お互いのこと
「ここは僕の創った部屋だ。僕には普通の人間には使えないような力がつかえる。そのひとつがこの部屋を作ること。ここは君がいた世界とは少しずれた次元にあるため、時間の流れも違えば、違う場所にも繋がる。でも、それを操作できるのは僕だけだ。僕がこの部屋から出れば、たちまちここは無くなってしまうだろう」
急にファンタジーなことを言われて、正直頭がついていかない。
つまり、この男は変な能力をつかって復讐屋というものをやっているということだろうか。
まだ納得できていないことを悟られたのか、金髪の男がふうとため息をついて黒髪の男に耳打ちをした。何を言われているのかわからないが、あまりいいことではなさそうだ。
「・・・まずは自己紹介からしよう」
黒髪の男がしぶしぶといったように呟いた。私もそれに頷いた。
「僕はK。ただのKだ。さんはつけなくていい。さっきも話した通り、この空間の操作や時間の操作ができる。時々勘違いをされるが、時間は完全に止めたり、過去に戻ったりすることはできない。職業は復讐屋」
よく見てみれば黒髪はサラサラつやつやで、顔は恐ろしく整っている。モデルなのではないかと疑うレベルだ。
ぼーっと見つめていると、Kが私の自己紹介を促してきた。
「私は美波です。17歳。普通の高校生をしてます。能力とか特にないとおもいます。心当たりもありません」
私の自己紹介が終わったところで、金髪の男が私に紅茶をもってきてくれた。
「私はエルドと申します。エルド、とお呼びください。この復讐屋でKの補佐と、この部屋の管理を任されています。美波さまのように、ここにお客様としていらっしゃった方をおもてなしするのも私の仕事です。Kのような能力はありませんが、体力には少々自信がありまして、その能力を買われてここで雇っていただいております」
こちらも美形だ。金髪は地毛なのだろうか、サラサラで光の当たり具合で透けているようにみえなくもない。だがそれよりも存在感を放っているのが瞳の色だ。
「・・・瞳が気になりますか。美波さまはアースアイ、というものをご存じですか。ごく普通に存在しているのですが、日本では比較的珍しいかもしれませんね」
「アースアイ・・・聞いたことないです」
「そうですか。緑や青、黄色などが混ざったように見える瞳のことをいいます。光の当たり具合で微妙に色が変わるのも特徴のひとつですよ」
見れば見るほど、本当に綺麗な色だ。
じっとみていると、エルドが気まずそうに困った顔をしたので、私も慌てて目をそらした。
「それで・・・君がこの部屋に入れた理由を聞きたいんだが、自分ではよくわかっていないんだったな」
「はい。なぜ扉が見えるのかも、ここの入れるのかもわかりません」
「それは君が復讐の心をもっているからだとは思うが・・・少し実験をしてみるか」
そういってKはソファから立ち上がった。