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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
12章 ファンタジー・トップ・シェフ編
111/150

111話 二つのレストラン(後編)

 

 一方、モーレアとマリーは料理を食べると“全てが上手く”と噂されている店“ヘルシャフト”に辿り着く。

 その噂を聞いた客達だろうか、店の外で待っている程の行列である。

 

 「どうする?結構並ぶと思うが諦めて別の店にするか?」

 「いいえ、こうやって並んでモーレアと話すのも良いと思います」


 マリーはこれまでデスニア帝国に洗脳されたり、その呪縛から解き放たれたとしても女皇としての責務を果たし続けていたのもあってほとんど自由に行動が出来なかった。せめてここでは彼女のやりたい事を優先させてあげたいとモーレアの胸は切なく苦しくなる。

 

 「仰せのままに」

 「もう、今の貴方は騎士団隊長ではなく私の友人、硬い話し方はなしよ。せっかくコンダート王国で旅行しているんだもの、一緒に楽しみましょう」

 「いや、旅行じゃなくて審査員として来ていること忘れんなよ?」


 モーレアはメニュー表を開きマリーと一緒に料理を見る。イスフェシア皇国では見たことがない料理が書かれている。一部に関しては名前的に気になる料理が目に付く。


 「このマグマピラニアの刺身って気になるな」

 「マンドラゴラのスープですっていったいどんな味かしら?」


 二人はこのモンスターを食材とした料理が気になってウエイトレスに注文した。

 そして数十分でその料理はテーブルに来た。

 

 「お待たせしました。マグマピラニアの刺身とマンドラゴラのスープでございます」


 マンドラゴラといえば根の部分が人間の様になっており、地面からひっこ抜くとこの世のものとは思えない叫び声を上げ、その声を聞いた者は即死すると言われているモンスターであり猛毒がある。そしてマグマピラニアとは火山などに生息しており、1300~1400度のマグマを泳ぐ魚だが、この魚とマンドラゴラを手に入れるのはかなり困難で調理として向かないはず……。

 二人はそれぞれ頼んだ料理を食べてみた。そして二人の口から衝撃は走る。


 「な、なんだこれは!?魚なのに牛肉や豚肉並みにジューシーさがある。しかも口の中で溶けるように消えやがる!」

 「マンドラゴラのスープもあっさりしていて美味しいわ」

 

 その美味しさが先ほどの疑問が頭から吹っ飛ぶぐらいの衝撃と感動を覚える。他の料理も食べたいのは山々がだが、時間がないのでとても残念だ。テイクアウトを出来るかをウエイトレスに聞くがこの店ではやってないらしい。

 二人はお会計をして店の外に出る。そして宿で留守番をしているオゼットの為に何かお土産を探すのであった。

 

 

 


 そして時は流れ夜、4人は宿に戻ってお互い店の情報を共有し始めた。アルメリアと料理長がいったヴェルトの料理名を聞いてオゼットは元の世界の料理を思い出す。そしてマリーとモーレアがいったヘルシャフトで食べた料理とメニュー表に書かれていた料理名を教えると皆驚いた。

 

 「まさかモンスターを食材とした料理を作るとは……」

 「だろ!?食べた事もないしどうやって料理したかも想像できねぇぜ」

 「あたしは遠慮しておくわ。いくら美味しいってわかっていても拒絶起こしそう」

 「いいなー皆、まぁ俺はここの奥さんが作ったかぼちゃスープをご馳走してもらったが、懐かしのおふくろの味で美味しかったよ」

 

 皆が食べた料理の話で盛り上がっている中、モーレアは鞄から何かを取り出してオゼットにみせる。

 

 「おうオゼット。これ駅にある店で買った酒だ。出雲酒っていう俺の故郷の酒なんだよ。一緒に飲もうぜ」

 


 モーレアは瓶の先端を手刀で切断させてどっからか買ってきた(さかずき)で注いでオゼットに渡す。

 一口飲むと清涼感のある味で飲みやすい。いわゆる(そう)(しゅ)(または(たん)(れい))と呼ばれる日本酒に近い味だ。

 

 「他にもいろんな出雲酒があるんだが俺はこれが気に入っているんだ」

 「いいですね。さっぱりしていてどの料理にも合いそうですね」


 マリーも飲みたいと言うとアルメリアが止める。どうして止めたのかを聞くと彼女はお酒を飲むと悪酔いするらしい。オゼットは頭の中で酔っぱらった真理を思い出すと理解して、さりげなく店主からもらったぶどうジュースをグラスに注いだ。マリーは渋々とぶどうジュースを飲んでお酒を我慢する。

 

 「よっと」

 「どうしました?」

 「ん、ちょっと外の風にあたってくるわ」


 モーレアは部屋から出てオゼットも後に続いて外に出た。





 外を出るとちょっと冷たい風が体にあたって気持ちがいい。空に雲は無く月明かりが街の見回しを良くしている。

 モーレアは腕を伸ばして近くのベンチに座る。

 

 「モーレアさん」

 「お、オゼットか。お前も風にあたりたくなったか?」

 「はい。ご一緒してもいいですか?」

 

 一緒にベンチに座るとお互いに何を話そうか考える。


 「……今更遅いかもしれないけどありがとな」

 「え?」

 「お前と真理のおかげでマリー様とイスフェシア皇国は取り戻せたし、デスニア帝国からの攻撃も今は大分減ってきた。復興が完了すればイスフェシア皇国は元の平和に戻るだろうよ」

 「そんなことないですよ。モーレアさんやウインチェルさん……皆のおかげで取り戻せたんです」

 「そうか。ところでお前は……元の世界に帰っちまうのか?」

 「そうですね。元々は真理を連れ戻す為にこの世界に来ましたのでいつかは帰ります」

 「そうか……」

 「もしかして寂しいんですか?」

 「……うっせぇ」


 モーレアが横を向いて顔を合わせない。オゼットはニヤニヤしながらモーレアの顔を見ようと移動するとモーレアはオゼットの顔をどけた。


 「痛いですよー」

 「おい、あれを見ろ」


 モーレアの言う通り指をさした方向を見るとサイクロプスが人間を襲っている。直ぐに止めようとIMSPを取り出すとモーレアが「ちょっと待て」と止める。

 しばらくすると襲われた男は心臓を抑えて倒れ込み次の瞬間、男はオークへと姿を豹変した。

 そして夜空の月は赤く染まるとサイクロプスとオークは住宅街で暴れ始める。

 

 「何ですかあれは!?」

 「俺が知る訳ねぇだろ。やるぞ!」

 「待ってください。あれは元々人間ですよね?なら殺しちゃダメです」

 「へっ!だったら殴って黙らせるまでだ!!」


 二人は戦闘態勢に入る。他にも街で(たむろ)をしているチンピラ達も次々とモンスターへと豹変する。

いったい何が起きているというのか?



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