ライブ配信
屋上にはいつもの5人組。名前も覚えていない。覚えたくもない。
ただ、こいつらがこの学校を牛耳っているということだけを知っている。
私がいじめられ始めたのはもう1年も前。最初は物を隠されたり、パシリをさせられたりしていただけだった。
でも、そのうちそれはエスカレートしていき、いまではこいつらのストレス発散のためのサンドバックになっている。
もちろん私の怪我をみて、いじめが行われていることはこの学校の教師たちも知っている。ただ、みんな自分が標的になりたくないため何も言えないでいるのだ。
私は卒業するまで、もしくは死んでしまうまでこのままだと覚悟をしていた。
「今日はライブでお伝えします!」
「きたきた。ぶす子ちゃんでーす!いぇーーい」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら自分たちのケータイに喋りかけている。SNSのライブ配信でもしているのだろうか。
「じゃ、今日も楽しく遊んでいきたいとおもいまーす!ね、ぶす子ちゃーん」
「ほら、何とかいいなよ。ブヒブヒッとかさ」
キャハハハッと甲高い笑い声が響いた。しかし、私がなにも反応しないのを見ると苛立ったのか、私の髪を掴んでいた男が急に私の背中に蹴りをいれた。
膝や手のひらがじんわりと熱くなるのを感じた。きっと血がでているのだろう。
それもどうでもいい。早く終わってほしいとおもっていた。
「今日はライブ記念!ぶす子ちゃんにも特別なことをしてもらいたいと思います」
そういうと、奥にいた2人が大きめの袋とバットを持ってきた。
「さぁて、ぶす子ちゃんは一体どうなってしまうんでしょうかー?」
次の瞬間、私を蹴った男が両腕を掴んで固定してきた。そして、袋を頭に被せられる。
「鬼ごっこ、はじめ!」
「ぶす子ちゃん、逃げないと殴られちゃうよー」
耳元でバットが空を切る音がした。そして、足元にガチンッと大きな音を立てた。
金属バットだ。しかも、振り下ろしているのはきっと男だ。
私はとっさにバットが振り下ろされたほうとは逆に飛びのいた。さすがにこれが頭に当たったら死んでしまう。
「おー、ぶす子ちゃんもついに反撃かー?」
「いいね、頑張って!当たっちゃったらぶす子ちゃんの負けだからね」
逃げる側が目隠しをされているのに、当たったら負けとは理不尽が過ぎる。でも、お遊びの段階でこの状況なら、きっと当たってしまったらもっとひどいことになるのだろう。
さすがにこいつらの為に死んであげるようなお人よしではない。
私は後ろから追いかけてくる足音から必死に逃げて回った。