追放された魔法学園の落ちこぼれ、実は陰で【剣帝】と呼ばれていた世界最強です~魔法一強の世界ですが美少女たちと剣で最強を目指します。今更帰ってこい?もう遅い
俺の名はスコール・シックザール。
魔王を討伐するために優秀な冒険者を育てるために存在する学園、その中でも最高峰の位置に君臨する王帝学園に通っている。
だが、
「おい、あいつスコールか」
「学園1の落ちこぼれだな」
俺は落ちこぼれだった。
ずっとこの学園に入学してからどん底の負け犬だった。
「スコール・シックザール」
そんな俺は今この学園を支配する理事長の男、総督と呼ばれる存在に呼び出されていた。
「何だよ総督」
「貴様の役目は終わった」
「……」
突然の一言に視界が歪んだ。
「なっ、どうして?俺の役目が終わった……?まだ四天王だって魔王だって残ってる」
俺はたった1人でモンスターを撃破するための助力を行ってここまでやってきた。
「何故?魔王を倒さねば……」
「ガドウにやらせる。貴様の役目はここで終わりだ」
ガドウ……総督の息子で勇者だ。
「そんな……俺はあなたに全てを捧げた!時間だって!何だって!あなたのために使った!あなたの望む結果を手に入れてきた!成果を残してきた!そして貴方の言うことを何だって聞いてきた!」
視界が涙で滲む。
「血のにじむような努力だってしてきた!剣を何千回も振った!魔法だって!何だって練習してここまでやってきた!その俺はもう……」
俺の言葉は続かなかった。
今まで恩人だと思っていた人が俺をどう思っているのか確認するのが怖かったのだろう。
「不要だ」
涙で汚れた顔のままその場に立つことしかできなかった。
俺はこの人に拾われたあの日からこの人のためだけに剣を振り続けた。
全ては恩を返すために。
「そんな……総督……あんなに褒めてくれたのに……あんなに……」
「全て芝居だ。育てた恩を返してもらうためのな」
その言葉で絶望した。
頭の中が真っ白になった。
俺は今理解した。
この人にとって俺はただの都合のいい人形なんだってことに気付いたからだ。
俺がそうしていた時
「そういうことだ。スコール」
総督の後ろからガドウ達勇者パーティが現れた。
「貴様はもう不要なんだよスコール」
「ガドウ……」
俺が奴の名前を読んだ後もう3人出てきた。
「そそ、スコールはもういらないのバイビー」
こいつは賢者のプロント。
「お前みたいなひ弱な奴はこれ以上この王帝に要らねぇってもんよガハハ」
そして豪快に笑うガタイのいいタンクの男モーゼ。
「そうですよ。貴方にはもう価値はない」
最後にそう口にしたのはヒーラーのレイド。
これが王帝学園の……世界が誇る勇者パーティだった。
幾度の死線を超えて数多の敵を屠ってきたと言われている最強の勇者パーティ。
「……」
「我が最強不滅の王帝学園に貴様のような弱者はもう不要だ。スコール。どこへ成りとも消えるがいい」
ガドウが俺に向かってそう言い放つ。
「……」
くそくそくそくそくそくそ!!!!
「……」
俺にはもう何も言えなかった。
立ち上がると彼らに背を向ける。
「スコール。今まで無駄な努力ご苦労だったな」
俺が部屋を出る間際、そう聞こえた。
◇
私物はほとんど無い。
だから、住む場所が変わるのにそこまで抵抗はなかった。
1人の夜。
久しぶりな気がする。
「……金はないか」
元々物を欲しがるような人間でもないので金は持っていない。
そもそも使い方すら知らない。衣食住は総督が面倒を見てくれていた。
ただ生きられればそれでよかった。
総督のために皆のために剣を振る事が出来れば闇の中の存在でも良かった。
俺がやっていたのはガドウ達勇者パーティが活躍出来るためのお膳立てだ。
四天王や敵の体力を予め削っておいてガドウ達が勝利を収める。
そのための事前工作が俺に与えられた役目だった。
だが……その役目すら俺は奪われた。
「……どうすりゃいいんだ」
とぼとぼと道を歩き続ける。
誰かのために振り続けた剣は最早振る意味を無くした。
そんなことを思って歩いていたら
「?」
普段来ない横道の横道に何となく逸れてみたところ檻に入れられて俯く少女の姿が目に入った。白かっただろうその髪の毛は今では薄汚れていた。
その横にはぶくぶくと太った親父の姿。
聞いたことがある。
奴隷という存在のことを。
これが……そうか。
「お兄さん、金で動く人形は要らんかね?」
親父が俺にそう話しかけてきた。
「人形?」
「そう。人形、お兄さんの言うこと何でも聞くよ」
俺の右手は考える前に動いていた。
ガン!
「ひ、ひぃぃ?」
親父の顔を掴みその後ろの壁に押し当てていた。
「人形扱いするな」
そう言ってから壁に頭を叩きつけて殺す。
その親父を薄汚い路地に捨ててから
「ダークブレード」
俺は魔力で剣を作ると柵を切り裂いた。
そして
「出てこられるか?」
俺は少女を中から助け出す。
虚ろな目で俺を見つめる少女の腕は1本なかった。
「ヒール」
そう呟いて少女の腕を治した。
すると
「えっ……?」
目に輝きを取り戻す彼女。
「う、うそ……今の一瞬で?」
「普通だろ?」
ヒールは癒すための魔法だ。これくらい出来なくては話にならない。
そう思いながら俺は彼女に提案する。
「俺はスコール。今は1人でさ。良かったら一緒に来ないか?」
「わ、私はアヤメと申します。ですが、いいんですか?」
「何が?」
「わ、私のような薄汚れた奴隷が……カッコよくて素敵なスコール様の隣に立ってしまうことです。恐れ多いです」
「問題ないよ。むしろ君みたいに可愛い子が俺の隣にいてくれる。それが嬉しいよ」
そう言ってニッコリ笑うと赤面した彼女の手を取って歩き出すことにした。
そうだ。決めた。俺はこの子のような人達のために剣を振ろう。
これが俺と彼女、アヤメの出会いだった。
◇
1ヶ月後
「坊っちゃま」
朝起きるとメイドになってくれたアヤメが声をかけてきた。
「……」
黙って服を着替える。
「おねしょしないでくださいって何度言ったら分かりますか?」
「してないだろ」
そう言いながらベッドに目を向けた。
大丈夫だ、していない。
「ぷぷっ」
それを確認してからアヤメに目を向けると頬をふくらませて口元に手を当てていた。
「何がおかしい?」
「していない確信があるならわざわざ確認しなかったらいいのに、もしかして、という思いもあって確認した坊っちゃまにも可愛げがあるんだなと思いまして」
「そういうことか」
どうやら1本取られたらしいな。
軽くフッと笑ってから鞄を手に取ると部屋のドアに向かうと彼女が先に開けてくれた。
礼を言って先導してくれる彼女について行く。
◇
やがて辿り着いたのは私立アーノルド学院。
広大な敷地が俺の目の前に広がっていた。
今日から俺はここで学ぶことになる。
そして………
そこまで考えていたところ
「ここみたいですよ」
「そうか」
目の前にクラス分けの表があった。
俺は
「1-Hクラス、か」
「私はAみたいですね」
隣のアヤメはAクラスらしい。
一緒のクラスになれなかったのは寂しいが仕方ない。
そう思っていたら
「何故坊っちゃまがAじゃないのでしょう」
「仕方ないさ。それが学園の意思なんだろう」
そう言ってまだ不満げにしている彼女と共に俺は体育館への道を向かっていく。
そこで入学式が行われるらしい。
◇
滞りなく入学式が終わり学園からの束縛が終わった俺は校門前でアヤメを待っていた。
あまりクラスには馴染むつもりもない俺はクラスメイトとの会話もほぼなくここまでやってきた。
名前も殆ど覚えていない。
そうしてアヤメを待っていたところ
「あ、坊っちゃま」
彼女は何人かの人を連れてここまでやってきていたが、俺を見た瞬間一目散に俺の方に走って駆け寄ってきた。
そいつらは俺を見て顔を顰める。
「落ちこぼれだよねあれ」
「うん。落ちこぼれ」
そんな会話が聞こえてきた。厄介なことにならないといいが。
そう思いながら奴らの出方を見ていると一人の男が口を開いた。
「シックザールさん?」
茶色の髪を短髪にした男がアヤメを呼んだ。
それに対して振り向くアヤメ。
「どうしたんですか?モーリーさん」
男の名はどうやらモーリーというらしい。
「そちらの方は?」
モーリーは目を細めながら俺を見てくる。
その視線に対してムッとした顔をするアヤメ。
「私のお兄様ですけれど?」
「お、お兄様?」
怪訝な顔をするモーリーに対して俺も名乗ることにした。
「スコール・シックザール。アヤメの兄だ」
厳密に言えば兄妹ではないが、そうしていた方が後で楽だろう。
彼女は事あるごとに俺を何故か兄扱いするのだ。
「貴方がシックザールさんの兄?」
怪訝な顔をしながら俺の方に近付いてくるモーリー。
「それがどうした?」
聞き返すことにした。
何か問題があるのか。
「申し訳ないが我々は今シックザールさんと大事な話をしていたところだ。この様子を見る限り一緒に帰ろうとしていたのだろうが、今日のところはシックザールさんを貸して貰えないだろうか?」
そう言ってくるモーリー。
別に俺としては面倒事にならないなら構わないが。
そう思ってアヤメを見たのだが
「そんな話してましたっけ?」
と話をかき混ぜる彼女。
「今からしようとしていたところだよシックザールさん」
そう口にするモーリー。
まぁ何でもいいが早くして欲しいな。
そう思いながら俺は壁に預けてた背を離してアヤメに目を向けた。
「先に帰ってる。クラスメイトは大事にしろよ」
そう言って帰ろうとしたがアヤメが俺の手を掴んだ。
「え、嫌ですよ。私坊っちゃまと帰りたいですから」
それを聞いたモーリーがまた顔を顰めた。
「シックザールさん。僕達と帰ろうよ。お兄さんもそれを認めてくれているし」
そう言ってきて尚俺の右腕に自分の手を絡めてくるアヤメ。
その顔は小さく笑っていた。
どうやらこの状況を楽しんでいるらしいな。
そしてそれを見てまた顔を歪ませるモーリー。
なるほどな。そういうことか。
アヤメは俺の目から見ても美少女だ。
そして今回の入学テストでブッチギリの成績を残してエリートクラスと呼ばれる1-Aに入った。
そんな少女とはお近づきになりたいという話らしいな。
そんなことを思っていたら
「あのーさっきから聞いてたんですけど。妹さんはスコールさんと帰りたがってるみたいですしあなた方がガタガタ言う権利なくないですか?」
俺の横にいたもう1人の少女が口を開いた。
口数が少ない俺に唯一付きまとってくる変な女のユイだった。
「ガ、ガタガタって………」
そう言われてモーリーがついに拳を露骨に震わせたと思ったら。
「シックザールさん。そいつが兄でも君は1年のトップだろう?そんなセカンドクラスに関わっていいわけが無い!」
モーリーがそう叫んだ瞬間、物凄い形相で俺を見て人差し指を俺に向けてきた。
「おい!シックザール!僕と決闘しろ!落ちこぼれのゴミが!僕達ファーストクラスと一緒にいていいわけがないんだよ!恥をかかせてこれ以上この学園にいたくないと思わせてやるよ!」
続いてそう叫んできた。
その顔は茹でられたタコのように真っ赤になっていた。
やれやれ。面倒事に首は突っ込みたくないのだがこんな奴にアヤメの行動を束縛されるのは気に入らない。
それにしてもゴミ………か。ド直球に呼んできたものだ。
この学園にはファーストクラスと、セカンドクラスというものが存在する。
AクラスからDまでをファーストと呼びそれ以降をセカンドクラスと呼ぶのだが、クラス分けは完全に成績上位者をAから入れていくだけの簡単なものつまり、セカンドクラスに振分けられるのは能力の低い者になる。
そんな彼らをファーストクラスはゴミと呼ぶのだ。
それにしても決闘か面倒な事になったな。
◇
俺達は決闘をする闘技場までやってきた。
周りを白い壁で囲まれた部屋だった。
周りには何故か沢山の観客までいた。
そして色々と話し合っている。
「ゴミがファーストの決闘を受けたって本当なのか?勝てるわけねぇのに」
「本当みたいだぜ。あのシックザールさんの兄貴とかいう奴が受けたみたいだが」
「シックザールさんってブッチギリの成績で入学決めた人だろ?あの人は頭いいのに兄貴は何であそこまで頭が悪いんだろうな。クイックアタックのモーリー。あの異名を知らない1年なんていないだろうに」
「そうそう。どんな敵だって初手の一撃で倒してしまうクイックアタックな。今年の1年最強候補だもんな。モーリー」
そんな会話が聞こえてくる。
そんな中俺の両隣にはアヤメと変な女のユイがいた。
「大変なことになってしまいましたね坊っちゃま」
「お前が話を掻き混ぜたんだろ」
ため息を吐いてそう答えながら俺は持参していた剣をアヤメに預ける。
「勝ってくださいね!スコールさん!」
ユイの言葉にも軽く頷いてから俺はフィールドの中に立った。
そうして何故か審判を請け負ってくれた生徒会長に目を向けた。
「俺はいいよ」
そう答えてモーリーに目を向けた。
「おい、シックザール。お前何故剣を置いた?」
「剣が無くてもあっても結果は変わらないからな」
「なるほど。セカンドがファーストに勝てるわけが無い、とそう悟ったわけだな。なら棄権したらどうだ?」
「変な幻想を捨ててもらいたくてね。はっきりと現実を見せたくてな」
「ほう。妹さんに現実を教える、と。シックザールさんを僕達に譲る、とそう言っているのかなら遠慮なく倒させてもらおう」
すごく自分にとって都合のいい解釈をしているモーリー。
まぁ、何だっていいが。
そんなことを思いながら俺は審判である生徒会長の合図を待つことにした。
「私はアーノルド学園の生徒会長であるアリスです。この決闘を正当な決闘と見なして審判を行います。ルールはどちらかが戦闘不能になるか、ギブアップを認めるかまで続ける模擬戦です。勿論致命傷になるような攻撃や魔法、後遺症になるようなものは禁止とします!」
俺は頷いてスタートラインに立った。
それと同時に鳴り響く試合開始の合図。
「僕の決闘を受けたこと後悔させてやるよ!シックザール!」
同時に剣を持って駆け出してくるモーリー。
だったが勝負は一瞬で決着となった。
「後悔するのはお前だろう?」
俺はすれ違いざまに首に手刀を入れた。
「なっ………んだと………」
パタリと俺の後ろで倒れるモーリー。
俺は1歩も動いていない。
つまりモーリーは俺の横を通り過ぎて倒れた。
「………」
シーン。
今の一瞬の出来事を見せつけられて静まり返るトレーニングルーム。
だったが
「しょ、勝者!スコール・シックザール!」
慌てた様子でジャッジをした生徒会長の一声で音を取り戻した。
「う、うぉぉぉぉぉぉ!!!!なんだ今の!!!」
「お前見えたか?!今の?」
「は?!見えるわけねぇだろ?!つか何で?!クイックアタックのモーリーが逆にクイックアタックされてんの?!」
「そんなもん知らねぇよ!でもあの1年凄いな!」
そんな歓声が聞こえる中俺はモーリーに近付くと回復魔法を使った。
するとパチリと目を開けるモーリー。
「な、何が起きた」
「お前は負けたよ雑魚」
そう言って見下しながら手を差し出してやる。
「!!」
俺の手を弾いて拒否するモーリー。
「ぼ、僕が負けた?」
その後に目を見開いてそう呟いたモーリー。
「クイックアタック、お前の家の秘伝の技と聞いたが大したことないな」
そう言ってやるとモーリーは立ち上がって
「うぉぉぉぉぉ!!!!モーリー家をバカにするな!!!!」
そう言って何度も何度も拳を振ってきたが全てその場を動かずに避ける。
そうして
「そらよ」
「ぐあっ!」
振り被った時に突き出した足を引っ掛けてこかしてやる。
するとモーリーの額に傷が入った。
「ご自慢の顔もギズモノになっちゃったな?」
「シ、シックザールゥゥ………」
そんな声を聞きながら小さく笑うと俺は今度こそアヤメの近くに戻ることにした。
すると駆け寄ってくるアヤメ。
「流石ですね坊っちゃま」
そう言ってくるアヤメの横でユイが
「はわわわわ………何ですか今の動き」
そう言ってわたわたしていた。
◇
俺はモーリーとの決闘後生徒会長のアリスに呼び出されていた。
「何故俺が呼び出されることになるのか、意味が分からないが」
俺は立たされていたが対面で座っているアリスに声をかける。
「喧嘩をしかけたのは俺ではなくモーリーの方だ。俺を呼び出すのはお門違いなように思………」
そう言いかけた時だった。
「スコール・シックザール」
口を開いたのは生徒会長ではなく、その隣にいた別の女だった。
「君の制服を見る限り君はセカンドクラスのはずだが、それにも違和感を持って調べさせてもらったが君はHクラス。何故Aクラスのモーリーに勝てた?」
「何か聞く前に名乗るのが常識ではないか?」
「失礼。副会長のマリだ」
そう名乗ってくれた副会長。
その目を見つめてからこう返した。
「バトルに負けるのは何時だって弱い方で勝つのは強い方だ。つまりあいつが俺より弱かった、それだけだ」
「「なっ!」」
この場にいた全員が口を開けた。
「あ、有り得ない!!!そんな事が有り得ていいわけがない!」
叫ぶのはマリ。
信じられないものを見たような目をしていた。
「魔法こそが絶対主義の現代、戦闘において魔力量は絶対的なものだ!君の魔力量はセカンドクラス相当、それに比べてモーリーは最高クラスの魔力量だ!なのに勝てるわけが………」
そこまで言いかけた時だった。
「いえ、勝てますよ。マリ。その他の部分がとんでもなく秀でているなら」
そう呟くアリス。
「なっ!何だって?!」
驚いたような顔をしているマリ達だったが俺は口を開くことにした。
「言い合っているところ悪いが、そろそろ帰ってもいいか?」
◇
次の日の昼休み。この日から軽くだが講義が始まっていた。
俺の座る椅子の周りに人が集まっていた。
「すげぇよ!お前!あのファーストクラスでしかもクイックアタックのモーリーを倒すなんて!」
「うんうん。凄いよ君は。僕も見ていたけど一体全体何が起きたのか分からなかった程だ」
ゴリラのような風貌をしたガタイのいい男とそれとは対象的な色白で大人しそうな男が俺に話しかけていた。
「別にまぐれだよ」
そう言って立ち上がる。
こうやって馴れ合うつもりは無いのだが。
そう思いながら食堂に向かうことにしたのだが
「いやぁ凄かったよな昨日のは」
「うんうん。凄かったよね」
こいつら2人も付いてきているし更には
「むっふっふー私の見込み道理でしたね勇者様」
何故か俺を勇者扱いし出したユイも隣にいた。
何なんだいったい。
そう思いながら食堂までやってきて適当なメニューを頼んで食事をしていると
「あ、坊っちゃま」
アヤメが駆け寄ってきた。
のだが、
「シックザール………」
その後ろには金魚のフンのようにモーリーがいた。
「ゴミに負けた気分はどうだ?是非とも聞かせてもらいたいね?」
そいつに視線も合わせずに気持ちを聞いてみたが
「………その事については謝罪しよう」
そう謝ってきたモーリー。
挑発には乗らないか。
「いつの日か………この借りは返す」
そう言ってモーリーは名残惜しそうにアヤメに目をやる。
「アヤメ、行ってこい。クラスメイトは大事にしておけ」
「はい。坊っちゃま」
そう言って彼女はモーリー達と食事をしにいった。
というより俺の方は既に終わった後だったからアヤメの食事に付き合う気もなかっただけだ。
◇
午後からの講義を受けることになった。
体育でサッカーをやる事になったのだが。
「スコール!いくぜ!」
いつの間にか俺の事を名前で呼ぶようになったゴリラのような男のライオからパスを受け取る。
「抜かさねぇぜ」
そんな俺を3人がかりでマークしてくる敵メンバー。
仕方ない。抜くのは簡単だが、ここはあの色白の男にパスを出すか。
「マリク!」
「「「なにっ?!」」」
驚いている3人だが俺がやったのは連携の甘い3人の僅かな隙から前方にいるマリクにパスを出しただけだ。
「いけぇ!」
マリクの放ったシュートはゴールに入った。
今のその様子を見ていた女子チームの方から完成が上がった。
「今の見た?!流石スコール様!」
「凄かったよね!3人がかりでマークされてたのにあんな小さな隙を狙ってパスを出すなんて!」
「ていうか点数見て?!10-0って相手何も出来てないじゃない!」
「きゃー!!!!スコール様!!!」
やれやれ、目立たないようにしていたのだが………どうやら昨日の1件で否応にも目立ってしまったのだろうな。
そんなことを思っていたら
「ナイスパスだったよスコール」
シュートを撃った本人のマリクが俺の肩にポンと手を置いて声をかけてきた。
「シュートを決めたのはお前だ」
「いやぁ!2人ともすげぇぜ!」
その場を去ろうとしたらライオが俺達2人を一気に両腕で抱えた。
どうやらしばらくは逃げられなさそうだな。
◇
俺達がアーノルド学園に入学してから1週間が経った。
クラスの連中は殆どがクラスに溶け込んでいたが俺は相変わらずだ。
別に関わるつもりもないのだが
「スコールさんっ!」
ユイの方も相変わらずだ。
何故か俺にくっついて行動している。
「放課後ですがこれからどうするんですか?」
「帰るだけだ」
「部活はやらないんですか?」
「………」
黙って歩く。
「いっぱい勧誘来てるの知ってますよ。でも全部断ってるんですよね?」
「それがどうした?」
「あんなにすごい体の動かし方できるのに何もやらないの勿体ないなぁと思いまして」
そう言われてもやらないものはやらない。
そう思って帰る準備をしてカバンを持つと校庭に向かうことにした。
のだが、ドゴーーーーーン!!!!!!
何処からかそんな音が聞こえた。
音のするほうを見ると、俺達が以前使った闘技場のある方だった。
おまけに爆発でも起きたのか天井のない闘技場の内部からは煙が吹き上がっていた。
「何だこの音」
「大変なことが起きているのは間違いないですよ!兎に角行きましょう!」
俺は何故かユイに引っ張られて闘技場の方に向かうことになった。
やがてたどり着いた闘技場。
そこには
「ひ、酷い………」
ユイがそう言いながら崩れ落ちた。
「この程度かアーノルド学園。やはりランキング最下位ではこんなものか」
そう言いながら別の学園のユニフォームを身につけ、ドレッドヘアーを後ろで結んだ男が誰かの背中を踏みつけている光景があった。
その踏まれた側の人間はよく見るとモーリーだった。
どうやら魔法の練習をしているところを襲われたらしい。
どの学園でも人気のある部活である魔闘部だろう。
どんな部活よりも実戦に近い訓練を行う部活動だ。
遊びではなく訓練に近く将来の役に立つ部活動。
だからこそ殆どの生徒はこれに参加するのだが。
「ぐぅ………」
モーリーが呻く。
「クイックアタックのモーリー、名前は聞いたことがあるがやはり大したことの無い雑魚か」
ドレッドヘアーがそう言いながら足を退けると
「そらよ!」
モーリーを蹴り転がす。
「がはっ!」
吹き飛びながら呻くモーリーを見て
「な、なんてことをするの!」
生徒会長のアリスがドレッドヘアーに目をやった。
「何者なの?!貴方たち!いきなり来て!いきなり勝負するなんて!」
そう問いかけているがあのユニフォームを知らない人間なんていない。
「お待たせしました坊っちゃま」
後からアヤメが俺たちに合流してきて口を開く。
「何が起きているのですか?」
「王帝だ」
「なっ………王帝学園………」
毎年開かれる世界中の学園から生徒を集め最強を決め勇者を選定する大会である【魔闘祭】というものがある。王帝はそれの覇者。
ドレッドヘアーが口を開いた。
「俺たちを知らないか?なら教えてやろう。俺達は王帝学園。魔闘祭を40年間制し続けている学園だ」
ドレッドヘアーがそう名乗ったあとにその後ろにある入口から続々と他の人間が現れる。
「王帝学園………何故ここに」
隣にいたアヤメが漏らす。
「確かにな。アーノルド学園は魔闘祭でも勝ち上がれない学園だ。何をしに来たのか」
練習試合をしにきたわけでもないのだろう。
何が目的でここにきたのか………。
◇
「ガドウさん」
ドレッドヘアーの奴を呼ぶ声がここまで聞こえた。
「どうした」
「いったい何が目的なんですか。俺たち王帝学園がアーノルド学園と試合をするなんて」
「親父の命令だ」
そう言うとガドウが1歩ずつ生徒会長のアリスに近づく。
「な、何ですか?」
「王帝学園魔闘部首相のガドウだ。アーノルド学園との練習試合を正式に行いたいと思う」
そう言ってガドウがアリスに手を差し出す。
「なっ!練習試合ですって?!」
「アポイントメントがないと叶わないか?」
「い、いえそういう訳ではなく、ウチの生徒にここまでのことをして置いて今更練習試合ですって?!」
モーリーを見ながらそう言うアリス。
「あ、あのクイックアタックのモーリーがここまでやられるなんて………」
俺の横にいた生徒はそれを見て怖気付いていた。
「無理だ………王帝に勝てるわけが無い」
そう言いながらも
「分かりました。その申し出受けましょう」
アリスはこの申し出を受けていた。
「無駄なことを」
そう呟いてアヤメに目をやりこの場を去ろうと思ったが
「アヤメ?」
「私は見ていきます。貴方を追放した今の王帝の実力を見ていきたいからです」
「………なら俺も付き合おう」
彼女がそう言うのなら俺も見ていくことにした。
そうしていると試合が始まろうとしていた。
「ルールは魔闘祭と同じく3対3のゲームです。先に相手チームを戦闘不能にした方が勝ちです!」
アリスがルールを説明し審判を行う。
次の瞬間、ガドウの口許が歪んだ。
「ガァァァァ!!!!」
「うわぁぁぁぁ!!!!」
そして始まるのは一方的な試合だった。
ガドウが駆け抜けてこちらの選手を蹴りつける。
そしてボコボコにする。
行われたことはそれだけだった。
結果
「ひ、ひぃぃぃ!!!!」
アーノルド学園側は1人の男がそこに立っていただけだった。
「勝負になりませんね」
そう言って席を外そうとしたアヤメ。
俺もそれに続こうとしたが
「見ていたのだろう?」
ガドウのその言葉に足を止めた。
明らかに俺を見て声をかけてきたからだ。
「なぜ来ない?このまま潰してしまうぞ」
そう言って足を振り上げると振り下ろしこちら側の生徒を踏みつけるガドウ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」
声が響く。
そんな中奴は宣言した。
「こんな弱小学園の弱小部必要ないわ!我が王帝学園の権力をもってして廃部とする!だがしかし条件を与えよう!我こそはというものは名乗り出て俺達と対峙しそして勝て!」
そう宣言したが
「おいおい王帝学園に勝てって………」
「無理だろ………」
誰も名乗らない。
「坊っちゃま」
俺を見てくるアヤメ。
仕方ないな。
俺は歩き出すと観客席の柵を越えて闘技場に降り立った。
そして
「ほう………」
俺を興味深そうに見てくるガドウの真ん前まで歩いていく。
「な、あいつは!」
「シックザールじゃないか!」
「あのクイックアタックのモーリーを秒殺したっていうシックザールか?!」
俺の登場に盛り上がる闘技場。
そんな中審判をしていたアリスが近付いてきた。
「無、無茶よ!スコール君」
そう言ってくるが
「審判なら審判だけしていろ」
黙って見つめて有無を言わさない。
「わ、分かったわ」
俺の視線に怖気付いたように下がるアリスを見てから俺は開始位置に立つ。
「久しぶりだな雑魚。帝国じゃトップを狙えずにこんな弱小学園に転入して無双しているのか?哀れな男だ」
俺に向かってそう吠えるガドウ。
「どうだかな」
短くそう言うとアリスに目をやり開始を促すが
「ちょっと待って!他の2人は?!」
俺に聞いてくるアリス。
「1人でいい。足を引っ張られるだけだ」
そう言ってガドウに目をやると
「ひ、1人でいいって!何言ってんだあいつ!」
「3人に1人で勝てるわけがないだろ?!」
「そうだ!誰か助っ人に行けよ!」
観客席からそんな声が聞こえるが王帝学園相手に誰も名乗りを上げないのは変わらない。
そもそも隣に立たれても迷惑だ。
そんなことを思いながらスタートを待つ。
「無茶はしないでスコール君」
アリスがそう言った後に試合開始の合図を鳴らした。
「行くぞ!」
「「おう!ガドウ!」」
開始と同時にガドウに合わせて2人が動く。
そして飛び上がると
「必殺!グレートオメガ!」
3人が空中で闇の玉を作り俺に飛ばしてきた。
それを
「………」
無言で避ける。
「げほっ!げほっ!何なのこの砂埃!」
アリスの声が聞こえる。
それ程までに先程の玉が地面に当たって起きた砂埃は凄かった。
「ふはははは!!!これが王帝が誇る必殺技グレートオメガだ!」
そしてガドウの声が聞こえてくる。
「や、やばいぞ!あの技!」
「シックザールってやつマトモにくらったじゃねぇか!」
そんな声が聞こえてくる。
どうやら外からはマトモに受けたようにしか見えなかったらしいが
「な、なにっ!」
砂埃から飛び出した俺の視界に先ず映ったのは驚愕しているガドウの顔だった。
「そらよ!」
そのままの勢いでガドウの後ろに周り後ろから首を叩き気絶させる。
「ガドウさ………」
「言ってる場合か?自分の心配をするんだな」
そのままの勢いを殺さず残り2人の後ろに周り同じように気絶させた。
それを見た闘技場中が言葉を失う。
だが、やがてハッと意識を取り戻すアリス。
「お、お、王帝学園戦闘不能………しょ、勝者、スコール・シックザール………」
そして俺の勝利を告げたのだった。
◇
俺は試合後俺を追放した男であるシャドウに別室に呼び出されていた。
「久しぶりだなスコール」
「シャドウ………」
もう総督とは呼ばない。
俺はあの男と対面していた。
「王帝学園を追放したあとここに来たのだな」
「あんたこそ何が目的だ。今更俺に用がある訳でもないのだろう」
もう放っておいて欲しいくらいだが。
「スコール・シックザール。今日はお前に話があってな」
「あんたが俺にか?」
「あぁ。我々はお前という存在についてあれから考えた。貴様は使えなくはない駒だということに気付いた」
「どういうことだ」
「王帝に戻れ」
「は?」
言っていることが分からなかった。
「何を言っているのか理解しているのか?」
「当然だ」
「それで俺が首を縦に振るとでも?」
「この弱小学園に所属し続けるよりはいいと思うが」
「笑わせるなよ」
そう笑って答える。
「俺は俺の道を行く。もう俺はあんたの人形なんかじゃない」
俺が言うことはそれだけだ。
最早王帝学園に戻るつもりもシャドウの下に着くこともない。
「次は勇者パーティの正式なメンバーとしてガドウ達と行動させるつもりだがそれを聞いても意思は変わらないか?」
「くどい」
俺はシャドウの顔を掴むと壁に押し当てた。
「?!」
「育ててくれたことについては感謝していた。だがその恩はもう返した」
そう言ってシャドウの顔から手を離す。
ズルズルと崩れ落ちる奴の体。
「俺はもうお前たちのために剣を握らない。もう遅い、俺にはもう守りたいものができた」
◇
「君のことは調べたよスコール君」
俺はまた生徒会室に呼び出されていた。
そして副会長のマリが俺の事を調べた、とそう言っている。
何を調べたのかは知らないが。
「わざわざ調べてくれてどうも。何か分かったか?」
「何も分からなかった」
そう言って首を横に振るマリを見てアリスが目を見開いた。
「なっ!マリの情報網を使っても何も分からなかったですって?!」
「君はいったい何者なんだ?私の情報網はかなりのものだ。それをもってしても調べられないなんて………信じられないな。アヤメ・シックザール。彼女も同じく、何も分からなかった」
2人が驚いているが大したことではない。
俺は何でもない男だから。
そして何も無い男だ。だからこそ何も出てこない。
何も持たない男。それが俺。
アヤメに関しても同じだ。
「悪いけどあんた達がいくら調べても俺のことを知ることはないだろうな」
「スコール君、君はいったい………」
「俺はただのセカンドクラスだよ」
そう言って俺は生徒会室を後にすることにした。
◇
「坊っちゃま。王帝学園の件本当に良かったんですか?」
夜アヤメが俺の部屋にやってきた。
「王帝学園ならば坊っちゃまのレベルについてこられるでしょうしこんな低レベルの学園にいる必要はシャドウの言う通りないように思いますが」
「アヤメ」
俺はアヤメの顔を見た。
「はい。何でしょうか」
「俺はアヤメといたい」
「はい?!」
「王帝学園は実力主義もあるし身分も大事になってくる。戻れば俺はきっとお前といられなくなる」
特にシャドウは息子であり同時に勇者であるガドウをとことん贔屓している。
そのための踏み台にされるのは目に見えている。
かつての俺のように。
「だから王帝にだけは戻らないし奴らのやり方を見逃すつもりもない」
王帝のやり方は言ってしまえば出来レースだ。
ガドウにしても他のメンバーにしてもあいつらを立たせるために使い潰されているやつが何人もいる。
俺はそれを許さない。
アヤメに出会ってそう強く思うようになった。
「人類の未来がかかっているからこそ俺はシャドウのやり方を見逃すつもりは無い」
魔王の勢いは止まることをしらない。
そんな状況だからこそあいつの贔屓に付き合っている場合ではない。
「俺はこの学園で最強のパーティを作り上げる。そして最強を目指し、英雄となる」
もうシャドウの言う通りには動かない。
俺は自由に生きてやる。
「はい。坊っちゃま、私も坊っちゃまのお傍にいて、その夢をお支えできること嬉しく思っています」
そう言って彼女は笑顔を作ってくれるのだった。
こうして俺達の物語は始まる。
続きを読みたいと思っていただける方が多いようでしたら連載するかもしれません。