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⇒基本操作

≪メンバーの名前を決めて下さい≫



⇒今池凜

⇒足立早紀

⇒片岡菜々花

⇒白石真帆

⇒北方京子

⇒三浦杏

⇒塩川実里

⇒鶴田舞

⇒南川弘子

⇒渥美かおり




名前は、フルネームでしか入力出来なかった。


私は自分の名前を筆頭にして早紀の名前と、イジメ加害者のメンバーやその取り巻きの名前を順に入力していく。



弟のことをどうこう言えた義理じゃないな、と自分に少し嗤った。

このゲームがまだどんな内容なのかはわからないが、主人公や良い役には自分か早紀を選択して、辛そうな役は他のメンバーにやらせるつもりだった。



正直、全員のフルネームと漢字までは覚えていない。


それでも入力出来たのは、イジメの主要メンバーは高校一年の時に同じクラスメートであり、その取り巻き達は同じ吹奏楽部だったからだ。

高校一年の時の文集と、吹奏楽部の過去のコンサートの自作パンフを漁って、やっと入力を完了させる。



全員分を入力し、見直す。



これから彼女達にちょっとした復讐をするぞ、という優越感と、こんなゲームでしか早紀の味方ができない自分の弱さを感じながら、決定ボタンを押した。




≪プレイ開始します≫




私は、ドキドキしながらその文字と、その次の真っ黒な画面を見た。



シミュレーションゲームでは大抵、まず主人公が旅に出るまでのストーリーや、ゲームの世界観を表現するための軽い映像紹介がオープニングとして始まる。


ところが、いくら待ってもそんな映像が始まる様子はない。



「……このゲーム、壊れてる?それともエラー?」


いい加減痺れを切らせ、ひとり呟いた時だった。



画面が、渦巻き状に明るくなる。


明るくなった画面に、見慣れた学校……そう、私達が通っている女子校が、ゲーム画面に現れた。






**********






「なにこれ……」

思わず、画面を凝視してしまう。


正面から撮られたような私達の学校の写真がまず現れ、次いで私達の顔写真が一枚ずつ画面を埋めていく。



「え? え? なにこれっ!?」

私は思わず叫んだ。


ゲーム画面は私の驚愕を無視して先へと進む。


学校を取り囲むようにして私達の顔写真が最後の一人まで配置されると、その学校の上に覆いかぶさるようにして真ん中に ≪REVENGE†GAME≫ と表示され。


最後、画面にうつる写真が粉々に砕け散った。




……それは、とてもシンプルなオープニングだった。


けれども私は、()()()()()()()()が使われていることに、動揺を隠せなかった。



いつの間に写真が撮られたのだろう?

プライバシーは?

肖像権とかは?


ぐるぐると疑問が沸き上がる。

そもそも、私が誰の名前を入力するなんて、事前にわかるはずがない。


どういう仕組みで、私たちの写真がゲームソフトの中に取り込まれたのだろう?



ゲーム機は、壊れない程度の梱包はされていたが、パッケージ等はなかった。

説明書を再度確認してみるが、やはり制作会社などの名前は一切記載されていなかった。


「これじゃ、文句を言うことも問合せをすることもできない……」


有り得ないオープニングに暫く呆然としていたが、とりあえずゲーム画面の中に制作会社の名前やそれに繋がるヒントが隠されているかもしれないと思い直して、再びゲーム画面に視線を戻す。


どうやら、スタート画面のようだ。

そこには通常のゲームのように、明らかにCGとわかる映像が立体的に描かれており、ほっとした。



けれども、ほっとしたのも束の間。

画面全体の一番下の部分には、先程のオープニングで使われた私たちの顔写真が十枚、並んでいた。






**********






顔写真をもっとよく見たくて、ゲーム機を手に取り操作しようとしたところで気付く。



……操作方法が、わからない。



先程の紙切れにも、当然本体にも、操作に対しての説明が何もないのだ。



「色々と不具合だらけだね」

私は製作会社への苛立ちを口にしながら、ゲーム機そのものを確認した。


左の親指があたる箇所には、スティックボタンがある。

右の親指があたる箇所には○と×の2つのボタンがあり、更にそれらの真ん中にセレクトボタンがひとつあるという、非常にシンプルな構造だった。


ぐるりとゲーム機を一周してみたが、それ以外のボタンは見当たらない。

実際に操作すればわかりそうな、簡単な仕様だった。



試しに、スティックボタンをまわしてみる。

すると、3Dの映像の上で、何かが動いた。



改めてゲーム画面の映像を見てみると、スタート地点は恐らく、高校の屋上と思われた。

動いたのは、屋上の真ん中に位置する立体的な≪影≫である。



「これが、主人公?」



≪影≫はひとつで、スカートを穿いているのがわかる。

けれども頭部はつるっとしていて、髪型で十人のうち誰かを特定することはできない。

もしくは、≪影≫は私が入力した十人以外の人物であるかもしれなかった。


スティックボタンは、一先ず≪影≫の移動に使うことがわかった。

他に何かの操作で使うこともあるかもしれないが、少なくとも≪影≫はスティックボタンの傾きにあわせて、傾いた方向に動くのだ。


次に、○ボタンを押してみた。


≪屋上にいます≫


画面が一回り縮小され、まわりにできた真っ黒なスペースの一番上の部分に、そう表示された。


間違いなく、○ボタンは所謂決定ボタンや何か調べたい時に使うボタンであり、恐らく×ボタンはキャンセルボタンだろう。


そう思った私は、×ボタンを押した。

案の定、画面は元に戻った。


最後に、セレクトボタンを押してみる。


すると屋上の映像は灰色のスクリーントーンを貼り付けたかのようなグレーになり、一番下に配置されていた十人の顔写真が、先程より明るくなった。



一番左に私の顔写真があり、その右横に早紀の顔写真、そして名前の入力順に一番右まで並んでいる。


そして今は、私の顔写真の周りだけ黄色い枠で囲まれていた。

恐らく、十人の顔写真の中で、「私」が選択されている状態なのだろう。


その状態で○ボタンを押すと、グレーになっていた移動画面の上に私の顔写真だけが大きく映し出され、名前の表示と持ち物の表示が出た。



≪今池凜・イマイケリン≫

体力⇒100%

≪持ち物≫



「え? レベルとかは? 装備とかもなし……?」



所詮十時間で終わるゲームだからなのか、普通のゲームでいうキャラクターの作り込みはされていなかった。


体力はあっても、魔力等はなし。

%表示のみで上限値がないところを見ると、やはりレベルアップという機能はないようだ。

まあ、120%とか300%といった表示になる可能性もなきにしもあらずだが。



自分の顔写真を×ボタンで閉じ、他のメンバーを見ようとする。


右横に移動したいが、右向きの矢印ボタンはない。

そこでスティックボタンを右に倒すと、私の思惑通りに黄色い枠は右横にある早紀の顔写真に移った。


○ボタンで拡大する。



≪足立早紀・アダチサキ≫

体力⇒100%

≪持ち物≫



私と同様の画面が表示された。

念のため他の八人も確認してみるが、名前以外、全て同じだった。


基本操作をなんとなく理解できたところで、早速プレイを開始することにした。

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