。
「もう少しで未来は変わる。待っていてくれ……皆……」
男はどこか寂しそうな顔をして窓を覗いた。




