123話 赤い月の謎
イスフェシア城の庭にてミーア、ラルマ、ラーシャは退屈でどうやってひまを潰そうか考えている。外に出かけたいが今の外は危険だからとウインチェルとマリーに言われて最初は城内で遊んでいたが段々とやれることをし尽くしたので外に出たい欲求が抑えられないでいた。
アルメリアに外で遊びたいと駄々をこねるが彼女は駄目と一言で終わらせる。
「行きたい行きたい行きたーい!!」
ミーアの駄々が更にエスカレートするとアルメリアは仕方ないと連絡石でとある施設に連絡した。
数十分後、ソルジェスのメンバーの一人であるレバンが呼ばれた。
「で?依頼内容はこの子達の遊び相手になれと?」
「そうよ」
「ふざけてんのか、こんな状況で?今どんだけ忙しいと思ってんだよ」
「それは私達も同じよ。そしてギルドの中からあなたが来たってことはあなた他の傭兵達よりも余裕があるって事よね?」
「だからって俺にシッターさせてんじゃねえよ!」
レバンが怒るとアルメリアは溜息をついた後、彼の懐に瞬時に近づき胸ポケットに何かを入れる。それを確認すると袋の中には大量の金貨が入っていた。これだけで一カ月の給料分はある。
「……俺だってソルジェスの傭兵だぜ?金で俺達を動かせると思うなよ!」
「あらそう、じゃあ他の人に頼むわ。確かディズさんはお金に困っていたから彼に頼もうかしら」
「さ~て、子ども達よ。何して遊ぼうか?お姉さんにお小遣い貰ったからいろいろ買えるぞー!!」
「「「わーい!!!」」」
四人は城を出る。ひと段落ついたアルメリアは自分の部屋に戻り、暗殺部隊からの報告書を見る。その内容は赤い月に関連する情報でその禁術を発動可能な人物をリスト化したものだ。
その中から怪しい人物をあげるとまずシェリー・サンガリー。この人物はウインチェル同様に魔術の研究をしているのだが主に闇の魔術を研究しており研究員達から最近様子がおかしいという声があがっている。
続いてスパニッシュ・ミルクメード。彼女は魔術を使って国中の宝石を盗んでいる指名手配犯だ。彼女の魔法は宝石を莫大な魔力に変換できる能力を持っているらしくその魔力を使った魔術はイスフェシア皇国でトップクラスの力だという。
後はマジソン・アベニュー。彼は人やモンスターを操る魔法を得意とする魔術師で操った者の魔力を自分のものにできるらしい。
そして最後にオルトカリス学園の学園長にしてこの国で一番の魔術師といわれるジュネヴァ・フロート。
彼なら禁術を発動するのは容易で仮に彼が犯人なら一人を除いて誰も彼を止めることができないだろう。
「さて……」
アルメリアは部下に3人の偵察及びスパニッシュ・ミルクメードは発見次第逮捕するように指示をだした。
そして彼女は渡された報告書以外にも禁術を発動できる人物を調べるため、自分の部屋に戻った。
一方、イスフェシア城の書庫に戻った俺とウインチェルはジュネヴァから渡された魔導書を開くが俺にはまったく読めない文字通り呪文だった。
この魔導書はウインチェルに解読してもらうことにして俺はもう一度赤い月に関する資料や本を探す。
「どうウインチェル、何かわかりました?」
「う~ん、先ほど学園長が言った通りですね。しかしそれだけのために学園長がこれを渡すとは思えません。何かあるはず……」
今のところ赤い月を止める方法は見つからず、赤い月まで行く手段もない。
「ロケットであそこまで行けたらな~オメガ・アイギスで光にしてやるのに。国王に頼んで作ってもらえないかな」
「あそこに行ける乗り物を作れるとは流石は異世界転移者ですが、作っても間に合わないと思いますよ」
ウインチェルは魔導書を閉じ自分の部屋で調べると移動した。
この城の書庫なら過去でどうやって対処したのか方法があると思ったのだが見つからなかった。今日は早朝からモンスターを討伐したり資料を探したりと動き回った所為か非常に眠い。これを機会にフェリシアに会って何か知らないか聞いてみるのも良いかもしれないな……。
睡魔はどんどん強くなり深い眠りへとつく。
思った通り、フェリシアとよく合う空間に辿り着いた。暗闇の奥に向かうといつものテーブルと椅子がある広場なのだが何かがおかしい。そう上を見上げるとあってはならない物が存在している。
「赤い月……」
そしてフェリシアの姿が見当たらない。辺りにはテーブルと椅子以外は何もないので隠れる事もできない。
そういえばジュネヴァはあの月を召喚するには膨大なエネルギーか何百万の魂を生贄にしなければ復活しないと言っていた。もしも赤い月が魂を生贄にして召喚したのではなく、膨大なエネルギーを使って召喚したならそのエネルギーはどうやって手に入れたのだろうか?
「まさか!?」
俺は急いで目を覚ましてウインチェルの部屋へと向かう。ウインチェルはそんなに焦ってどうしたのか?何かわかったのかを聞きながら俺を落ち着かせるために椅子に座らせる。
「何かあったのですか?」
「俺はてっきりレイブンが魂を使って赤い月を召喚したと思ったんだが、違う気がするんだ」
「しかしあの赤い月は……」
「そう、学園長が言っていた召喚条件は膨大なエネルギーか何百万の魂を生贄にするって話だ。レイブンは相手の魂を吸収する事ができる武器を持っている。しかし、もし膨大なエネルギー……魔力で召喚したとするなら」
ウインチェルは本を閉じて俺に目線を向ける。
「一人の魔術師では無理ですね。オゼットさんみたいに魔力には限りがありますので」
「そう、それが可能な人物は俺ともう一人いる……フェリシアだ」
「まさか!?ありえません!」
「そうフェリシアではない、さっきフェリシアの部屋に向かったら誰もいなかった。しかしそのフェリシアが誰かにさらわれたのなら……」
「つまり、フェリシア様を誘拐して女神の魔力を使ってあの赤い月を召喚したと?しかしあの空間に入れるのはあなたと真理さんだけでは?」
そう、最初は俺もそう思っていたのだが別にフェリシアがあの空間から出られないわけじゃない。最初あいつにあった時に世界を監視はできるが介入すると減給され買い物ができないと言っていた。
つまり、その気になればこの世界または俺達の世界に行くとこは可能だったことになる。
「そしてあいつにこの世界に行く気にさせるような事態があったとするなら」
「赤い月ですか?」
「そうかもしれないけど、この世界に来たタイミングはあの月が召喚される前だろう。それ考えるとあの女神を呼べる人物かつあの月を召喚出来る魔術師は一人しかいない」
「……」
ウインチェルは急に沈黙をする。俺がいったい何が言いたいか察したようだ。しかしその行動は同時に認めているようなものだ。
「ウインチェル、お前なのか?」
「…………ふっ」
彼女は笑い初めた。普段の彼女からは想像もできない人を見下すような目で俺を見て、ゲラゲラと笑った。




