114話 料理対決開幕!
そして3日後、今回の料理対決の主催者であるトリックス・メイによってガンダルシア駅近くにあるエグザードに招待される。
会場には国王と女王を護衛する近衛軍や陸軍憲兵軍、王立警視庁首都警備師団というイスフェシア皇国で言うとこの騎士や警備兵が巡回している。この状況なら最近問題になっている民間人がモンスター化になったとしても対処はできるだろう。
会場の入り口では検問が行われて凶器やそれになり得る物は没収しているみたいだ。
トリックスはマイクを持って観客達に叫ぶ。
「レディース・アーンド・ジェントルメン!!この度はこのエグザードで4人のシェフが戦い、このアーガイルで一番美味い料理を作ってもらいます!そして優勝者には賞金1億メルとアーガイル・ブランドを手に入れる事ができます!それではまずシェフの紹介です!!」
トリックスは手を挙げるとステージと思われる場所の幕が上がりそこには今回参加する4人のシェフ達が立っている。
「まずは一人目!世界中を旅してその料理を学んだワールドシェフ、“マスル・マチョ”!!」
マスルはダブルバイセップス・フロントで自分の筋肉を観客達にアピールする。
「続きまして二人目!その料理を食べると“全てが上手くいく”と言われ、作る料理の食材はなんとモンスター!!コンダート王国のモンスターシェフ、“エビファイ・タルタンソス”!!」
エビファイは観客に軽く一礼をする。
「そして三人目!ベリアナにある料理教室の仮面を付けた先生!マスクド・ティーチャー、“バサリオン・チキナゲ”!!」
このバサリオンは宿の店主の友人であり、先日モンスターに襲われ怪我をしたので代わりに俺がバサリオンさんに変装しているのだ。とりあえずバレないようにIMSPの電源は切って黙り込んでただ立っていることにした。
「そして四人目!ガレアにある宿屋の店主、“レイヤード・インフィニティオン”!!………なのですが、彼は最近起きているモンスター化事件で怪我をしてしまい参加出来なくなりました。しかし!彼はなんと今自分の宿屋を利用している客に代理人を頼んで今回の料理対決に参加させました」
料理長はステージにいる一番端っこで恥ずかしそうに隠れている。トリックスは彼の腕を引っ張って紹介する。
「では紹介しましょう!彼はイスフェシア皇国のイスフェシア城にある食堂の料理長!彼の料理は騎士達のエネルギー源そのもの!魔法の国のシェフ、“エルキューレ・ナイン・ピック”!!」
「え、えーと名前は先程紹介にありましたが、私のことは“料理長”と呼んで頂けると幸いです」
料理長はまたステージの端に隠れた。というか料理長の本名を聞いた俺やモーレアとアルメリアはそっちに驚いている。
そして次にトリックスは審査員の紹介をする。
「そして彼らの料理を審査するのはまずは我らがコンダート王国の国王、“ワタ”陛下!」
観客に盛大な拍手をされ、ワタは観客に軽く手を振った。
「同じくコンダート王国の女王“コンダート・メリア” 陛下!」
「皆の料理に期待しているわ」
コンダート・メリア……コンダート王国女王にしてワタの正妻候補であり、ワタをこの世界に召喚した張本人だそうだ。
「続きましてこのアーガイル大陸の北東にある国、イスフェシア皇国の第三女皇、“マリー・イスフェシア” 陛下」
マリー様はニコっと微笑みながら手を振る。マリー様の傍にはアルメリアとモーレアが護衛をしている。
アルメリアはこの国の主力武器である銃の対策のために能力で3人の周囲には-219度の冷気で空気中の窒素や酸素が凍って壁を作っている。そしてアルメリアは審査員全員に温度の影響を受けない魔法を使ってこの冷気の影響を受けずに氷の壁を透明にして隠している。
これでマリー様を狙撃されても防げるそうだ。ちなみにマリー様しか守らないので他の審査員にはこの氷の壁を配置しないらしい。
「では紹介を終えましたところで10分後に1戦目を開始いたします」
トリックスは4人のシェフを1回戦の会場に連れていった。
そして4人はそれぞれの控室に案内される。正直俺は緊張してどんな料理を作ろうか悩んでいた。
連絡石を使って真理に事情を説明すると真理は「自分が楽に作れる料理でいいんじゃない?」と言う。
「いやいやいや!何かありませんかね!?」
『だって翼以外の人は料理長含めてプロのシェフでしょ?私が協力したところで勝てるはずないじゃない。これは翼がゲームでよく言っている“負けイベント”みたいなもんなんだから翼の好きなようにすればいいのよ』
真理に言われて吹っ切れた気がする。そうかこれは“負けイベント”、だったら俺なりの発想で勝負してやる!!
俺は元にいた世界で作って食べていた料理で勝負にすることにした。




