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魔法の国と異世界転移者  作者: 旅人サン
11章 異世界とちびっこ三人組編
104/150

104話 パイロマニア


 時刻は20時になり純也、鈴木、玖珂の三人はその人物に住む家へと向かう。インターフォンを鳴らすとその人物は扉を開ける。彼はリュックとカバンを持っていてちょうど何処かに出かけようとしていたみたいだ。純也は道を塞ぐように立つ。


 「警視庁、捜査一課の玖珂と申します。原田彰人さんですね?」

 「そうですが?警察が何の用で?」

 「貴方を連続放火及び須藤明楽、松田聡、小早川春奈の殺害容疑及び麻薬取締法違反で逮捕しに来ました」


 鈴木は逮捕令状を見せる。


 「…………はい?」

 

 原田(はらだ)彰人(あきと)……松本(まつもと)(こう)(へい)の誕生日パーティーに参加していたオアシス製菓の社員だ。原田は何かの間違いじゃないかと容疑を否認すると玖珂と純也はこれまでの事件の犯行を説明する。

 

 「まずは須藤さんが放火された件について、まず貴方は須藤さんと合流しようと連絡をし、彼にリュックを持たせて秋葉原のあるビルに待つように指示した」


 「そしてリュックの中には大量の覚醒剤と目覚まし時計、エタノールが入っていた。目覚まし時計には電線が出ており先端にはマッチが絡んでいる。時計の針にはアルミテープで巻かれていました。もはや時限発火装置ですね。これを使用して指定の時間になった瞬間にマッチに火が付きエタノールに引火してリュックが燃えたんです。そして須藤はそのまま燃えて亡くなったのです」

 

 「次にXYZマンションでの放火について、これはとても手の込んだ犯行でしたね。マンション全体をどうやって燃やすことが出来たのか、それはポンプ室です。あのポンプ室だけ他の場所と比べて特に焼けていました。火元はあそこで間違いありません」

 「ポンプ室?」


 「とぼけなくてもいいですよ。あのマンションのポンプ室は受水槽方式と呼ばれる給水方法で水を一旦受水槽に貯水槽に貯水し、揚水ポンプで高置水槽に水を送りマンション全体の蛇口まで水道水を流れるようにする方式です。貴方は受水槽の中身を水の変わりにガソリンを入れ、ポンプ室にある増圧給水ポンプユニットを使ってガソリンをマンション全体に送った。そして後は1件目で使った時限発火みたいに時間を調整すれば現場にいなくても犯行は可能です。そしてそれらしき給水車と人物はマンション近くの防犯カメラに映っていました」


 玖珂が思いもよらない発言に対して鈴木と原田は啞然する。


 「待て待て待て待て、そんな事できる訳ないでしょ!?それにそれが出来たとしてもその人を確実に殺せないのでは?」

 「いいえ、貴方は松田さんに睡眠薬を飲ませたんですよ。松田さんの体にはエスタゾラムが入っていました。松田さんはある嫌がらせを受けカウセリングセンターで貰っていたそうです」

 「ならそれを自分で飲んだんでしょ?飲ませたって言う証拠にはならない」

 

 「それがですね、彼が貰った睡眠薬の薬袋は彼の車で発見したんです。しかも中に入っている睡眠薬は一錠も使われていない未使用な状態でした。おかしいですよね?仮に使われたとしても車でわざわざ飲んで家に帰るでしょうか?」

 「知らないですよ」

 「答えは簡単です。彼は飲まされたんですよ。犯人は彼に睡眠薬を飲ませ部屋まで運んだ。そして時限発火装置で火をつけてマンション全体が燃えたんです。スプリンクラーが作動しても中身がガソリンなので余計に燃えてしまいます」

 「言い掛かりにも限度がありますよ!!」


 原田は激怒するが関係なしに玖珂は説明を続ける。この相手を犯人だと決めつけて揺さぶる方法は相手の心の余裕をなくすことによってその人を本性やぼろを出させる玖珂の得意技の一つだ。


 「そして3件目、墨田区の公園で亡くなった小早川さんについて、貴方は彼女に睡眠薬を飲ませ公園でテントを建てて中に入れる。次にテントがよく燃えるように新聞紙を置きその上にエタノールが入ったプラスチック弁当箱とロウソクを置いておく、そして途中で火が消えない様に2ℓのペットボトルを半分に切ってキャップを外して被せたんです。半分に切断した2ℓのペットボトルの直径は15cm、その長さに適したロウソクを設置すれば約1時間後には燃え尽きて新聞紙に火が移るということです」


 「それらを私がしたという証拠はあるんですよね?いくら警察でも訴えますよ!」

 

 「ええ、まずはこれを見てください。これは貴方が様々なガソリンスタンドで購入した領収書と履歴を纏めた資料になります。こんなに購入して貴方は何をするつもりだったんですか?」

 「そ、それは」

 「まだありますよ。これは松田さんが勤めていた和菓子屋の公式ブログで中傷コメントを書いた人物を特定した資料になります。投稿者のIPアドレスを特定すると渋谷のネットカフェで設置されたパソコンでそのパソコンの利用した入店記録表を見ると貴方の名前が書かれていましたよ」


 「原田さん、貴方はあのネットカフェで何をしていましたか?」

 「何って……そりゃ……ネットサーフィンをしていたんですよ」

 

 段々と原田の表情が変わり汗を流す。言葉を選んでいる所為か質問に対して直ぐには答えない。

 

 「署までご同行願いますか?」

 「こ、困りますよ!」

 「おや、貴方が犯人じゃないなら何も困ることなんてないのでは?それとも何か隠したい物でもあるんでしょうか?」

 

 鈴木が原田をどかして部屋に入ると薬袋が見つかり、その中身はエスタゾラムだった。原田は全力で走りその場から逃げた。


 「待て!!」


 鈴木が原田の肩を掴むと原田はカバンから水鉄砲を取り出す。そしてライターに火をつけ水鉄砲の前に出して引き金を引くと火炎が鈴木を襲った。


 「ぐああああああ!!!」


 玖珂は倒れた鈴木に転がれと叫んだ。これは寝転がって地面に押しつけることで窒息消火出来るストップ、ドロップ&ロールという方法だ。幸いにも火は直ぐに消えたが鈴木は意識が朦朧としている。


 「酒鬼さん、原田を追ってください!」

 「はい!」


 原田を追って走り出す。原田はカバンから火炎瓶を取り出し純也達が乗っていたパトカーに向かって投げる瓶は割れて火はパトカーに燃え移る。


 「何てもんを投げるんだ!」


 原田はバイクで逃走、それを見た玖珂は直ぐに増援を呼び緊急配備の手配をした。

 

 

 

 

 原田はバイクで東京から千葉県に向かい森の中に入って一息つく、どうやらここはサバイバルゲームで使われるフィールドらしい。

 ここで一旦身を隠して深夜になったら他の場所に移動しよう。殺して手に入った金で海外に逃げれば当分の間は大丈夫だろうと原田は考える。

 後は今回の件で知り合った逃がし屋に連絡して船の準備をしてもらう。後は警察を撒ければ全てが上手くいく……そう思った時に子供の声が聞こえた。

 

 「犯人みーつけた!」

 

 3人の子供が原田の前に現れる。いったい何処から現れたのか全く気配を感じなかった。

 

 「おじさん。もう悪いことはやめておとなしく警察に捕まろうよ」

 「な、何なんだ君達は?」

 「おじさんはイスフェシア皇国かデスニア帝国って聞いたことある?」


 何を言っているのか訳が分からないと原田は困惑する。そして彼の顔を見て三人は確信した。この人はアーガイル大陸から来た人ではない、ただの放火魔だ。ここなら魔法を使っても誰にもバレないと思いミーアはスライムナイツを召喚する。

  

 「ば、化け物!?」

 

 原田は困惑しながらもスライムナイツから逃げ、逃走で使ったバイクに乗って走り出す。逃がすまいとラルマはサイコキネシスで空を飛んで原田を追う。

 原田は片手で鈴木に使った改造した水鉄砲で火炎を放つ。普通なら燃えるはずだが火炎はラルマに届かない、まるで見えない壁で火炎を防いだみたいだ。

 そして原田が逃げた先にはラーシャが立っている。『雷鳴同化』で先回りしていたようだ。

 

 「『サンダー・ショット』!」

 

 雷が襲うとバイクは転倒し地面に転がりながら原田は吹っ飛んだ。ラルマとラーシャはゆっくりと歩いて近づく。もはやこの人に対して負ける要素はない、たとえどんな攻撃をしようが二人には無駄だということを分からせたのだ。

 だが原田はまだ諦めていない。最後の力を振り絞ってリュックからあるものを取り出す。銃口の様な物の後ろにはリュックに繋がる管があり二人にとっては見たことがない武器だ。

 

 「燃えろぉぉぉ!!」


 銃口から凄まじい火炎が30m先にいる二人を襲った。何とかその火炎を避けるが火炎はバイクに引火する。原田は最初からバイクを狙っていたのだ。

 

 ドカーンッ!!!

 

 バイクの爆発でラルマとラーシャは吹き飛んだ。火炎を避けて油断した所為とバイクが引火すると爆発する事を知らなかった為に防御は出来ておらず、まともに爆発をくらう。そしてようやく追いついたミーアはラルマとラーシャに回復魔法で回復しようとするとその隙に原田は走って逃げてしまった。


 「ミーア……ちゃん。早…くあいつを追って」

 「嫌だ!それよりも2人の回復が優先だよ!」

 「でもこのままじゃ……逃げられ…るよ」

 「皆で一緒に元の世界に帰るんだもん!絶対に死なせない!!」


 ミーアは涙目になりながら必死に二人に回復魔法をかけ続ける。しかしミーアの回復魔法の性能は癒せる程良くはなかった。段々と二人の呼吸が浅くなる。

 

 「お願い!死なないで!!」


 ミーアの想いが通じたのか、二人の傷はどんどん癒えていく。よく見るとミーアの後ろにはとても見覚えがある白衣の女性とローブと帽子を被った女性が回復魔法をかけていた。


 「……まったく、世話が焼けますね。このまま回復魔法を続けてください」


 ミーアは思わず涙を流しながら言われた通りに回復魔法をかけ続けた。

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