117話 黒き救世主
こいつ、いつから俺の背後にいたんだ?まったく気配に気づかなかったぞ。しかもこの魔力……只者じゃない。
すぐに距離を取ろうと離れると彼女は魔法を発動する。そうすると景色は歪み、先程いた会場とは別の……まるでコロシアムみたいな場所に飛ばされた。
「転移魔法か?」
「いえ、これは結界を張って結界内に別の空間を作りました。あなたに邪魔をされると困りますので、ここで時間稼ぎをさせていただきます」
魔法で別の空間を作ったとさらっと言うがそんな魔法が使える者などそうそういないはず。何者なんだ?
仮面を付けた女性の後ろからもう一人現れる。見たところ武器や防具などを持っていないが……。
しかし男はポケットからとんでもない物を取り出す。それは黒いIMSPだ。
「馬鹿な!?あれはブルメが持っていてそれをエレザさんが破壊したはず!」
「帝国の技術を舐めないで頂きたいですね。ではお願いします」
「……変身」
―絶望タ~イム♪―
男は黒いIMSPを起動すると端末から女性の声を発して前回ハルベルトで戦った黒いヒーロースーツの姿へと変わった。
「お前があの時のヒーローもどきか!」
「マスクドアーマー“メシア”、世界を救う者だ」
メシアと名乗る男は高く飛ぶとそのままこちらに誘導する飛び蹴りをした。
こちらもジャンプして避けるとメシアの飛び蹴りは地面を砕く。
「『タキオンソニック!!』」
『タキオンソニック』で相手に近づき剣で一撃を与えると彼は片腕で防御する。
前もそうだったがこの高速移動の状態で攻撃を見切るのは普通では不可能なはず、しかも刃物を腕で防御するとか……まさかこいつ転移者か?
俺はサンライトフォームに変わり『フューチャー・アナライズ』で未来予知をする。これなら相手が同じ速さでこようが先読みして対策できる。メシアの蹴りを受け流して剣で斬る。
「……ほう」
メシアは黒い波動を放つと『フューチャー・アナライズ』で見ていた未来が消える。
「どうなっているんだ!?」
「無駄だ!」
メシアは炎を纏った拳で俺を殴り吹っ飛ばした。『タキオンソニック』で距離を詰めようとするが発動しない。あの黒い波動はこちらのスキルが発動できなくなるのか?ならば……。
「『ガトリング・アイス』!」
魔法を発動するが魔法陣が出てこない、魔法も発動が出来ないらしい。
しかしこちらのステータスは下がってはいない。IMSPの効果までは無効できないらしいな。そうなると残りできるとしたら接近戦で戦うしかない。
「このぉ!!」
剣と拳、ふたりの攻撃は烈しくぶつかり合う。
メシアは右足にエネルギーを溜めて俺を蹴るとエネルギーは俺に移って鎖へと形が変化し地面に刺さる。
「う、動けない!」
「『カオス・バニッシュ』!!」
黒いオーラを纏って飛び蹴りを受ける。
「ぐわぁぁぁ!!」
これが奴の必殺技なのか?特撮番組とかで見たことある攻撃で俺の体は光って爆発する。
ダメージを負い過ぎてIMSPの電源が落ちて元の姿に戻る。これはまずい、この状態で攻撃なんて喰らったらミンチどころじゃ済まなくなる。
「そこまでですメシアさん、時間稼ぎは充分です」
「いいのか?ここで奴を始末しなければ今後の計画に支障が出るかもしれないぞ?」
「目的は時間稼ぎですから。それに今の彼ではあなたには勝てません」
仮面を付けた女性は結界を解除し場所はエグザードの会場に戻る。そして二人は転移魔法でこの場から消えた。
あの二人は何者なのか?疑問は残るが今は会場が何やら騒がしい。IMSPの治癒能力を使って体の傷を癒して俺は会場に向かった。
一方、仮面を付けた女性とメシアはコンダート王国から離脱してアーザノイル城の客間に転移した。
「……これで良かったのか?」
「はい。コンダート王国、エンペリア王国、出雲国には認識阻害の結界を張ることに成功しましたのでもうあそこには要はありません」
「トリックスとエビファイは?」
「もう必要なくなったので後は好きにさせましょう。仮に国王と女王の命を奪えたとしても私の計画とあなたの夢はもう誰にも邪魔することはできません。そうでしょう?蓮さん」
メシアは変身を解除してソファーに座る。彼の名は来須蓮、オゼットやワタ達と同じ世界からやって来たのだが細かく言うと彼は時間軸が違い、5年後の未来の平行世界からやって来た。
彼の世界では帝国が転移魔法で彼の世界に転移して世界を滅ぼした。彼はメッセンジャーによって帝国が転移する前の時代に召喚され、帝国が転移魔法を使う前に歴史を変えようと黒いIMSPを使って戦うのであった。
トリックスとエビファイは帝国の為に今回の事件を計画している。メッセンジャーは女帝の指示で彼らを動かしているが、実際は女帝の指示というのは真っ赤な噓である。
「俺はメシア。この力で未来を取り戻す!」




