121話 蘇りし邪神
月の光が照らす夜空の中、カタカリ大草原の北西にある平地でレイブンはラピス、ルアール、ジャックと共に儀式の準備をする。彼のポケットにはヴェノムに渡された妹の魂が入ったカードを取り出すと早く亜紀会いたい所為か、心臓の鼓動が早くなる。
今まで集めた魂の数は100万以上ある。これでヴェノムを復活させれば約束通り亜紀は記憶をそのままの状態で新しい体を手に入れてこの世界に転生する事ができる。
「もうすぐだ……待っていろよ。亜紀」
儀式に必要な魔法陣を書き終えた3人は配置について魔力を魔法陣に注ぎ込む。すると魔法陣は光り出し、レイブンはCCSを魔法陣にかざす。
「漆黒の闇より時を支配する邪神よ!今こそ降臨し、この世界を蹂躙せよ!蘇れ、ヴェノム!!」
魔法陣から黒い稲妻が落ちると上空にひびが割れる。そこから巨大な手が次元の狭間を掴み、中から巨大な黒き獣が姿を現した。
「これが……邪神ヴェノム」
「これであたし達の願いが叶えられるね!」
「さあ中佐殿、今こそあなたの願いを叶える時です」
ラピスはレイブンの手をつないでヴェノムの目の前に行く。
「………久しぶりだな。黒井圭一、いやこの世界ではレイブンだったな」
「おう、約束通り亜紀をこの世界に転生してもらうぜ!」
「よかろう」
レイブンはカードをヴェノムにカードを渡そうとした瞬間、何処かで声が聞こえた。
―絶望タ~イム♪―
その声の方向を向くと何処かの特撮番組に出てきそうな黒いヒーローがこちらに飛んできた。
男はヴェノムに向かって心臓部を貫く。
「『オーバー・ドレイン』!!」
「馬鹿な!?」
ヴェノムの体はその男に吸い取られるように消えていく。レイブンはその光景を見てぶち切れて男にチェーンソーで斬り掛かる。ヴェノムは完全には消えなかったが、まるで幽霊の様に透けておりその場に跪く。
「てめえ!何てことしやがる!!」
「……」
「中佐殿、援護します!」
ラピスとルアールは魔法で男に攻撃する、すると別の方角から雷撃が飛んできて2人の魔法を相殺した。
その魔法を発動したのはメッセンジャーだった。
「メッセンジャー、おめえ何の真似だ?」
「邪魔を復活して頂き、誠にありがとうございます。そしてあなた達919小隊の役目は終えましたのでここで消えていただきます」
ジャックはメッセンジャーに斬り掛かると上空から落雷が落ちて感電する。その後、地面が割れてそのまま落下していく。
「ジャック!!」
ルアールは矢をメッセンジャーに放ち、能力で矢を爆発させる。だが、メッセンジャーはバリアで攻撃は効いていないようだ。
「『デスライトニング』」
メッセンジャーはルアールに電撃を浴びせる。ルアールは意識を失いその場に倒れる。
「ルアールさん!」
ラピスは幻獣を召喚してメッセンジャーを襲わせるが彼女に襲い掛かった幻想は突然燃えて灰になった。
レイブンはCCSを起動して時を止める。そしてメッセンジャーに斬り掛かるが黒い男がその攻撃を防ぐ。
「馬鹿な!?こいつ時を止めた世界で動けるのか!?」
「『カオス・バニッシュ』」
黒いオーラを纏った蹴りがレイブンを吹き飛ばすと同時にCCSの効果が失われ、時が動き出す。
ラピスは何が起きたのかわからないが怪我をしたレイブンに回復魔法で癒すとメッセンジャーがラピスの目の前に現れる。
「あなたはまだ利用価値があります。我々と来ていただきますよ」
メッセンジャーはラピスの頭に触れるとラピスはその場に倒れ込んだ。
必死に起き上がりラピスを助けようとレイブンは『グラビティ・プレッシャー』を放つ。メッセンジャーは『ディセーブル・マジック』という相手の魔法の発動を無効にする魔法を唱えた。
男はレイブンの首を掴んで持ち上げるとメッセンジャーは黒い空間を出現させる。
「あなたは邪魔ですけど、邪神を復活させたので命だけは助けてあげます」
「て、てめえ……絶対に……ぶっ飛ば……して……やる」
「あ、でもこれは頂きますね」
メッセンジャーはレイブンからCCSを取り上げようとするとレイブンは最後の力を振り絞りメッセンジャーの顔面を殴る。メッセンジャーが付けていた仮面は砕けその顔を見るとレイブンは驚いた。
「お前……」
男はレイブンを黒い空間に放り投げた。そして空間は閉じてヴェノムのところに向かう。そして先程と同じ攻撃でヴェノムを貫く。
「『オーバー・ドレイン』!」
「ぐおおおおおおおおお!!!!」
消えかかっていたヴェノムは完全に男に取り込まれた。
男は変身を解除し黒いIMSPをポケットにしまう。
「大丈夫か?」
「ええ、仮面が壊れただけですので……そして計画に支障はありません」
メッセンジャーはフードを深く被る。男は共にラピスを抱えると2人は転移魔法で何処かと消えていった。




